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【特別寄稿】日本学術会議経済学委員会『「東日本大震災」に対する緊急提言』

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1. はじめに



今回の東日本大震災は、戦後最大の被害を日本にもたらした。多くの人命が失われ、多くの人が家族や知人を亡くし、多くの人の暮らす場所や働く場所が破壊され、多くの人が生活を共にする地域コミュニティーが消滅した。この損失の大きさは計り知れず、金額による査定を拒むものである。

 経済的な被害という金額による評価が可能なものに限っても、内閣府の試算によれば少なくとも15兆〜25兆円という被害額にのぼっている。これは、阪神・淡路大震災時の被害額であった10兆円を大きく上回り、日本の一年間の国民総生産(2010年は約480兆円)の3-5%にも当たる巨大な額である。

 もう少し数字を身近にするために、被害額を日本人一人あたりで計算すると12万円から20万円になる。一人あたり国民所得は平均すると約270万円であるから、その大きさの程度が実感できるだろう。

 ただし、重要なことは、以上の算定は、3月23日時点での道路や港湾、電気やガス、水道などの社会インフラの毀損と住宅や企業の工場設備などの建物の損壊、農地などの北海道、青森、岩手、宮城、福島、茨城、千葉の地域における被害額についての試算でしかないことである。その後明らかになってきた工場間・企業間のサプライチェーンの断絶、計画停電による首都圏の経済機能の停滞、福島第一原子力発電所の事故が農家や企業に与えはじめている被害や消費者心理に対する萎縮効果などは考慮されていない。とりわけ、原発事故は予断を許さない状況が続いており、もっとも楽観的なシナリオでも収束までに数ヶ月は要するとみられている。また、たとえ収束してもそれまでの期間はもっと長く、しかも一定範囲の地域に深刻な環境汚染をもたらす可能性が大きい。したがって、原発事故に関しての楽観的なシナリオを前提としたものであることに留意が必要である。より悪い状況が発生したときには、根本的な見直しが必要になる。

 以下は、救助、支援、復旧、復興、さらに再生に向けた経済政策提言である。これに対しては、日本学術会議における経済学関係のメンバーから寄せられた多くの意見を参考として、岩井克人(経済学委員会委員長)が4月3日までにまとめたものである。メンバーの意見をすべて反映したわけでもなく、メンバーの中で意見が異なる政策も多く、しかも長期的なヴィジョンを始め多くの論点において不完全である。だが、事態が急速に変化している中、不完全なままでも「提言」として公表した方が良いという判断に達した。諸方からのご批判を仰ぎたい。

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