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良いことは良いと評価するネット文化を ~One Voice Campaignスタッフがネット選挙運動解禁に思う事~

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政治って本当に不透明


― これまで良かった点をうかがってきましたが、逆に活動する中で、苦労した点や、こんなはずではなかったということはありましたか?

江口:それは、たくさんありますが(笑)、ひとつはいくら発信しても一般的には「政治にネットを使う=ネット投票」という感覚があり、そこがなかなか理解されなかったこと。まだ誤解している人もいるんじゃないかな。議員だけじゃなく、有権者も「選挙運動」ができるという概念を分かっている人はあんまりいません。政治活動と選挙運動の区別がつく人も少ないですよね。これは一例ですが、そうやって説明したりするうちに、選挙運動自体の歪さも改めて感じましたね。

原田:一番悔しい点は、解禁までのプロセスを透明化できなかったことです。One Voice Campaignは、解禁を目指しながらもこうした運動が政治の場でどう進行していくかを出来る限り透明化することで、「成功体験の前例になろう」という目的もあったんですが、それができませんでした。党内手続きを通してもらうのに、「本当は誰にYESと言わせればいいのか」「どの会議で通せば実現に1歩近づくのか」ということが、どうも表で見えているプロセスと違う流れや後ろで動いているチカラがあって、進まない本当の理由がいくら探っても見えてこない。

― 議員の先生方が口々におっしゃっていた「党内の根詰まり」がどこにあるか、結局最後までがわからなかったということですか?

原田:そうです、そうです。見えてるモノに対しては策を練って手を打つことができますが、そうじゃないものはどうにもやりようがない。表向き賛同してくれている議員を盛り上げることはしたけれど、もっと他に出来たことがあるんじゃないかと。

江口:政治って本当に不透明だなということを改めて感じましたよね。ごく普通の人の一般的な発想では思いもよらない“何か”がある。メンバーには、政治の中の世界をあまり知らない人もたくさんいたので、そうした独特の業界の動きに納得いかないという発言を聞く度に「それが普通の考え方だよな」と思う事もたくさんありました。「こう動いた、こう言ったからこうなる」という一般的なロジックが全く通用しない。そのロジックが全く見えない仕組みってどうなの?と。

原田:プロセスやロジックをオープンにできれば、次に別の声を上げるときに応用できると思ったのですが、そこに関してはほとんどできませんでした。イベントごとに広がりも感じたし、手ごたえはあったけど、結局それはどのプロセスが何に作用して、何がどうなってそうなっていったのか、自分たちでも整理しきれていないところがあります。「ここをこうやれば、変えていけるよ」と明確に言えるものが残せなかったのが心残りです。

みんなが社会に発信できるきっかけ作りを


― ひとまず解禁という区切りが見えたことで、One Voice Campaignとしての活動は終了と伺いました。

江口:解禁された後にどうするのかということをよく言われていたんですが、選挙や法律に対する活動は終わりがないものなので、ズルズルとやるのは良くないと考えていました。

もともと全く違う畑の人間が、1つのことを目標に集まったネットワーク型のグループだったので、解禁した後に組織化しようなどの発想はなかったです。既にこの活動を通して考えたことや得たことを糧に、個々が動き出したりもしていますし、その方が自然だと思います。

これからは、それぞれの分野で活動していくことになりますが、共通体験をもったメンバーですから、また何かあったときにはいい形で集まれるような気がしています。

― おふたりはどんな活動を予定していますか?

原田:僕は既にNPO法人YouthCreateを立ち上げて、「政治と若者をつなぐ」をテーマに、地方議員と若者が当たり前に話せる場を開くなど、直接的な接点やきっかけを作るような活動をしています。

でも、これに並行して「ネット選挙が解禁して選挙がダメになったよね」と言われることがないよう、YouthCreateとしても働きかけを行うつもりです。解禁されたことで投票率があがったり、しっかり政策の議論されるような状況ができたり、新しい候補者が出てきたり……そういう状況を生み出していかないといけませんから。

― 江口さんはいかがでしょうか?

