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わかりやすい金融政策とわかりにくい結果

 黒田日銀総裁は4月12日の講演で、「量的・質的金融緩和」の実施に当たっては、先ほど申し上げたように、市場や企業、家計に対する「わかりやすさ」という点も意識しましたと語った。

 「日本銀行や先進国の中央銀行は、短期金利の低下余地が乏しい中で、非伝統的な政策として、バランスシートを拡大する政策を行っています。こうしたバランスシート政策の効果についての評価は概ね固まってきました。それは、中央銀行が市場から国債やその他の資産を買い上げることで、市場から金利変動などに伴うリスクを吸い上げ、長期金利の低下を促したり、資産価格のプレミアムに働きかける効果だということです。」

 4月4日の異次元緩和以降の国債市場での動き、それによる長期金利の動向を確認すると、日銀は市場から価格変動リスクや流動性リスクを押さえ込むどころか、そのリスクを拡大させている。長期金利の低下は確かに当初は促し、4月5日に0.315%まで低下した。ところが当日に0.620%まで上昇した上、5月15日には昨年4月以来の0.9%台に上昇している。

 ただし、資産価格のプレミアムに働きかける効果との面では、円安による株高があり、確かに働きかけは成功しているかに思える。

 「同じ金額であっても、短期の国債を買うのと、満期の長い国債やETFなどのリスク資産を買うのでは、効果は全く違います。」

 短期の国債を買うのと、違い満期の長い国債を日銀が買うことにより、超長期国債の値動きがおかしくなった。それでなくても流動性の比較的薄いところにも日銀の買いの手がさしのべられた結果、流動性低下というあらたな問題が浮上した。

 「買入れの平均残存期間を、現状の3年弱から国債発行残高の平均並みの7年程度に延長しました。これまでのような短めの金利だけでなく、イールドカーブ全体の金利低下を促すことにより、経済・物価への働きかけを強めていくためです。」

 結果としては日銀の買い入れにより、むしろ若干とはいえイールドカーブの上昇を促すことになったが、これで経済・物価にどのような働きかけが成されるというのであろうか。

 「日本銀行が長期国債を大量に買入れる結果として、これまで長期国債の運用を行っていた投資家や金融機関が、株式や外債等のリスク資産へ運用をシフトさせたり、貸出を増やしていくことが期待されます。これは、教科書的にはポートフォリオ・リバランス効果と言われるものです。長期国債の買入れの平均残存期間を思い切って延長したのは、この効果を意識したものです。」

 これについては最近のマスコミでも、国債から株への資金シフトということで報じられているため、見た目はそのような動きとなっているが、そもそも実際にこのようなポートフォリオ・リバランスが日本の機関投資家で大規模に起こりえるのか。ここにきての円安・株高はポートファリオ・リバランスというよりも、円高調整により株がかわれやすくなっていた地合のなか、米国の株式市場の上昇などにも促された結果と思われ、資金シフトが要因だとは思えない。

 「これまでの常識を超える規模の(国債の)買入れですので、「整斉と」とはいかない可能性があります。もともと金利低下を促すための措置ですから、市場に対するある程度の影響は不可避ですが、それでも、できるだけ円滑に進めたいと思います。そのためには、金融機関による積極的な応札など、市場参加者の協力が欠かせません。日本銀行では、市場参加者との間で、金融市場調節や市場取引全般に関し、これまで以上に密接な意見交換を行う場を設けることにしました。先週以降、様々な市場関係者との間で、こうした取り組みを始めています。」

 たしかに当初は市場との対話を進めることがまずは重要だと思っていたが、どうもその対話方法がちぐはぐである。対話というよりも説明、相場がおかしくなれば力づくで対応しているかに思える。そもそも長期金利の低下を促すという経路がおかしくなっているにもかかわらず、円安株高による資産価格の上昇により、日銀の異次元緩和はいかにもうまく行っているように見えるが、現実には長期金利は低下どころか大きく上昇しているという事実をどのように説明するのか。物価が上がるのを見越しての長期金利の上昇であれば問題ない、と言うのであれば、どのような経路で物価上昇を促すのかについて新たな説明も求められる。21日、22日の金融政策決定会合後の総裁会見ではこのあたりの説明を伺いたい。

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