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3月24日 アベノミクスの今後の展望について、田原総一朗氏と竹中平蔵氏の緊急対談 (前編)

プロフィール 【田原総一朗氏】 1934年、滋賀県生まれ。 60年、岩波映画製作所入社、 64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。 77年にフリーに。 テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』で テレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。 98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。 現在、早稲田大学特命教授として大学院で講義をするほか、「大隈塾」塾頭も務める。 『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数。 また、『日本の戦争』(小学館)、『田原総一朗自選集(全5巻)』『絶対こうなる!日本経済』『田原総一朗責任編集 ホリエモンの最後の言葉』(アスコム)など、多数の著書がある。 【竹中平蔵氏】 1951年和歌山県生まれ。一橋大学経済学部卒業。 ハーバード大学客員准教授、慶應義塾大学総合政策学部教授などを経て、2001年小泉内閣で経済財政政策担当大臣を皮切りに、金融担当大臣、郵政民営化担当大臣兼務、総務大臣を歴任。2006年より現職。経済学博士。 著書は、『経済古典は役に立つ』(光文社)、『竹中式マトリクス勉強法』(幻冬舎)、『構造改革の真実 竹中平蔵大臣日誌』(日本経済新聞社)、『研究開発と設備投資の経済学』(サントリー学芸賞受賞、東洋経済新報社)など多数。
書起し全篇です。

司会:それでは皆さんこんばんは。 お時間になりましたので、始めさせていただきます。 本日は3月から正式オープンします、安倍内閣の経済政策を徹底検証することを目的とするニコニコ動画のチャンネル、「アベノミクスチャンネル」のオープンを記念しまして、特別対談として開催することとなりました。 本日ゲストにはジャーナリストの田原総一朗様、そして慶応義塾大学教授グローバルセキュリティ研究所所長、アカデミーヒルズ議長の竹中平蔵先生をゲストにお迎えしています。 それでは早速、特別対談「アベノミクスはどこへ向かう」を始めたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

竹中:田原さん、今日はよろしくお願いいたします。

田原:よろしくお願いします。

竹中:アベノミクスについて、今更「三本の矢」の解説も必要ないと思うんですけれども、これまでの安倍内閣の動き全体を、田原さんご自身はどんな風に総括をしておられますか。

田原:まず、お尋ねしたいんですが、実はアベノミクスに日本の有力な経済学者、エコノミスト、本音は全部反対なんです。 ところがマーケットが円安になり、株価が1万2千円と上がってきた、かつて8千800円ですからね、円だって77〜78円、これが95〜96円。 マーケットがアベノミクスに右上に反応してるから、本当は反対の東大はじめ、経済学者が怖くて反対できない実態があります。 アベノミクスに「本当にこれはいいよ」と言ってるのは、いくらもいない。それはもう竹中さんと高橋洋一と浜田幸一ぐらいなんですよ、はっきり言って。

竹中:今の浜田先生の名前も挙げられて、田原さんのご指摘は実は冷静に考えると非常に正しいんです。なぜならば、インフレ・ターゲティングの議論は10年前からやっています。10年前から私たちはずっと主張してきたけれども、多くの反対で実現しなかった。 もう一つはいわゆる上げ潮戦略というか 成長戦略。これはもうずっと10年前から言ってるんですけども、これはメインストリームの人たちは確かに反対している。

田原:自民党でも上げ潮戦略っていうのは中川昭一さんくらいで全然孤立した。

竹中:ただ逆に言うとやっぱり”総理の力”ってすごいと思うんです。 一点突破した安倍さんの力。私はすごいと思うし、同時に一度安倍総理として総理を退かれてから今までの間に安倍さんご自身がどんな風にしてここまで強く、この信念を成長と、脱デフレ、インフレ・ターゲティングに、どこまで強く信念をお持ちになったのかっていうのは、これ一度ゆっくり安倍総理ご自身に聞いてみたいところなんです。 でも田原さんはだいぶインサイドストーリーをご存知かと思うんですが……。

田原:いやぁ、そうでもないですが、やっぱり安倍さんが1年で辞めちゃった。僕はあのときに参議院選挙で負けてただちに辞めるべきだと思ったし、安倍さんに言ったんです。あのとき続けろって言ったのは麻生太郎なんです。で、一ヶ月で体調悪くして、倒れちゃった。そのときは正直言って「だらしないな」と思った。 ところが、野党になった。で、安倍さんが野党でね、やっぱり正直言って、自民党で誰かって言えば安倍さんしかいないと思った。ただ、吉田茂以外に二度総理大臣になったのは誰もいない! こういう中で安倍さんしかいないけど、相当時間がかかるだろうと思った。こんなに簡単に総理になるとは思わなかった。竹中さんどうですか。

