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マンU監督ファーガソン引退の意味

「日曜に重大発表」

日本代表MFの香川真司選手が所属する英イングランド・プレミアリーグ、マンチェスター・ユナイテッド(マンU)のアレックス・ファーガソン監督(71)が退任する。マンUが8日午前、発表した。ファーガソンは「クラブが一番強いときにやめるべきだと思った」と話している。

ことの起こりは7日午後、マンUの選手がコーチングスタッフとの懇親ゴルフで「日曜日にオールドトラフォード(マンUの本拠地)で行われるスウォンジー戦の前にファーガソンが重大発表を行う」と耳打ちされたのがきっかけだった。

ファーガソンはかつて2001/02シーズンのあと退任する意向を表明したが、撤回したことがある。それ以来、「退任する時期は自分で決める。退任する直前に表明する」と話してきた。マンUが即座に退任のウワサを否定しなかったため、英メディアが8日、「ファーガソン退任か」と一斉に報じる騒ぎになった。

マンUは昨年夏、ニューヨーク証券取引所に上場した。株価に大きな影響を与えるファーガソンの進退は速やかに公表しなければならない。マンUは英メディアが一気に拡散させた「ファーガソン退任」の観測を肯定した。

ファーガソンと気脈を通じたマンUの最高経営責任者(CEO)のギル氏がこの夏、若手のウッドワード氏にバトンタッチすることや、ファーガソンが足の人工関節をつける手術を今季終了後すぐではなく来季開幕直前の8月に入れていることも観測に拍車をかけていた。

ただ、イングランド・プレミアリーグでマンUとして20回目の栄冠を獲得したあと、ファーガソンは「自分が特別な存在になれる場所から立ち去る考えはまったくない。これは次の成功の時代のスタートだ」と退任の可能性を否定していた。

絶滅危惧種

ファーガソンはイングランド・プレミアリーグだけでなく欧州フットボール界の至宝、そして「絶滅危惧種」に近い稀有な存在だ。ベルリンの壁崩壊により、欧州フットボール界ではグローバル化が一気に進み、選手や監督は自由に、しかも頻繁にいろんな国のクラブ間を移動するようになった。フットボール選手はストイックなトレーニングより、きらびやかな女性と高級スポーツカーがお似合いになった。

1986年、ファーガソンはマンUの監督に就任。ライバルチームのチェルシーはその間、9人の監督に率いられたが、マンUの監督は27年間、一貫してファーガソンである。ファーガソンの引退は「古き良き時代のフットボール」が終わったことを意味する。

マネジメントの天才

戦術家モウリーニョ、選手の才能を見抜く天才クラフと異なり、ファーガソンは「マネジメントの天才」といわれている。ブレア元英首相の戦略家だったアラスター・キャンベル氏も当時、何度もファーガソンからマネジメントについて教えを請うている。

マンU監督としてUEFAチャンピオンズリーグ優勝2回、イングランド・プレミアリーグ優勝13回を含むファーガソンの生涯49タイトルは世界を見渡しても例がない。ファーガソン流マネジメントの秘密について、著名フットボール・コラムニストのサイモン・クーパー氏はかつて英紙フィナンシャル・タイムズで興味深い分析を披露した。

(1)ブランディング
ファーガソンはマンU監督就任後、真っ先に行ったことはマンUスタッフやサポーターからの聞き取りだった。ファーガソンが解析したマンUスピリッツは「マンUは攻撃しなければならない」「世界はマンUに敵対している」「マンUはクラブを超える存在」だ。ファーガソンは自分のキャラクターをマンUブランドに一体化させた。

香川選手がマンUとしっくりこないのは、マンUスピリッツをまだ十分に理解していないからではないかと僕は感じている。

(2)短気な性格
ファーガソンはとにかく気が短い。2003年には不甲斐ない試合に激怒し、更衣室でシューズを蹴り上げ、ベッカムの顔に当たったことがある。選手の目の前で怒りだすので、ファーガソンの鼻息で選手の髪が逆立つため、「ファーガソンのヘアドライヤー」といわれている。ある選手は「これまで畏怖を感じたことはなかったが、ファーガソンだけは怖かった」と回顧している。ファーガソンは絶対的な存在だ。逆らえるものはいない。

(3)味方をつくる
若かりし頃、ファーガソンはオーナーに逆らって監督をクビになったことがある。以来、ファーガソンはオーナーに逆らったことがない。そして、ファーガソンはサポーターのリーダーに長電話をかけてくることがある。サポーターが何に満足し、何に不満なのかに耳を傾けている。ジャーナリストや審判と喧嘩しても、オーナーやサポーターとは良好な関係を保つ。それがファーガソンの処世術だ。

(3)情報収集力
ファーガソンはイングランド・プレミアリーグをはじめ、いつでも電話をかけられる監督をたくさん持っている。どの選手が素晴らしい才能を持っているのか、クラブに不満を持っているのか、ファーガソンは把握している。かかわった選手やスタッフと連絡を途切れさせることはない。ファーガソンは誰よりも多くフットボール関係者の葬式に参列しているそうだ。

(4)コントロール・フリーク
ファーガソンは反逆者を許さない。もし、自分のマネジメントに不満を抱いている者がいたら即刻、追放だ。クリスティアーノ・ロナウドやテベスはこの部類に入るのかもしれない。選手のトイレの回数が増えただけで、ファーガソンの調査は始まる。何か変な病気をもらっていないか、というわけである。

ファーガソンはグラウンドに顔を出さないことで有名だが、選手の練習ビデオは隅々までチェックしている。選手1人ひとりに尾行をつけているという説もある。女遊びの兆候が現れたら、「ファーガソンのヘアドライヤー」の餌食になるのは必至だ。

しかし、ファーガソンのマネジメントは一筋縄ではいかない。「コントロール」「マネジメント・チェンジ」「観察」を柔軟に使い分ける。ルーニーがライバル・クラブのマンチェスター・シティーに色目を使ったとき、ファーガソンはルーニーの報酬を引き上げた。

(5)インナー・サークル
ファーガソンは自分のインナー・サークルに入れる人間を慎重に見極めている。自分をいらだたせる人間はインナー・サークルに入れてはいけない。

(6)危機はいずれ去る
ファーガソンは危機にあわてない。メディアがいくら騒いでも、危機はいずれ鎮まることを知っている。フランス代表カントナが相手クラブの選手やサポーターにキックを見舞って大騒動になってもファーガソンは動じなかった。ベッカムと衝突したときも騒ぎが鎮まるのを待った。

後任はモウリーニョ?

ファーガソンはクラブのディレクターと大使に就任する。ファーガソンの監督引退はフットボールが新しい時代に入ったことを意味するのか。僕は名物オヤジの引退に一抹の寂しさを覚える。

ファーガソンは後任にエバートンのモイーズ監督を希望していると伝えられている。スペイン1部リーグ、レアル・マドリードのモウリーニョ監督の名前も取り沙汰されている。

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