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- 2013年04月29日 09:27
Google&Facebookに学ぶ、新機能の実装プロセス
新機能の作り方
サービスを作っていて、新しい機能などをつけようとする時に、煩雑なプロセスなどがある会社は多いと思います。これは前職のリクルートという、大きな会社で働いてた時も感じたのですが、新しくておもしろい機能をつけようとすると、いろいろと制限があるのですね。
たとえば、「なぜその機能が流行るか」のロジックを聞かれたりします。これはリソースやお金を投資する分、説明責任がある!ということですね。冗談みたいな話ですが、資料を作ったりして、この機能がどういう効果があるかとかを説明して、だいたいの場合、弾かれてたりしました。
また、その機能を実装したあとの影響のために、部署との調整が必要だったりします。リクルートのとあるサービスに、口コミ機能をつけようとしたら、あらゆる部署に説明しにいかなかったりしました。
どちらも間違っているわけではなく、会社としては一見必要なプロセスなのですが、インターネットサービスにおいては、イノベーションは生まれづらい環境ではあるなあ、と思ってしまいます。
いや、これはなかなか難しい問題で、上司とか経営者になると、直感的に納得できないものに関しては、聞きたくなっちゃいます。意味不明な機能とかつけるなよ!となりますしね。他の部署からしてみたら、どんどん知らないうちに新機能とかできてたら、クライアントとかに説明しないといけないので、大変なわけです。先に知らせておいてくれよ!と思っちゃいますよね。で、これらでイノベーションが生まれないからといって、ラボとか作って好きにやらせてみても、たいていはうまくいかないわけです。
んで、GoogleとかFacebookとかすげーな、どうやっているのなー、と思っているこのごろです。というところで、愛読している「クーリエ・ジャポン」の2013年6月号に両社のやり方が載っていたので、そのやり方を紹介します。
Googleのやり方
Googleは基本的にはデータ重視の会社ですが、それをクリエイティブと共存するために「Trust & Verify(信じて検証する)」というプロセスを踏んでいるとのことです。グーグルストリートビューのグループプロダクトマネージャーの河合さんという方が、以下のように説明していました。
「たしかにデータを重視する文化はありますが、あまり論理的に詰めていってもおもしろいアイディアはありません。ですから、僕らは、最初は"バカなアイディア"を信じてやってみて、その後で、そのアイディアが機能しているかどうかを論理的に検証するようにしています」なので、ある程度バカなアイディアでも実装してから検証をして残すかどうかを決めているのですね。たとえば、Googleの核事業である検索でも、昨年は、7万3000件のテストを行い、665件の改良を実施したらしいのですが、つまりはテストから実施までは1%にも満たないのです。
Googleは基本的にデータを重視したほうがうまくいく製品から始まっているので、この文化が根付いているのだと思います。
最近、nanapiでもこれに近いことをやっているのですが、Webディレクターがほぼ許可なしに実装までしちゃって、そっからデータ解析を行い、機能を残して行ったりするというやり方です。特に小さな改善に関しては社長の許可とか当然要らないわけです。各論の機能について突っ込んでも、効果がどうかはわからないわけです。社長のアイディアはそれは一つのアイディアということで受け入れてもらったりしていますが、実装してみてダメだったら取り外されます。
早い機能とかは、2日で実装して1日試してダメだったので取り外す、とかよくあります。
Facebookのやり方
一方で、Facebookのやり方は、いわゆるハッカソンと呼ばれる、2ヶ月に1回、通常業務を離れて行われる徹夜でアイデアを実装しまくるイベントに集約しているみたいです。「フェイスブックはまだそれほど大きくない会社なので、社員が好き勝手に自分のアイディアを試し始めたら収拾がつきません。そのため、どんなクレイジーないアイディアでも試せるような機会を社員に与えるためのイベントなのです」彼らもデータ解析などはかなりしていると思いますが、よりザッカーバーグなどの思想ベースな気がします。これはこれで非常に素敵ですね。なぜならFacebookはコミュニケーションが重視されるサービスなので、データ解析だけを追い求め続けていると、おそらくつまらないものになるからです。
弊社でも、先ほど述べたような「データ解析を重視しよう!」と、解析からの改善をやり続けると、それはそれでなんか変になるのですね。うまくいえないんですが、最適化を続けると、最適ではなくなる。
となると、ベースとなる思想とか、言語化できないところとかが重視されるわけです。ここに関しては、社長とかリーダーの役割かな、と思っていて、言語化できない、よくわからないところというのは、えらい人が全責任を負って決断したほうがいいと思うのです。
このあたりが非常にうまいのは実は、サイバーエージェントの藤田さんとかだと思っていて、若い女性とかが喜びそうな、よくわからない部分というのを藤田さんが負っているからこそ、女性向けコミュニケーションアプリなどで、大ヒットが飛ばせるんじゃないかと思っています。
というわけで
各会社の文化や風土にあわせた制度をつくるべきですが、どのみち言えることは、「メンバーを信じてやってもらう」ということがまず最初にあるのかなあ、と思っています。そして、クリエイティブを発揮してもらいつつ、それが単なるアイディアの出し合いじゃなく、価値ある実装まで持っていき、ユーザーに支持してもらえるようにするか、という枠組みを、経営者層が決めるというのが重要なのだと思います。ここが本当に難しいのですが、それを作れるような会社を目指さないとですね。
ちなみに、好きにやらせるのは信じてやってもらってるわけではないと思います。それは上のほうが、よくわからないので、丸投げしているだけです。「若手に自由に発想してもらって自由にリリースしてもらう」なんてものは、単なる意思決定者の思考放棄です。Webサービスの流行とか、何がいいのかとか、実装の各論とかよくわからない上司は基本的にはワークしないと思うんですよね。GoogleやFacebookだけじゃなくて、サイバーエージェントとか、LINEとか、GREEとか、DeNAとか、やっぱりトップレベルでWebサービス作りについて熟知しつつ自分で使ってみたり研究したりを徹底的にしていますからねえ・・・。