竹中:ご指摘の通りで、私も参議院選挙で敗れて、あのまま退いておられたら、次のチャンスはあると思ってたんですが、まぁああいう形で、はっきり言ってヨレヨレになってですね、もう辞めざるをえない。これでまぁ「安倍さんの将来は難しくなったなぁ」と。可能性があるとすれば、かなり年数が経ってから「どこかの内閣で外務大臣かなんかで復活することあるのかなぁ」と。ただし総理大臣になるのは大変難しいだろうなぁと、正直言って思いました。

田原:正直言って、60後半だと思ってた。(安倍さんが)総理になるのは。

竹中:そこがしかし、安倍さんがですね、わぁっと一気に、こう復活してこられるわけですよね。

田原:そこで竹中さんに聞きたい。正直言って安倍さんがそんなに経済に詳しいとは思えない。今まで、自民党も、それから民主党もケチケチ経済です。財政赤字、1千兆。だから「いかに財政を絞るか、絞るか、絞るか」こればっかりですね。 野田さんになって消費税増税までやった。絞る絞る絞るだった。この時に安倍さんが成長戦略「三本の矢」誰がこういう知恵つけたんですか。安倍さんに。

竹中:そこを安倍さんにゆっくり聞いてみたいと思うんですが、多くの方が「安倍さんが総理として復活するのは難しい」と思っておられてそういう中で、ある種安倍さんはものすごく精神的自由になって「いろんな人といろんな議論をされたんだろうな」と思うんです。 私の認識では、「実は安倍さんは、経済に対してかなり強い」私はそういう認識持っているんです。これは安倍さんのすごいわかりやすいエピソードがあるんですけれど規制改革で特に”タクシーの待ち”が増えただとか、

田原:タクシーがどんどん増えた。

竹中:増えた、と、増えすぎだとかいう批判があったときに、安倍さん面白い話をされたんですよ。「自分はそう思わないんだ」と。実はこれ官房長官のときですけどね、たまたま

田原:小泉内閣。

竹中:小泉内閣の官房長官のときですけど、安倍さんたまたま運転手が、車がどうしても間に合わなくて、やむを得ずにタクシー乗ったんですって。 そうすると運転手さんが、「おう安倍ちゃんかい」って言って。こういう言い方がすごく安倍さんらしいんですよ。「安倍ちゃんかい」って言って。 「タクシー(の運転手)これね、俺たち(タクシーの運転手)給料安いんだよなぁ。でもね俺、前からタクシー運転手やってるんだけれども、今度リストラされた息子もね、車増えたんで運転手になったんだよ。そうすると前から自分の給料三割下がったかもしんないけどね、それで0.7になってもね、息子も0.7だからね、足すと1.4で前より増えてるんだよ」

田原:そういえばそう。

竹中:そういう話を安倍ちゃんはピーンと捉えるんですよ。

田原:そういえば、つまりバブルが弾けて、リストラが起きて、リストラされた人がね、多くタクシーの運転手やってる。

竹中:だから結局その一見確かに給料は下がった。で、競争で厳しくなったかもしれないけど、全体としてのパイは大きくなっているという。これ実は経済の本質なんですよ。そういうところ安倍さん、パンと見てる。

田原:なんでわかるんだろう。

竹中:いや、やっぱり安倍さんだから。

田原:大して経済勉強してると思わない。

竹中:いやいやいや、安倍総理とこの間話されたでしょう?安倍総理すごく速いテンポでかぁーっといろんなこと話されるじゃないですか。ものすごくフランクに。あれはやっぱりね、私は頭の回転の速さだと思うんですよ。

田原:自信もあるけど、僕びっくりしたのが、オバマ大統領と会いました。あのとき約20分、全く台本なしで喋ってるんです。こんなことありえない!今までの日本の首相で。なに、あれは!?

竹中:いや、やっぱりなんかすごく魅力的な方ですよ、その意味では。さっきの「安倍ちゃんかい」みたいな話でですね。 結構話をさせていただいても、先日『』産業競争力会議のメンバー全員で安倍総理と食事をさせていただいたんですけども、そのときもほとんど総理が話しておられた。ほとんど総理が話しておられてですね、

田原:ちょっとね。せっかく皆さん来てるんだから、一つ全く知られてないことを申し上げたい。 実は安倍さんがアメリカ行ったときに、9月22日に、安倍さん主催の晩餐会が行われた。ここが親日派のマイケル・グリーンとかいろんな人が招かれた。このなかに一人不思議な人が招かれた。これが、アラスカ出身の上院議員のマコウスキーという女性なんです。で、実はほとんど新聞も知りません。マコウスキーの父親はレーガン時代の有名な反日政治家なんです。反日政治家の娘を安倍さんが招いた。知ってますか?