江口:僕の場合、学生時代に政治家のインターンしていた経験から「若い人の投票率や政治参加を促したい」という思いがあって、その実現のためにメディアやウェブ関係の道を選んだという経緯なんです。だから、社会に対してもっとみんなが発信したり、アプローチできるようなきっかけ作りを、これからもやっていこうと思っています。

先ほども言いましたが、今回改めて「政治はごく一部のすごい人たちがやっている」と思っている人が本当に多いと実感しました。日々の暮らしや働き方を考えるとき、その先には必ず法律や憲法が結び付くのに、今はその両端が繋がっているという意識の回路がない人が多い。だから、まず1歩として地域や身近なコミュニティを改めて見直し、そこからその社会や政治への意識の回路を結ぶきっかけを作れたらいいなと思っています。そういう目標の元、今は地域コミュニティに関するメディアや社会起業に取り組む仲間のネットワーク作ろうとしているところです。

解禁はあくまで通過点のひとつ


― 先ほど、「解禁で政治がダメになったと言われたくない」とおっしゃっていましたが、こう使ってほしいとうアドバイスはありますか?

原田:まず候補者に向けて言いたいのは、使いたくない人は使わなくていいよということ。無理して変な事になったり、お金がかかると文句を言われたりしても嫌なので(笑)。でも、そこをがんばろうという人には、当たり前のことですが「自分の政策」をしっかり発信してもらって、有権者とのやり取りを積極的にやってほしいですね。

有権者に言いたいのは、もし自分の選挙区の候補者が発信をしていたら、まず選挙期間だけでもいからフォローをする所から始めてみてほしい。既存メディアでは個人の候補者までを追いかけることは難しいと思うけれど、ネットなら可能なんです。そういう生の情報を少しずつ目にすることから、1歩ずつ始めてもらいたい。

江口:本質的なものを追求する時代になってきているからこそ、単なる有名人や、名前が売れている人が政治家になってしまうのではなく、社会のために活動している人を有権者が見つけ、きちんと評価することがこれから必要だと思います。政治家に向けて発せられる言葉って批判がほとんどですが、それだけじゃあ、なり手も育っていかないし、政治家だって批判されてばかりじゃモチベーションが下がる一方ですよね。だから、有権者は議員のことを、その人全てを応援できなくても、これはいいというものがあったらちゃんと評価するということをしてみてほしい。

解禁に向けて活動してきた僕たちですが、今、「解禁」という言葉が一種ブームのように盛り上がり過ぎていることには違和感があります。解禁は、あくまで通過点のひとつでしかないんです。これで何か大きく変わるわけではなく、従来のビラやポスター、公開討論会などに加えてツールがひとつ増えただけ。それをどうポジティブなものにして使っていくかは自分たち次第だし、まだまだ課題はたくさんあるということを改めて強調したいです。

デメリットを話し合うのではなく、未来肯定を


― 最後にメッセージをお願いします。

江口:政治家が直接有権者に発信することで、ちゃんと評価されるべきことがもっと表に出るようになって、互いに高めあえる関係性を作っていくべきです。

デメリットばっかりを話し合っても良い効果は生まれないので、互いに良いフィードバックを築けるようにしていかないと、結果として自分たちで生き辛い環境を作っているようなものになっていきます。みんなが思っているほど、有権者だって馬鹿じゃない。逆に馬鹿だと思うならば、みんなでもっと賢くなるにはどうしたらいいのかっていう発想を持っていくべきです。未来をもっとポジティブに肯定していきましょう。

原田:ネット選挙運動に関する報道を見ていると、ネガティブな部分が誇張され過ぎている記事を見かけますが、そういう記事を読むと政治家・候補者目線で書かれていて、有権者にとってどう?という視点がないと思いませんか?法律やメディアも、受け手である有権者や一般の人たち目線で作られる世の中になってもらいたいと思います。

最後に、ネット選挙運動解禁は次の参議院選挙からと強調されていますが、実は参議院選挙と同時に行われる、地方選挙についても解禁になります。国政だけじゃなくて、地方選挙でどう使われるかもしっかりウォッチしてほしいです。案外、地方選のほうが有権者と候補者の距離が近いからこそ、ネットが有効活用することがでてくる可能性はとても大きいと思います。

― ありがとうございました。

One Voice Campaignイベントレポート
ネット選挙運動解禁に向けて皆で声をあげていこう (2012年06月01日)
インターネット選挙運動の解禁は政治をどう変えるか(2012年12月03日)
ネット選挙運動解禁を日本の民主主義を変える第一歩に(2013年03月22日)

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