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アフリカ諸国は積木崩しか

「アフリカ諸国は積木崩しか」
―第5回アフリカ開発会議(TICADV)を目前にして―


過去、アフリカ大陸54ヶ国の内、サブサハラを中心に30ヶ国を訪問した。活動は主にハンセン病の制圧活動と、人口の70%以上を占める自給自足に近い貧しい小規模農業の生産性向上活動である。

既にアフリカに関わって27年になる。その間、多くの国々では政治が安定せず、我々の活動も十分な成果が上がったのかどうか、率直なところ確信が持てない国々もある。

アフリカに関する国際会議では、当該国からは西側の援助不足が声高に叫ばれ、具体性のない貧困撲滅、人権、女性の地位向上等、さまざまなテーマが議論されてきた。しかし、コーヒーブレークではあちこちの片隅で西側の参加者から「アフリカでは何をやってもうまくいかない」との悲観論がささやかれる。アフリカに関する会議で発言する多くの人々の本音は「悲観論」であると言っても過言ではない。

我々の貧農に対する農業生産性向上プロジェクト(ササカワ・グローバル2000、略して「SG2000」)も、27年前、アフリカの穀倉地帯になる条件があると思われた、現在、南スーダンとして独立した地域でも、治安悪化のため早々に撤退した。タンザニアは初代大統領ニエレレの社会主義の残滓があり、政府の農業政策の不整備で我々が満足するものにはならなかった。モザンビーク、ザンビア、マラウィしかり。ナイジェリアは今のところ成功しているが、治安維持には問題がある。

ある程度成功したのはガーナ、エチオピア、ウガンダ、マリである。マリのトゥアレ大統領は農業に熱心な政治家で、西側の評価も高かった。しかし、SG2000農業プロジェクトがガーナ、エチオピアに続いて成功すると思われていたところ、リビアの崩壊によって近代的な兵器が流入して政権は崩壊。まるでせっかく積み上げた積み木が崩れるようにフランス軍も介入して混乱状態になってしまった。

ただ、3000人を超える大学卒の農業専門家の養成は、国際的にも高い評価を得ている。

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来年もこの収穫の喜びが続きますように!
SG2000の農場


ハンセン病制圧活動で2008年に訪問したギニア、コンゴも内乱で政権が安定せず、一昨年訪問した中央アフリカも首都バンギは反政府勢力に制圧されてしまった。現在も多くのアフリカ諸国では武力による政権交代が続いている。

アフリカ諸国の悲劇は長続きしない政情である。中国のように地下資源の獲得のための支援と割り切ってしまえば損得関係で判断できる。日本からの支援は、旧宗主国ではないので安心して受けられると好評ではあるが、具体的に目に見える成果としては、日本人関係者の現地での懸命な努力にもかかわらず国際的評価は限定的である。アメリカ、ヨーロッパとて同様である。

近年の中国のアフリカ進出は目を見張るものがある。アフリカ諸国全体の貿易量はすでにアメリカを抜いたと推定される。アフリカ54ヶ国のうち、中国承認国は50ヶ国、台湾承認国は4ヶ国である。

アフリカでは7ヶ国で国連PKO活動が行われているが、そのうち中国は6ヶ国に対して1500人の兵士と警察官を派遣している。ちなみに、日本は2012年から、平和維持活動を目的として約700名の自衛官を南スーダンへ派遣した。

3月24日、タンザニアを訪問した習近平国家主席は、今後3年間でアフリカ諸国に200億ドル(1兆9000億円)の融資枠を約束した。

また、中国はアフリカ人5000人に奨学金を提供し、3万人に技術訓練を行っており、22ヶ国、29ヶ所に孔子学園を設立して中国語や中国文化も教えている。このことは、従来の大統領官邸、国会議事堂、スタジアム、国際会議場などのハードの無償提供からソフトパワーに変化しているようにも見える。

中国政府のしたたかな戦略は下記の4項目からなっている。

①アフリカのエネルギー、鉱物資源の確保。
②国連やWTOなど、国際会議において、アフリカ諸国の政治的支持を確保すること。
③アフリカの台湾承認国を中国承認国に転換させること。
④アフリカ10億人の市場価値に注目すること。

しかし、最近、両者の摩擦は増大しており、アフリカ諸国の中国を見る目は一段と厳しくなっている。

①タンザニアは、首都における外国人の商店所有を禁止した。これは主に中国人を狙ったものである。
②中国との貿易は極端な赤字になっている。
③地下資源確保には、生産設備は勿論のこと、中国人労働者まで移入するので地元雇用は限定的で、経済的効果は薄く、環境悪化など、問題が多い。
④ナイジェリアでは数十人の中国人が誘拐され、スーダンでは10数人の建設労働者が殺害された。エチオピアでもエネルギー関係者9人が殺害されている。

以上はデヴィット・シン(David Shinn)元米駐エチオピア大使の論文を参考にした。

3月12日付のフィナンシャル・タイムズには、ナイジェリアの中央銀行総裁サヌシ氏の寄稿文「中国人の愛から眼を覚ませ」が掲載された。

「中国はアフリカから一次産品を奪い、工業製品を我々に売りつけている。これは植民地主義の本質の一つであり、植民地主義の宗主国と同様の搾取を行う能力を持つ国と見るべきである。中国はもはや同じ“途上国”ではない」と、痛烈な批判を行っている。

6月1日~3日、日本が主催する5年一度の「第5回アフリカ開発会議」(TICADV)が横浜で開催される。混迷するアフリカ諸国に日本は何をしようとしているのだろうか。国際的な交際費としての支援なのか、それとも真剣にアフリカ諸国の政情安定と貧しい人々の救済のための確固たる信念に基づく支援なのか。日本の態度が問われる日が近づいている。

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