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内田樹の「壊れゆく日本という国」

 きょうの朝日新聞のオピニオン欄、内田樹(たつる)の寄稿は、さすがにこの人と思える迫力がある。左右に配した見出しは「『企業利益は国の利益』 国民に犠牲を迫る詭弁 政権与党が後押し」「国民国家の末期を 官僚もメディアも うれしげに見ている」と内容を要約している。

 私たちが国家だと思っているものは「国民国家」と呼ばれる。そこは言語や文化を共有する国民がいて、帰属意識を持っている共同体である。国境と防衛力と官僚群を備え、自分のところを第一に考える「身びいきな」政治単位でもある。

 これに対して、いま台頭しているのは無国籍企業群である。株主も経営者も従業員も国内には限定されず、創業者が日本人であるかどうかは、しだいに無意味になりつつある。無国籍企業はグローバル基準で有利な条件を求めるが、これらを国が国民を犠牲にしてまで支援するのは筋目が違うだろう。しかし無国籍企業が悪いというのではない、ただ、そういうものだと内田氏は言う。

 たとえば原発を稼働しないとエネルギーコストが高くなるから、日本から出て行くというという理屈があるが、それを受け入れて稼働させた結果として事故が再発したら(あるいは事故がなくても廃炉や汚染処理に莫大な経費が発生したら)、無国籍企業は自分たちが要請した責任を感じてコストを分担するだろうか。そんなことは絶対になく、さっさと日本列島から離れて行くだろう。

 それでも企業は「日本の企業」という名乗りを手放さない。インフラの整備や人材の育成など、日本国からさまざまなサービスを受けるのに都合がよいからだ。そこで日本生まれの企業を、国をあげて支援せねばならないというキャンペーンが展開される。ここで企業のグローバル化と愛国心の結合が図られる。国際競争に生き残るためには、何としても企業に勝って貰わなければならないのだ。

 だからグローバル化とナショナリズムの亢進は、矛盾しているように見えても「同じコインの裏表」になる。安倍自民党が、中国韓国を外交的に挑発することにきわめて勤勉なのも、その一環だと内田氏は指摘する。

 さて、これらの全体が何のために行われているかというと、「日本の国富を各国(特に米国)の超富裕層の個人資産へ移し替えるプロセス」ということになる。そして政治家たちも官僚もメディアも、なぜかうれしげに見ているというのだ。まことに淋しい結末だが、最後にこんな慰めの言葉がある。「同じことは全世界で起こりつつある。気の毒なのは日本人だけではない。」

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朝日新聞の「オピニオン」欄に寄稿(内田樹)
壊れゆく内田樹氏(池田信夫)

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