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化けの皮が剥げ始める「根拠なき熱狂」下で設定された黒田日銀の「根拠なき金融政策目標」

「二匹目のドジョウはいなかった」ということ。

日銀は26日の金融政策決定会合で、消費者物価指数(CPI)の前年度比上昇率が2015年度にプラス1.9%とする見通しを加え、「物価安定目標」に掲げる2%達成への道筋を盛り込んだ「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」をまとめた。これをうけた夕方の記者会見で黒田日銀総裁は、量的・質的な金融緩和の効果により「2年で物価2%の目標に達する」と変わらぬ自信を示した。

黒田日銀総裁は「変らぬ自信」を示すことで、市場の「期待」を繋ぐことが出来ると安易に考えていたのかもしれない。しかし、GWを控えた為替市場は、誰も付けに行こうとしない「1ドル100円」の壁に業を煮やしたかのように、黒田総裁の「期待」に反して利食いモードに転じて行った。結局週末のNY市場の終値は1ドル≒98円。

今回発表された「展望レポート」について、日本経済新聞は「2%達成への道筋を明示した」と伝えているが、「2年で2%の物価目標を達成する」と断言している黒田日銀が、「15年度にプラス1.9%とする見通し」を出すのは当然のこと。実態は「道筋を明示した」のではなく「目標に向けて線を引いただけ」のこと。

また、今回黒田日銀が示した物価見通しについて日本経済新聞は、「実現のハードルは高い」と伝えている。確かに「目標に向けて線を引いただけ」の「道筋」が「実現するハードルは高い」。そもそも、黒田日銀総裁が掲げる「2%の物価安定目標」という目標は、安倍総理が唱える「大胆な金融緩和」によって金融市場で「円安・株高」が進行するという「根拠なき熱狂」の中で、その是非の議論がなされないで設定されたもの。「円安・株高」にブレーキがかかれば、様々な理論的矛盾が露呈して来ることは分かり切ったことでもある。

黒田日銀総裁が「物価上昇など市場の期待は転換しつつあるし、予想物価上昇率も上昇しつつある」と強気の認識を示した26日、総務省が発表した3月のCPI(生鮮食品を除く)は、前年同月比0.5%下落と5カ月連続の下落となった。先行指標と言われる東京都区部の4月のCPIも前年同月比0.3%の下落となっており、国民が抱く「予想物価上昇率」は、黒田日銀総裁の期待に反して殆ど上昇していないことが示された。

一方、同じ26日、電力10社と都市ガス大手4社は、原燃料価格を料金に反映する原燃料費調整(燃調)制度に基づく6月の料金を発表し、円安の影響で原油や液化天然ガス(LNG)などの輸入価格が上昇していることを理由に、3カ月連続で全社が一斉値上げすることを発表した。

電力、ガス会社の一斉値上げは、国民が抱く「予想物価上昇率」を確実に引き上げるもので、黒田日銀総裁にとっては心強い援軍かもしれない。3か月連続で引き上げられる電気・ガス料金と、5か月連続の下落を記録した消費者物価。これは、今の日本経済は、「物価は市場の期待で上がるものではなく、消費者の懐具合(有効需要)によって上がる」状況にあることを示したもの。黒田日銀総裁の「期待」は現在の日本経済の状況にそぐわないもの。黒田日銀総裁が「物価上昇期待が物価を押し上げる」という妄想に憑りつかれている間、消費者は電気・ガス料金を筆頭に公共料金の上昇という「恐怖」に晒されることになるのかもしれない。

日銀が資金供給(マネタリーベース)を増やすことは、為替市場での円安圧力を抑えるという観点で必要不可欠な政策である。しかし、中央銀行が資金供給を増やすだけでデフレ経済から脱却できるほど現在の金融・経済は単純ではない。そうした中で物価上昇を金融政策の目標とするのは、公共料金が大幅に上昇するまで円安を進めるということでもある。公共料金の値上げは増税と同様に、有効需要を落とすことで、デフレの要因となるもの。有効需要が低下する中での物価上昇政策は、スタグフレーション(不況下の物価上昇)への誘いである。

「どんな経済モデルで計算しても物価だけが上がって賃金が上がらないということはない」

黒田日銀総裁は、記者会見でこのように述べ、物価上昇が賃金上昇に繋がると主張した。「どんな経済モデルで計算しても…」というのは、黒田流ジョークなのだろうか。

日本経済新聞などが黒田日銀総裁の掲げる「2年で2%の物価安定目標を達成する」という目標を「実現のハードルは高い」と評するのは、民間の予測と大きな隔たりがあるからである。

また、2015年度に1.9%とされた日銀の物価見通しは、「9人いる決定会合メンバーのうち、最大値と最小値を除いた7人の見通しの中央値」。展望レポートの「見通し期間の後半にかけて、2%に達する可能性が高い」という表現に対しは、佐藤健裕、木内登英両審議委員が反対した事が報じられている。佐藤審議委員はモルガンスタンレーMUFG証券のエコノミストであり、木内審議委員は野村證券のエコノミストである。

「中央値」であり「平均値」ではないので、1.9%というのは7人の予想値のうち真中の4番の予想値ということ。恥ずかしながら筆者には「中央値」を採用するのに、何故最初に最大値と最小値を除く必要があるのかは理解出来ていない。9人の「中央値」と、最大値と最小値を除いた7人の「中央値」で異なる結果となるのだろうか。

民間予測との予測に大きな隔たりがあること、日銀審議委員のうち、モルガンスタンレーMUFG証券と野村證券出身エコノミストが反対したということは、「どんな経済モデルで計算しても、日銀が導く回答は出ない」ということを印象付けるもの。展望レポートで示された2015年度に1.9%という物価目標は、「日銀の経済モデルでしか導き出せないもの」である可能性は高い。
そうだとすると、黒田日銀総裁の「どんな経済モデルで計算しても物価だけが上がって賃金が上がらないということはない」という主張は、「日銀の経済モデルで計算しない限り、物価が上がることで賃金も上がる」という結果を導けない可能性があるということ。

こうした黒田日銀総裁の「根拠なき金融政策」に対する市場の「期待」は、「円安・株高」が止まることによって剥げ落ちて行く運命にある。黒田日銀総裁が自らに対する「期待」を市場で維持することを目指すなら、「円安」の副作用が取り沙汰されて来ていることを考えると、より「株高の維持」に傾斜して行く可能性が高いのかもしれない。

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