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オンライン広告収入の伸び悩みが、新聞サイト有料化を加速

 米国の伝統的な新聞が相次いで、サイトなどのデジタルコンテンツの有料化に突っ走っている。先行していたWSJやNY Timesに続いて、LA Times, Washington Post, Chicago Tribune, Houston Chronicle, Philadelphia Inquirer, Orange County Registerといった中堅の有力新聞も一斉に、デジタル有料化を実施したり、あるいは近く実施する予定だ。

 だが、勝算があるのだろうか。WSJのような経済専門新聞やNYTのような一流新聞にすれば展望が開けるかもしれないが、大半の新聞にとってはデジタル有料事業はかなり厳しくなりそう。でも、デジタル有料化しか残された道がなかったのではなかろうか。 

 米国の新聞経営は、広告収入に大きく頼ってきた。下図のように20世紀後半は新聞紙(プリント)広告が一本調子で伸び続け、2000年前後には新聞社のほとんどが、全売上のうちの80%以上を新聞紙広告収入で賄うまでになっていた。ところが21世紀に入る前あたりから、インターネットの台頭もあって、読者の新聞紙離れが目立ってきたのである。その読者減に伴い、新聞紙(プリント)広告売上が頭打ちになってきた。

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 インフレ分を調整すると、以下のように、21世紀に入ってから既に、新聞のプリント広告売上が実質的に減り始めていたのだ。それに従い、新聞危機も叫ばれ出していた。でも一方で、プリントからオンラインへシフトしていけば何とか展望が開かれていくと、楽観視する声も少なくなかった。2001年のネットバブル崩壊後、低迷していたインターネット広告市場も回復し、2005年ころから平均で年率30%前後の爆発的な成長を見せた。新聞社もオンラインサイトを充実させ、オンライン(インターネット)広告事業に本格的に乗り出した。NYタイムズ(NYT)のようにオンラインサイトを強化していた先進の新聞サイトでは、オンライン広告売上の前年比率が、インターネット全体の平均成長率30%を凌ぐ勢いを一時誇示していた。新聞のオンライン広告売上はプリント(新聞紙)広告売上の5%にも届かず絶対額が小さかったものの、それでも以下のグラフの矢印で示すように、落ち始めていた新聞広告売上を、瞬間的にしろ回復させたのだ。

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 そこで、広告売上で経営基盤を支えてきていた米国の新聞社にとってみれば、オンライン広告に未来を託そうとしたのも当然であった。そして、2006年から2007年にかけて、NYTなどがオンラインシフトのアクセルを思い切り踏み込んだ。ところがブログに代表されるWeb2.0の浸透が逆風となり、さらに運悪く世界的な金融危機に遭遇し、そしてリーマンショックに襲われた。命綱であったプリント広告収入が急落していった。巻き添えをくらって、新聞サイトのオンライン広告までもマイナス成長に陥ったのだ。その結果、レイオフの嵐が吹き荒れ、新聞の休刊も相次いだ。

 それから景気は回復してきたにもかかわらず、新聞のプリント広告売上は相変わらず下り坂を転げ落ちていき、下げ止まらなかった。プリント広告が回復して再びけん引役を果たすことは期待できなくなった。となると、やはり頼るのはオンライン広告だ。ところが景気が良くなってきたのに、新聞のオンライン広告の回復ぶりが思わしくない。2010年以降、インターネット全体の広告売上高の平均成長率は年率15%から20%と高度成長に戻っているのに対し、新聞のオンライン広告売上高の成長率は数%前後に低迷している。明らかにインターネットの広告メディアとして新聞サイトが相対的に弱体化している。ソーシャルメディアの普及で広告のパーソナル化が進み、新聞ブランドが広告営業の強力な武器ではなくなってきたからであろう。

 以下のグラフのように、新聞のオンライン広告売上(TOTAL ONLINE)がまだ低い段階で成長が伸び悩んでいる。大幅なプリント広告売上の落ち込みを補えずに、新聞広告売上全体(TOTAL PRINT AND ONLINE)が下げ止まらなくなっているのである。

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 米新聞のエース的存在のNYTにおいても、2013年第1四半期決算発表で、広告売上高が前年同期比11.2%減と落ち込んでおり、もう広告に頼れなくなってきている。となると、生き延びるためには販売売上を増やしたい。でも若者を中心に新聞紙離れが進んでいるので、プリント販売を増やすのは厳しい。残る道として、オンライン販売売上に頼らざる得ない。つまり、オンラインサイトなどのデジタルコンテンツの有料化である。昨年から今年にかけて、追い詰められた米国の新聞社は雪崩を打ってデジタル有料化に走り出している。オンライン販売売上(デジタル購読料)は新しい収入源となるのだが、その売上高はまだまだ少なく、広告売上の落ち込み分を補えないでいる。

 有料化を検討していた米USA Todayや英Guardianは共に無料のままで踏みとどまっているし、月間ユニークユーザ数で世界トップに立ったと言われている英MailOnlineや、Huffinton Postなどの新興ニュースサイト、それにCNN、MSNBCなどのTV/ケーブル系ニュースサイトも、課金のためのペイウォールを設けない。 ソーシャル化が進むネットの世界でオープンな環境でニュースサイトを運用していこうとしているのだろう。これに対して、あえて有料化に走り壁を作ろうとする伝統新聞サイトである。さて、打開する次の一手は?

◇参考
2012 Internet Advertising Revenue Full-Year Report :208kファイル(IAB)
Free-fall: Adjusted for inflation, print newspaper advertising revenue in 2012 was lower than in 1950(Carpe Diem Blog)
米新聞の総売上が今年か来年にも底打ちか、新聞業界が希望的観測を(メディア・パブ)
The State of the News Media 2013、Newspapers: Stabilizing, but Still Threatened(Pew Reseach Center)

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