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議員定数の削減は必要か?

4月23日にいわゆる「0増5減法案」が衆議院で賛成多数で可決した。昨年12月の総選挙における「一票の格差」をめぐり、3月25、26日に広島高裁と同岡山支部で「違憲・無効」判決が出された他、各地の高裁で「違憲」ないし「違憲状態」とする判決が相次いで出されたことを受けたものだ。審議の場はまもなく、参議院に移ってくる。

同法案に対し、民主党は出席した上で反対票を投じた。反対の理由としては、自民党が定数削減や選挙制度の抜本改革なしで、「0増5減」だけで逃げ切ろうとしていることへの抗議である。

民主党は定数80(小選挙区30+比例50)削減案を提出したが、自民党はこれを無視する一方、実現性の低い与党案(比例代表を30削減して150議席とし、90議席は従来通り全党に比例配分して、残り60議席は得票率が2位以下の政党に配分するという内容)を提出して責務を果たした気になっている。

昨年11月16日の党首会談を思い出して頂きたい。野田総理(当時)は「解散」する前提として、「一票の格差」是正と定数削減、選挙制度の抜本改革を安倍総裁(当時)に迫り、確約を取ったのだ。にもかかわらず今回、小手先の格差是正だけで逃げ切ろうとするのは確かに信義則違反である。

しかし、私はそもそも定数削減に反対だ。これまでも機会ある毎に一貫して訴えてきた。定数削減を「身を切る改革」と位置づけることに根本的な違和感を覚える。「国民の皆様に消費税増税の負担をお願いするからには、まずは政治家自らが身を切るべきである」との論理はいかにも大衆迎合的で、賛同しかねる。消費税増税は、「社会保障費の確保・充実」のため、「財政健全化」のために決めたことだ。

一方、議員定数は「民意を適切に反映できる仕組みになっているか」という観点で決めるべきものであり、「身を切る」ための道具にすべきではない。

しかも、「身を切る」と言いながら、その削減効果は仮に180人削減して300人にしても約120億円節約できるだけで、今年度予算案のわずか0.01%に過ぎない(後掲読売新聞記事による)。

日本の国会議員は衆参合わせて17.7万人に1人。G8諸国と比べても決して多い方ではない。
ロシア(23.2万人に1人)、アメリカ(57.8万人に1人)といった大陸国家に比べれば確かに多いが、イギリスは4.4万人に1人で日本の4倍、イタリア、フランスは3倍だ。

適正な人口比がどうあるべきか判断するのは難しいが、私は現在の議員数を極端に減らす必要性を感じない。
都道府県を前提とする限りは1人別枠方式を維持し、むしろ、議員定数を増やすことで一票の格差を2倍以内に収めてもいいと考える。

その結果、議員の数がとてつもなく多くなってしまったら、比例議員の数で調整してはどうか。
それがまかりならんと言うならば、小選挙区制度そのもの、あるいは衆参全体の抜本改革まで踏み込んで考えるべきだ。

アメリカの上院は各州で表・裏の1人ずつだ。人口比ではない。アメリカの上院議員は連邦国家を構成する各州の代表そのものであるからだ。これに対して、下院は地域の人々を代表する存在であることから人口比であり、一票の格差は2倍の範囲に収まっている。
上院と下院の機能分担が明確だ。

翻って、我が国の衆参の機能分担については見直しの余地があると考える。例えば、国民の生活に直結する予算の審査は衆院のみにし、参議院は行政監視や決算、社会保障制度や外交など長期的視点が求められる分野に絞るというのも一案だろう。

さらに、定数を見直すならば、国会議員を取り巻く環境整備の見直しが先決だ。アメリカの場合、秘書人件費として公費から、上院議員一人に対して平均334万ドル(約3.3億円)、下院議員に対しては平均152万ドル(約1.5億円)が支給される。

その結果、上院議員は平均44人、下院議員は平均17人の秘書を雇用している。日本の場合、衆参ともに公設秘書は3人まで。政策担当は実質1名である。それ以上となると私費で賄わなければならず、政治家によほどの財力が無ければスタッフを十分に確保することは難しい。

国民の代表として十分に職責を果たすためにも、アメリカと同等レベルまでとは言わないが、政策策定の支援機能を強化してはじめて、議員の数そのものを減らすことを検討する余地が出てくるのではないだろうか。

残念ながら私のような主張は党内では少数派だ。「議員定数の2割削減」は私が初当選する前の2009年のマニフェストに既に明記されており、議論の余地もないというのが真実に近い。

しかも「2割」の根拠は特にないのだから始末が悪い。読売新聞の「定数大幅削減 立法府に弊害」(4月23日朝刊)という特集記事を読んで勇気づけられ、今回改めて私の思いをお伝えすることにした(なお、各種試算を引用させてもらった)。

政治全体が大衆迎合的になり、より少ない費用で、より少数の議員が次々に物事を決断する政治が是とされ、「多様な意見や視点を尊重し、慎重な審議を行うプロセス」が疎かにならないか危惧する。

定数や歳費の数値の多寡を表層的に議論することより、特に議員については国民の負託に応える仕事を十分に行っているかどうかを検証して頂きたいと切に願う。

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