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リーダーシップを考える―「思い」「共感力」「統率力」の3つが必要不可欠だが

リーダーの要件として何が必要か。「思い」「共感力」「統率力」の3つが必要不可欠であると考える。

社長が、あるプロジェクトを起案し、そのリーダーにある役員を指名したとしよう。その役員が、「こんな難しいプロジェクトのリーダーは嫌だ。でも、社長の命令だから仕方がない。ここは、一先ず、適当に波風立てずにやるしかないか」等と考えたと仮定しよう。そんな役員の下で働くプロジェクトメンバーが、奮い立つはずがない。リーダーに真っ先に何よりも求められることは、「自分は、これだけは何としてもやり遂げたい」という強い「思い」があるかないかということである。

僕は、日頃から、生きること、即ち、働くことは、「世界経営計画のサブシステムを生きること」だと考えている。分かりやすく言い換えれば、「この世界をどのようなものとして理解し、どこを変えたいと思い、自分はその中でどの部分を受け持って生きるのか」ということである。もちろん、世界の森羅万象を正しく理解するためには、一定のリベラルアーツの知見が不可欠であることは、言を俟たないが。何れにせよ、これに従えば、リーダーに必要な「思い」とは、何よりも「世界経営計画のサブシステム」がはっきりと明確に自覚されていることだと考える。

次に、何事かを成し遂げるためには、ほとんどの場合、他人の助けを借りる必要がある。つまり、リーダーは長い旅を共にする仲間を集めなければならない。仲間を集めるためには、リーダーが自らの「思い」を正直に吐露し、説明・説得して仲間を自らの思いに共感させる必要がある。即ち、リーダーの2つ目の要件は、強い「共感力」を持つことではないか。

「共感力」が大切だとは言っても、誤解してほしくないのは、人間の感情に訴えるだけでは、多くの人々の共感を得ることは出来ないという事実を直視し、道理を尽くすことを常に優先させることである。優れたアジテーションは、一時の陶酔をもたらすかもしれないが、長い旅を共にする信頼できる仲間を集めるためには、数字・ファクト・ロジックに裏付けられた、「納得性の高い世界経営計画のサブシステム」が、やはり必要ではないか。いくら耳に心地が良くても、およそ実現不可能な夢やプランは、有害無益という他はない。しっかりしたサブシステムが構築されており、それに加えて、リーダーがそのサブシステムの実現に心からの情熱を注いでいる時に、初めて「共感力」が発揮され、旅の仲間の琴線に触れることが出来るのではないか。

こうして、旅の仲間が集まり、長い旅(プロジェクト等)が始まったと仮定する。ほとんどの旅は、順風満帆とはいかない。主要メンバーが、途中、病気等で脱落したり、予期せぬ台風(リーマンショック等)が襲ってきたりするのが、そもそも、旅というものだ。山あり、谷ありの長い旅路の中で、何事が起ころうとも、へこたれずに、仲間を目的地まで引っ張っていく強い「統率力」が、リーダーにはまた求められるのだ。

ところで「統率力」と言えば、ともすれば「黙って俺に付いて来い」といった、権威主権的な強権力を想起しがちだが、決してそうではあるまい。むしろ真の「統率力」は、どちらかと言うと、「丁寧なコミュニケーション力」から生まれるのではないか。即ち、周囲の環境変化や各メンバーの置かれている状況等を冷静に観察した上で、各メンバーとのコミュニケーションを丁寧にタイミングよく取って行くことの中から、真の「統率力」が生まれて来るような気がする。そして、その基本は、各々のチームメンバーを、先ず同じ人間としてリスペクトすることであると考える。

以上に述べてきた、「思い」「共感力」「統率力」の3つの要件こそが、リーダーの必要条件であると考える。もちろん、この3要件の間にも、「価値の序列」がある。私見では、「思い」が最優先されるべきであって、およそ「思い」を持たない人は、本来、リーダーになるべきではないと考える。

3要件を満たす人がほとんどいないという現実の重さ

ところが、現実の世界を見ると、「思い」「共感力」「統率力」という3要件を満たす人が、実は周囲にはほとんどいない、という現実の重さに、打ちひしがれる。疑う人は、歴代の首相の姿を想起すればいい。人間は、みんな似たり寄ったりで、それほど立派な人は100年に1度くらいしか現れないものなのだ。

では、どうすればいいのか。僕は、いつもロード・オブ・ザ・リングというアカデミー賞を受賞した映画を思い浮かべる。この映画は、フロドという小人が、世界を滅ぼす魔法の指輪を、ある火山の火口に投げ捨て指輪を消滅させて世界を救う、というファンタジーだ。フロドには、ざっと見たところ、「共感力」も「統率力」もない。しかし、指輪を消滅させて、世界を救いたいという「思い」だけは、迷いながらも、途切れることはない。このフロドの「思い」が、超人や魔法使い等からなる、旅の仲間を奮起させ、彼らが共にフロドの旅を完結させるのだ。

つまるところ、この映画が指し示すように、強い「思い」が中心にあれば、ひょっとしたら、リーダーシップは、チームワークで補えるのではないか。私たちは、あまりにも同じ生身の人間であるリーダーに、多くを求め過ぎてはいないだろうか。そして、その結果として、現実の社会のリーダーに、早々と愛想を尽かし、やみくもに強いリーダーを求めるような愚を犯してはいないだろうか。みんなで胸に手を当てて、じっくりと考えてみたいものである。極論すれば、リーダーシップはリーダーのみに求めるものではなく、私たちみんなが持たなくてはいけないものではないのだろうか。伊賀泰代さんの名著「採用基準」に説かれているように。

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