竹中:それは知りません。

田原:なぜなんだと。実は今、この報道の、報道って言うよりは、プロたちの間でこれが非常に評判になった。なんだ?と。女性ですよ。マコウスキーを。で、僕はクロスファイアがあるから徹底的に調べた。経済産業省のプロたちに。徹底的に調べた。 わかったんですよ。実は今アメリカで新しいガスが出てきた。シェールガス。ところがシェールガス、”シェール革命”っていうけど、実はシェールガスが日本に入ってくるのは数年かかると言われてるんです。それで実は、なぜマコウスキーを呼んだのか。アラスカにいっぱいガスがある。シェールガスが入ってくるまで、アラスカのガスを日本で買おうと。これが安倍さんの戦略だと。なんで安倍さんそんなこと知ってるんだろう。

竹中:いや、安倍さんはああいう感じですごくフランクにいろんな方と話されますから一般に想像されている以上に、非常に広い情報源を持っておられると思うんです。それと精神的に非常にポジティブな方だと思うんです。で、実はこれも知られてないんですけれども、こないだ『ダボス会議』がありました。安倍総理は残念ながら出席できませんでした。そして名代として甘利大臣と茂木大臣が出られた。ちょうどこれくらいの部屋でマスコミも入れないクローズドなセッションをやったんです。ちょうどこれよりちょっと大きな画面に、安倍総理が渋谷のNHKのスタジオからテレビで出られたんです。これは

田原:『ダボス会議』のスクリーンにそれが映るわけだ。

竹中:映るわけです。それでほんの限られたメンバー、ここに甘利さんと茂木さんが座って、限られた特に有力者を呼んだんです。これはすごいメンバーだったんです。前のイギリスの首相のゴードン・ブラウン、元のメキシコの大統領のセディージョ、現職のOECD事務総長のグリア、ノーベル賞とったユヌス、フィナンシャル・タイムズのマーティン・ウルフ、これ一番うるさい人なんですけど。あとはロゴス。ケン・ロゴスとか、有名な人がずらーっと並んで、それで安倍さんは日本のスタジオから『アベノミクス』の考え方を何にも見ないで話したんです。

田原:『アベノミクス』について喋ったんですか。

竹中:喋ったんです。これが凄くいい話だった。凄く魅力的で、本当に“腑”に落ちてる話をするんです。なんか普通やっぱり政治家って官僚が書いたものを読み上げがちなんですけども、やっぱり腹に落ちたものを話すって、腑に落ちたこと話してるから、すっごい魅力的なんです。それを聞いた、

田原:竹中さん、よいから。せっかく竹中さんだから具体的に腑に落ちたってどういうこと言ったんですか。

竹中:なぜ自分は日銀に対してこう強いことを言ってるけど、なぜ自分はそういう風に思ったのかと。

田原:選挙の最中に日銀と喧嘩したんだ。

竹中:当然、日銀に対してね、あの政治家介入してはいけないってことは自分は当然わかっているんです。だから私はその中身について、金融政策の中身については何も言ってません。そうではなくて今、日本が、デフレっていうのがいかに日本を蝕んできたかっていうことを、その思いを話したんです。 これは思うに、2006年3月に日銀は例の量的緩和をやめて、あのときデフレを克服するチャンスだったんですよ。にも関わらず、さっこれでデフレを克服できるぞっと思った瞬間に日銀は量的緩和やめちゃって。それでまぁ今日みたいになっちゃったんですけど。あのとき私はもう総務大臣になってて、経済財政担当じゃなくて悔しい思いをしたんですが、実はそのときの内閣官房長官は安倍さんなんです。

田原:変な人が経済財政資本会議になったんだ。名前言いませんけど。

竹中:そうなんです。

田原:どうしようもなかったんだ、あの人は。

竹中:それでね、そういう自分の思いを伝えたんですよ。これはみんなすごいですよ。安倍さんはやっぱり魅力的なんです。それでそうだ、そうだとみんな賛成したんです。

田原:これ、僕はそこは安倍さん偉いと思う。やっぱりデフレから脱却だということをまず言った。日本でも実はこれは円安にするためにやっているんだということを言う人もいたし、新聞もそう書いた。それ言わなかった。わかってんだから。

竹中:そうなんです。それでね、結局ね、円安のためにやってるっていう批判はその場では全くないんです。

田原:あ、ない?

