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自衛隊装備のガラパゴス化は是か非か

自衛隊装備のガラパゴス化と言えば、清谷信一氏の専売特許のようなものですが、果たしてこれは妥当な主張でしょうか。



この本は読んでいませんが、清谷氏がネット上でガラパゴス化について言及している記事に、次のモノがあります。
防衛産業のガラパゴス化と崩壊の危機

 だが、我が国では天下り先を守るために防衛産業は過剰に保護され、護衛艦の建造など一部を除けば事業統合すら殆ど行われてこなかった。まるで周囲から隔絶したガラパゴス諸島と化している。

 このガラパゴス化のもう一つの原因となっているのが数々の非関税障壁だ。ボーイングやロッキード・マーティンなど大企業でも商社を通さない商売ができない。また新兵器に「我が国固有に環境に適合する」ためと称して、わざわざ世界中にないような仕様にして、外国企業の参入を阻む。

 更には無線機の出力や使用周波数帯、装甲車輛サイズなどは民間と同じ厳しい規制が課せられているために、外国製品が参入できない。不思議なことにこれらの規制に自衛隊は従わなくてはいけないが、実質米軍は従わなくていいことになっている。

 このため外国製と競合せずに済む。無論国内メーカー同士では「棲み分け」が行われており、競争はない。事業統合など起りようもない。このような環境下でコスト削減など望みようがない。

 だが実戦経験もなく、市場で揉まれたことも、国内での競争すらない状態で開発された、コストの高い国産兵器が「売り手市場」の現在の兵器市場で「飛ぶように売れる」というのは妄想に近い。また実戦がないことを前提に開発された日本製兵器は、多くの日本人が思っているほど性能は高くない。

 つまり市場においてイコール条件で戦えば我が国の防衛産業が淘汰される可能性の方が強い。

清谷氏の主張のキモは、一言で言えば、「防衛装備について”市場開放”し、ガラパゴス化した装備ではなく、国際標準のモノを調達せよ。」、「国内防衛産業は、市場開放に耐えられるよう構造改革せよ。」という所でしょう。

氏の主張については、賛同する部分も多々あります。ですが、ガラパゴス化に対する批判に対しては賛同しません。

それは、氏の主張には、ドクトリンに対する考慮が薄すぎると考えるためです。

ガラパゴス化とは、wikiによると、次のような意味です。

日本で生まれたビジネス用語のひとつで、孤立した環境(日本市場)で「最適化」が著しく進行すると、エリア外との互換性を失い孤立して取り残されるだけでなく、外部(外国)から適応性(汎用性)と生存能力(低価格)の高い種(製品・技術)が導入されると最終的に淘汰される危険に陥るという、進化論におけるガラパゴス諸島の生態系になぞらえた警句である。

私が言うドクトリンは、ここで言う”環境”にあたります。
日本は、専守防衛という特異な戦略思想を執っている上、比較的少数である島国であるなどの地理的特性もあります。

特異な環境であれば、その環境に「最適化」した生物や防衛装備が特異な存在になるのは、当然であり、必要なことです。
今ではさほど珍しくなくなりましたが、対艦ミサイルを4発運用できるF-2、特殊なサスペンションを備えた74式戦車、小型の10式戦車などはその例でしょう。

外国においても、特殊な環境から発生した特殊な兵器としては、スウェーデンのS戦車があります。

リンク先を見る
wikipediaより

その意味では、自衛隊の装備は、必ずしも悪い意味ではなく、ガラパゴス化していると言えます。
(ただし、自衛隊装備の開発配備は、細部の乏しいドクトリンの元、決して最適なものにはなっていません)

問題は、日本が集団的自衛権を否定し、専守防衛を旨とするガラパゴス的と言うべき防衛環境を、これからも続けるのか、という点です。
地理的環境は、国土の一部が占領されたり、逆に他国の領土を占領したりしない限り、大きくは変わりません。しかし、ドクトリンの部分は変更可能です。

防衛装備は、それに合せて開発・配備されるべきです。
まず見直すべきなのは、ガラパゴス化した装備以前に、ガラパゴス的な戦略です。

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