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喜劇としてのヘイトデモと安倍政権

日本語は中国由来の漢字とその亜型であるカナ文字で出来ている。

アルファベット文字ではない。

昭和時代に大きな影響力をもった安岡正篤の名前を挙げるまでもなく、儒教とその亜型思想の影響力は奈良時代から数え上げると、ユダヤ一神教のそれとは比較にならないくらい大きい。

日本の官僚システムや思想体系が西洋よりも中国の影響を大きく受けていることは歴史を紐解かずとも、地図をみれば一目瞭然だが、安倍首相をはじめ、それを認めることに抵抗のある日本人は多い。

で、最も抵抗のありそうな日本人が最も「中国的な」行動様式を披露する、という喜劇が東京(や大阪)で繰り広げられた。
「殺せ、殺せ」「ゴキブリ」「日本からたたき出せ」
 2月上旬、外国人が多く暮らす東京都内の繁華街でデモがあり、そんなシュプレヒコールが飛び交った。デモは特定の外国人を排斥する目的でインターネットで告知され、男女100人以上が参加した。

 既存の右翼団体とは異なり、参加者もほとんどが一般人。こうした現場を取材してきたフリージャーナリストの安田浩一さんは「数年前に比べ文言がより過激になっている。『殺せ』という言葉はヘイトスピーチと言えるのではないか」と話す。

 一方、デモを呼びかけた団体の一つは「参加者から自然に出た言葉で、推奨しているわけではない。何がへイトスピーチなのか明確な定義はなく、デモの表現としてあっていいと思う」(広報担当者)と説明している。
(毎日新聞電子版 3/18)


特定の外国人・二世に対する憎悪表明デモが成立するのは現時点において東アジア的であることは、中国の反日デモが格好の対照事例となる。

中国版ツイッター、微博で見られた
「奴らは中国の反日デモと同じだな。不満のやり場のない社会的弱者なのだろう。」
(サイゾー 4/3)
という書き込みも、「彼ら」と「それ以外」の温度差が日中で同じ相似形を表しているようで面白い。

一方、欧米の多くの地域では、公共の場で特定の外国人を殺せと表現する「表現の自由」は法によって認められない。


デモの内容に関しても欧米と東アジアでは背後にある思想に違いがある。

以前、新宿で反G20のデモに参加した際、フランスから来たという黒ずくめの集団、いわゆる「ブラック・ブロック」といわれる人たちが出した横断幕と行動が異質だったので、よくおぼえている。

彼らは「警官から銃を奪え!」というメッセージを掲げ、行進中も警備する警察官を挑発し、銃を奪う仕草を何度も見せていた。
(もし、日本人が同じようなことをしていたら、拘束される可能性が高いが、フランス人に対しては警察官はあいまいな対応に終始していた。)

権力から暴力装置を奪い取って権力を奪取する、という身もふたもないプラグマティズムは日本人にはなじまない。

このようなブラック・ブロック的行動の背景には、「権力はその程度のものでしかない」、という思想がみてとれるが、儒教的規範意識の強い国ではそのような思想は最初から排除されている。

言い換えれば、西洋における権力と国民との緊張関係とそこを整備する法体系という枠組みは、東アジアにはない。

一見、日本においては明治維新、第二次大戦を経て、法体系による統治システムが整ったように見えるが、実際は運用段階で、かなり「人治」的な側面、あるいは「世間治」的な側面が現れる。

(コンプライアンスの適用段階を決めるのが法ではなく、人や世間であるケースは多く指摘できる。)

欧米流の三権分立を軸にした法体系を覆す動き(戦後レジームからの脱却、憲法改正)を見せる安倍政権が、中国型の儒教的人治主義に近い立ち位置に戻る方向に向かうのは、(自身の中国嫌いを考えると)これまた皮肉とも喜劇ともいえる。

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