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ボストンテロを利用してアメリカとの関係改善を図りたい中国

 『環球時報』の社説「谴责恐怖主义应是无条件的」が如何にも中国の主張しそうなもので、いろいろ興味深かったので、これについて少し。

1 記事の紹介

 最初にいつものとおり、記事を翻訳したものを簡単に紹介させていただきます。
 15日にアメリカボストンで発生したテロ爆発事件では、3名の死者、100名余りの負傷者を出した。全世界が注目する中で、アメリカはどのように襲撃に対応していくのか、この事件はアメリカの国家戦略の変化を招くのか。

 12年前の9.11ではアメリカは反テロ戦略を推し進め、そして2回の戦争を招いた。オバマ政権は、2011年にビンラディンを殺害し、反テロ戦争の重大な業績を宣言し、「アジア太平洋回帰」をアメリカの新しい戦略として優先した。アメリカは国内の反テロを緩和したわけではないが、警戒は薄まっていた。

 ボストンのテロ攻撃は敵意を顕わにしている。テロリズムは国家、時には世界すら乱しうる驚異的なエネルギーを持っていることを再度証明した。テロ攻撃のコストは低いが、情報化社会では、一回のテロリズムの成功で、国家は全力を挙げて防衛せざるを得ず、代価も高く、正常な戦略を行うのに、大きい妨げとなる。

 アメリカ、ロシア、中国、イギリスなどの大国は、テロ襲撃の被害者だが、これらの国々は、反テロで長期の同盟者になり得ず、大国での利益は依然として、紛争状態にある。

 テロリズムの定義は、国々で違いはあるが、国民を殺すことが深刻な犯罪であることは、疑いの余地はない。問題は、西側諸国は常に、国民を襲撃する「動機」を重視して、襲撃される対象を考える。

 西側諸国でおこった国民・公共機関に対する襲撃をテロと定義し、ロシアや中国で同じようなことが起こったも、西方の世論は国民が襲撃された事実以外のことを重視し、テロリストを道徳的に弁護する。

 ロシア、中国に対するテロリズムを西側が公然とかばうことは、世界の反テロ協力を難しくしている。更に、全世界のテロ勢力は連絡を取り合っており、時には、呼応した行動を起こし、気勢を上げる。

 西側諸国がテロに対してダブルスタンダードをとっている。現代社会の構造はもろく、テロの危険性は長期に渡り、テロによる混乱は益々大きくなる。大国はこうした影響を軽視してはいけない。

 国民を襲撃するのが最も重い罪で、これは全世界の「普遍的な価値」であるべきで、動機や襲撃の太対象で、区別すべきではなく、国同士がこの問題で争うべきではない。我々はボストンのテロ攻撃及び実行組織を厳しく非難する。ロシアや中国で今後テロが発生した時、欧米の正論を同じようにテロ組織を批判することを期待する。

2 個人的感想

 9.11が起こる前の世界情勢を見てみると、当時アメリカはブッシュ政権で、チェイニー副大統領やラムスフェルド国防長官といった「右派」が外交を仕切っておりました。

 更に、1999年には中国在ユーゴスラビア大使館がNATO軍によって「誤爆」され、死者がでたこと、それを受けて在中国アメリカ大使館がデモ隊に取り囲まれたことや、2001年8月に海南島でアメリカの偵察機と中国の戦闘機が空中衝突するという事件があり、米中関係は悪化していました(アメリカ同時多発テロ10年後の中国の見方)。

 そうした米中関係を一挙に改善したのが、9.11で、アメリカは反テロで各国の支援をとりつけるため、中国やロシアなどで分離独立運動派が起こす反政府運動も9.11などと同じ「テロ」活動なので、世界が協力して弾圧すべきと認めました。

 結果、新たな敵の出現により、米中改善は改善したわけです。ただ中国などにしてみれば、「中国国土の統一」という、自分たちが勝手に作り上げた悲願があり、国内における分離独立運動を認めるわけにはいかず、どの様なことをしてでも取り締まろうとします。

 結果、ダライ・ラマなどを「不倶戴天の敵」として批判したりすることとなります(日本と漁業協定を締結した台湾に対する中国の苛立ち)。また、中国のこうした独立運動に対する取り締まりが人権という観点からみてどうかという批判も起こってきました。

 9.11当時アメリカはかなりの興奮状態にあったため、こうしたところとも手を結んだわけですが、冷静になって考えて見ると、中国やロシアの国内紛争(分離・独立運動)を「テロ」として、単純に取り締まることはどうかとなるわけで、次第に一線を画すようになっていきました。

 そうすると面白くないが中国で、中国国民からはアメリカがビンラディンを殺害したのはどうかという話も出てきます(ビンラディン殺害に対する中国の反応)。ただ、中国政府としては、世界各国の支援を得たいとの思惑から、肯定的な意見を述べておりました(ビンラディン殺害に対する中国の反応2)。

 今回の社説もその延長線上にあるもので、ある意味予測できた社説ではあります。ただ、「テロ」という行為をどのように考えるのか複眼的な考察が必要で、それほど単純ではないということが見て取れることを考えさせてくれる社説かと思ったが故の今日のエントリーでした。

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