竹中:ないんです。とにかくアベノミクスの三本の矢は正しい。それをぜひしっかりとやってくれと。別のところで実は円安を批判する声はもちろんあったんです。それはドイツのメリケル首相がその話をしたんです。

田原:メリケルさんが批判したの?

竹中:したんです。でもそのとき皆なんて言ったかっていうと、「ドイツが言うなよ」って言ったわけですよね。

田原:だってユーロ安で儲けてるじゃない! ドイツは。

竹中:そうなんです。ドイツはギリシャとスペインのせいでユーロが下がりましたと。そうすると漁夫の利を得たような形で輸出力が強いドイツがわーっと、

田原:一人で儲けてる。

竹中:一人勝ちになっちゃったわけでしょ。だからそんなこと言うのはおかしい。だからその円安に対する批判っていうのは日本の新聞には結構大きく出ました。でもこれは全くバイアスがかかってます。

田原:あのダボス会議で円安の批判はなかったの?

竹中:だから各国が懸念って書いてたでしょ。それは違います。事実と違う。そういう意見もないわけじゃないけども、極めてそれはマイナーなものです。それはもう圧倒的にアベノミクスの三本の矢は正しいからそれをちゃんとやってくれっていう話です。

田原:更に聞きたい。こないだのG20のとき。実はG20で、先進国の、G20のとき。日本の新聞などは、つまり日本の円安政策を名指しで批判されるんじゃないかと。名指しで批判されるんじゃないかと、恐れに恐れてた。ところが当日になったら、どこも名指しの批判がなかった。あれはどういうことなの? つまり日本が円安政策をやってる。円安政策で、実は途上国見捨てるところもある。ブラジルからね批判もあった。ところがだから、本当はG20のときに、アメリカをはじめ各国が日本を名指して批判するんじゃないかと。前日まで新聞が全部書いてた。なかった。なんでですか?

竹中:これはもう極めて単純明快です。だってアメリカの方が日本よりもっと金融緩和やってるんですから。

田原:つまりリーマン・ブラザーズの倒産のときに、まずアメリカが金融緩和して、言ってみればドル安政策打った。

竹中:だって一年間の間、要するにあの金融政策ってそんなに難しくなくてお金をたくさん出すのを金融緩和って言うわけです。お金をたくさん出すためには中央銀行はどうするかって言うと、何かを買うんです。普通国債を買うわけですね。国債を買ってお金を出すと。そうするとバランスシート大きくなるんです。

田原:お金を出すってことはドルをどんどん刷るってことだ。

竹中:バランスシート大きくなるから、バランスシートがどれだけ大きくなったかを見れば、どの程度金融緩和をしたかがわかるんです。実は一年の間に、リーマンショックの一年の間に、アメリカの中央銀行のバランスシートは2倍以上になっている。2倍ですよ。日本は10%くらいしか増えてないんです。

田原:そのときにイギリスもやった。

竹中:そうです。

田原:実は、金融緩和。

竹中:ヨーロッパ全体もやりました。日本は一番遅れてやったわけで、その一番遅れて、しかもその程度はまだアメリカよりも充分じゃないわけで、日本だけが批判されるという風に考える方がおかしい。

田原:ちょっと待って。そのときにアメリカもイギリスもヨーロッパも言ってみれば、自国のドル安、ポンド安やったとき、なんで日本はやんなかったの。本当ならむしろやるべきだ。

竹中:それは白川さんだからやんなかったんじゃないですか。

田原:政府にもそういう考えがなかったんじゃない?

竹中:当時の政府というのは、基本的にはやっぱり民主党ですから。民主党の経済政策って面白いんですよ。個々に見るとそれなりにいいこともやってるんだけれども、全体のマクロ政策という概念がごっそり抜け落ちているんです。 だから私はよく言うんですけども、たとえば船の廊下を一生懸命磨いてる。船の廊下ピカピカにだんだんなった。でもその船は全体としてどんどんどんどん沈んでいってる。船が沈んでいってるのに、一生懸命廊下を磨いてた。これは要するにマクロ政策がなくて、個別にはまぁちょっといいことやってる。

田原:ちょっと具体的に聞きたい。民主党政権になって、円はどんどん高くなった。株はどんどん安くなった。どこが間違ってたの? 行間の話でもうちょっと具体的に聞きたいんだけど。そのマクロ政策がなかったって、何がなかった?

