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政治が企業に奉仕するグローバル化時代

 昨日につづいて「内田樹の研究室」から「改憲案の『新しさ』」を読んでみた。「国民国家」対「無国籍企業」の構図を踏まえて自民党の改憲案を読むと、なぜそのように変えたいのかが見えてくるという。単なる復古調への批判にとどまらず、「新しさ」というのが新鮮だった。

 国民国家は、少なくとも百年先を見通したビジョンを必要とする。誰でも自分の孫の代ぐらいまでは、希望の持てる世の中が続いてほしいと思うものだ。そういう願望も含めて国の基本方針を決めたものが憲法ということになる。だから短期的な都合で簡単に変えられないような原則が埋め込んである。ところがこれは、無国籍企業の立場から見たら、成長を妨げる邪魔になる。

 企業の意思決定では、だいたい五年間が勝負になる。まして競争の激しいグローバル化時代に、百年変らない原則などに縛られていたら、やっていられない。そこで国の法体系も、時代に合わせた最適化を、常に加えていく必要がある。憲法といえども例外ではないということだ。

 今は政治が企業に奉仕する時代になりつつあると考えると、話の筋が合ってくる。巨大無国籍企業が世界の経済を動かしていて、その動向を無視しては国家が存立できなくなってきた。そして巨大企業を支配する少数の人々は、世界の政治を動かす人々と、じつは同一の人たちなのだ。

 たとえば絶対に戦争はしないと決めてしまった国は、どうなのだろう。必要な適度の戦争は、あって当り前と考える人たちには、とても異質な存在に見えるに違いない。やはり人並みに世界の治安維持に参加して、武器も消費してほしいということになる。

 昨日の論説を読んで、世界の富を個人資産として集めた超富裕層は、その財を何に使うのだろうかと考えた。世界の人口は維持しなければならないし、一定の人数に商品を買える所得を与えておかなければ企業は成り立たない。どこかで大衆福祉などの政治的な配慮、つまりは政治の代行をするようになるのではないかと思った。

 そんな無国籍の経済的実力者によって、最後には政治的なグローバル化、つまり世界連邦が創立されたりするのだろうか。世界の通貨が統一され、言語も共通化されるかもしれない。政治主導で人類の理想を掲げる世界連邦よりも、経済主導で力任せに作られる世界政府(名称は何でもいいのだが)の方が、早く実現しそうな予感がしてきた。それが人間にとって幸せなことであるかどうか、私にはわからない。

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