- 2013年05月17日 01:05
新防衛計画大綱策定に向けた自民提言について(その1)
年末に改訂される「防衛計画の大綱」策定に向け、自民党安全保障調査会・国防部会が提言案をまとめました。
「自衛隊の機動力強化、原発警護を明示 新防衛大綱の自民案判明」(産経新聞13年4月23日)
この提言案は、自民党としての提言であり、政府(防衛省・自衛隊)としてまとめる防衛計画の大綱とは、異なってくる部分も多々あると思います。
ですが、影響を受けることは間違いなく、ある意味、これを理想としつつ、予算の制約など現実性を加味して、実際の「防衛計画の大綱」が策定されると思われます。
なので、この提言案にどんな事が書かれているのか、ざっとレビューしたいと思います。
長くなったので、2回に分けて掲載します。
提言案のソースは見つからないので、産経がまとめた要旨で見てみます。
「新防衛大綱策定への自民党提言要旨」(産経新聞13年4月23日)
【基本的安全保障政策】
・自主憲法制定(集団的自衛権、国防軍の設置)
・国家安全保障基本法の制定(安全保障基本計画の作成、文民統制、防衛産業の育成、武器輸出を規定)
・日本版NSC(官邸機能強化、軍事専門家の配置)
・国防の基本方針の見直し
・防衛省改革
憲法・国家安全保障基本法関連は大綱には書かれないのでスルーしますが、集団的自衛権は、それを念頭に置いた書きぶりになるでしょう。
NSCに関しても、大綱で書くかは疑問ですが、制服がより安全保障に関与して行く方向で書かれると思います。
国防の基本方針見直し、及び防衛省改革も、大綱に書かれるかどうかは疑問ですが、影響は大きいですね。
【大綱の基本的考え方】
・新たな防衛力の構築として「動的機動防衛力」
・「強靱(きょうじん)な防衛力」なども検討
「動的機動防衛力」が、民主の作った言葉はイヤだ。というだけで無いことを期待します。
「強靱な防衛力」は、方向性が不明ですが、「動的防衛力」で削減の方向になった戦車や火砲の削減数を、ある程度戻すようなことを念頭に置いているのかもしれません。
【国民の生命、財産、領土、領海、領空を断固として守り抜く態勢の強化】
・隙間のない事態対応(警察や海上保安庁など関係省庁との連携強化、領域警備などの法的枠組みの検討、「マイナー自衛権」の検討、自衛隊の権限行使に関するポジリスト的な考え方からの脱却)
・統合運用態勢の強化
・警戒監視、情報収集機能の強化
・島嶼(とうしょ)防衛態勢の強化(海兵隊的機能の整備)
・輸送能力の強化
・核、弾道ミサイル攻撃への対応能力の強化(効果的で効率的なミサイル防衛の運用態勢の構築、早期警戒情報を含む情報共有体制の強化、核抑止戦略の調査研究)
・テロ、ゲリラへの実効的な対処(原子力発電所の警備・防護)
・邦人保護、在外邦人輸送能力の強化(陸上輸送と武器使用権限)
・災害対処能力の強化(南海トラフ巨大地震や首都直下型地震などの対応検討)
・情報機能の強化
・サイバー攻撃に関する国際協力の推進、対処能力の強化、法的基盤の整備
・安全保障分野での宇宙開発利用の推進
・無人機、ロボットの研究開発の推進
隙間のない事態対応として、法的権限の強化や部隊行動基準を念頭に置くと見られるポジティブリストからの脱却を打ち出したことは大きいです。是非大綱に盛り込んで欲しい内容です。
海兵隊的機能の整備は、歓迎しますが、それが水陸両用車だと思っているなら失敗しそうです。オスプレイを買う方向が出てくるかもしれません。
輸送能力の強化は、「動的防衛力」に対して私が再三批判した部分ですので、ここは大歓迎ですね。高速輸送船や車両輸送用トレーラーなどが整備される方向になるのではないでしょうか。C-2の増加なども考慮されるかもしれません。
BMDに関しては、早期警戒情報に関してSTSSの整備運用に積極関与できるようになれば望ましいと思いわれます。そのためには集団的自衛権が行使できるようにならないと、難しいとは思いますが。
核抑止戦略の調査研究というのが、何を目指すのかは不明です。
原子力発電所の警備・防護を、陸自の平時の任務として盛り込む可能性がありそうです。
適切な武器使用権限の付与も同時に実施できれば、現状の信じがたい状況は改善できるでしょう。
原発の偏在状況を考えると、将来的な陸自部隊の配置にも影響してくるかもしれません。(福井県への陸自増強とか)
邦人保護、在外邦人輸送における陸上輸送については、やって当然でしょう。
災害対処能力の強化については、部隊の編成装備ではなく、大規模訓練の実施など、ソフト部分で行なうべきだと思います。
災害派遣用装備の強化には、疑問を感じます。
情報機能の強化も、実際に何を行なうか不明ですが、国家として非常に大切な部分です。
サイバー攻撃に対しては、特に法的基板の整備が注目です。大綱に書ける話ではないでしょうが。
宇宙開発利用については、軍事の趨勢を考えれば当然ですね。
無人機やロボットの研究開発については、有望な技術を持つ民間企業が、未だに軍事アレルギーを持っているような所が多いので、DARPAのような活動を、行なって行くことが必要でしょう。
その2につづく