竹中:基本的には、経済成長に対して関心を払わなかったっていうのが一番大きいです。経済成長に関心を払わないで「今あるパイを、どうぶんどって分けるか」分配のことばっかりやった。しかしそのパイがどんどんどんどん小さくなっていくんだから、要するになぜ円が高くなるかって言うと、円という通貨が希少だからです。円という通貨が少ないからです。対外的に。だから円が高くなるんです。国内的には何が多いかと言うと円という通貨が少ないから、お金の価値が上がって、ものの価値が下がるデフレになるんです。 だからデフレも国内のデフレも対外的な円高も、全部やっぱりマネーの量が少ないということで、極めて単純明快に説明できるんです。

田原:僕はそこで馬鹿なことを聞いたんですよ。今のルース大使、日本大使館行って。円高でしょ。日本は円高で困ってる。かつてドル高でアメリカが困ったときに、竹下さんですね、プラザ合意で日本は円高政策をとった。だからドル安になった。今、日本は円高で困ってる。「アメリカよ!なんとかね、円安政策になるようにやってくれ!」って言ったの。 そんなことは日本は自国でやればいいんだ。ルースさん。正しいわけね。

竹中:ええ、そうです。

田原:つまり本当ならば、円を刷ればいい。なんでやんなかったんだろう?

竹中:いや基本的にはですね、これはまぁ推測です。これは実はよく、今でもこういう議論するわけです。さっき言った「マネーの量が多いか少ないかだ」って言いました。GDPに対するマネーの量を見ると、実はアメリカより日本の方が多いんです。 だからよく知らない人は日本の方が金融緩和やってるって言うんです。でもこれ根本的に間違ってるわけです? なぜかって言うとアメリカってだってキャッシュ使わないじゃないですか。

田原:小切手だ。

竹中:そう。日本はキャッシュを使うんだから、GDPに対するマネーの量が多くて当たり前なんです。だからこんな量を比べても仕方ないわけで、その伸び率が高いか低いかを比べなきゃいけない。そこをやっぱりね、日銀は誤魔化していたんです。伸び率が低い、水準は高い。当たり前です、キャッシュ使う国なんだから。それを伸び率が低いのに「充分緩和してる、緩和してる」って言ってきて、よくわからない政治だとジャーナリストが誤魔化されてきたんです。

田原:日銀が言ってる金融緩和はゼロ金利だと。ゼロ金利だから、金融は緩和してるって言ってたのね。

竹中:そうですね、それも言ってました。

田原:量的緩和は全く増えない?

竹中:ええ。でもまず、量が。マネーの量って増えていかなきゃいけない。これはね、すごい単純な算数だと私は思うんです。 例えば経済、GDPがもしも実質で1.5%成長するとしましょうか。それで物価上昇率が2%するとしましょうか。そうすると名目GDPは3.5%成長しますよね? GDP、だから物価2%ぐらい上昇するような普通の経済にしようと思ったら、名目GDPって3.5%成長になるんですよ。そうしたら必ず、マネーの量は3.5%以上増えてないといけないんです。つまりGDPの伸びよりもマネーの伸びの方が普通高いんです。これが世界の普通の傾向だから、だから4%くらいマネーが増えてないと、今言ったような正常な経済にならない。ところが、日本のマネーの増え方っていうのは、ここのところ1%代です。2%増えてない。デフレになるの当たり前なんです。それをしかし日銀はちゃんと管理してこなかった。

田原:更に危険なこと聞きたい。デフレですよね? もっと言えば、宮澤さん以降ずっとデフレなんですよね。小泉内閣を除いては。そのデフレからの脱却とい発想がどうして日本の歴代総理になかったんですか?

竹中:基本的には小泉内閣のときはもう一歩でデフレが脱却できるところまでいったんです。おそらくそこはマクロ経済に対するチェックの仕方が弱かったんだと思います。

田原:どうしてですか?

竹中:いや、そうやってマクロ経済チェックするのは経済財政資本会議です。我々のときは、私たちが経済財政資本会議やってるときはこれはダメだと、このままじゃダメだ、日銀もっとしっかりしろっていうことをずっと言ってきたわけです。ところがそのマクロをチェックする経済財政資本会議が小泉さんが去られたあと、それが上手く機能しなくなって、民主党政権に至ってはそれをなくしてしまったわけですから。 だからさっき言ったように、マクロ経済運営という概念がもうなくなっちゃったという言い方を私はしたんです。

 後編へ続く

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