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料理しないIT系ケータリングサービス「Cater2.me」

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Google社をはじめとして、米国のIT業界では、社員に社内で無料で昼食を提供する企業が増えている。有能なIT技術者の勤労意欲、作業効率、愛社精神を高めるには、高給で優遇するだけでなく、彼らの胃袋を満たすことが効果的という認識が広まっているようだ。

昼食の提供はIT系のスタートアップにも波及しているが、まだ誕生間もないスタートアップでは、社内に本格的な調理設備やカフェテリアを揃え、シェフを常駐させることは難しい。

そこで企業に昼食を届けるケータリングサービスの利用が増加している。

2010年後半にサンフランシスコで創設された「Cater2.me」も「ランチ革命」と銘打って、企業に昼食を届けているeコマース企業だ。顧客のリストには、Dropbox社、Klout社、Adobe社、Yelp社といったハイテク企業の名前が並ぶ。

サンフランシスコで顧客基盤を築いた後、ニューヨークとシカゴにも進出し、今年の1月と2月だけで、5万食をニューヨークで提供したと報告されている

創業のきっかけは「味気ないオフィスの昼食」

Cater2.meの共同創業者Zach Yungst氏とAlex Lorton氏はアイビーリーグの大学でビジネスを専攻していたときに知り合った。大学を卒業後、ともにニューヨークの金融業界で働いていた。

激務の中、オフィスで食べる昼食を味気なく感じはじめ、世の中には、自分たちと同じように退屈な昼食に飽き飽きしている社員が大勢いるに違いないと気づき、「これはビジネスのチャンスだ!」と畑違いのケータリング業に飛び込んだ。

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<顧客(右)の要望を聞くLorton氏(左)とYungst氏(中央)>

料理しないケータリング会社

Cater2.meには、調理を専門とするスタッフはいない。代わりに外部のレストランや飲食業者と契約し、契約業者の中から顧客のリクエストに適した組み合わせを考えてメニューとスケジュールを組んでいく。

このシステムにより、一般的なケータリングに比べて、バラエティに富むメニューの提供が可能になり、和食、タイ料理、中華、イタリアンといった米国人にもお馴染みの料理以外に、マレーシア料理、ベネズエラ料理、ジャマイカ料理、アフリカ料理もメニューに加えられた。

eコマースの世界では、ECサイトの運営側がもっている知識を使って、提供する商品を選り抜いた上で顧客に提供する「キュレーションサービス」が流行しているが、Cater2.meも自分たちの役割の1つを「選りすぐった飲食店を顧客に紹介するためのキュレーションにある」と説明している。

2人の共同創業者は多くの時間をインターネットに費やし、食に関する記事やブログに目を通して、トレンドをチェックする。週末には、インターネットで発見して関心をそそられたシェフのもとを訪れ、アプローチをかけている。

食事の注文担当者の負担を軽減

米国では、好き嫌いや食物アレルギー以外に、宗教的な戒律や主義により、特定の食べ物が口にできない人も少なくないらしい。注文を任された担当者は神経を使わなければならない。

Cater2.meならば、希望の日時と人数を指定して申し込み、特定の食物を食べられない人の有無や人数を指定すれば、Cater2.meの方で調節し、メニューも工夫してくれるので負担が軽減されると、注文担当者から喜ばれている。

予約した日にはCater2.meのスタッフが社にやって来て、契約業者が昼休みの開始と同時に昼食の提供を開始できるように調理や給仕のために必要な前準備を整える。

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その後を契約業者が引き継いで調理と給仕を行う。

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食事の後、企業側が送信するその日のメニューと料理の内容についての評価を参考に、Cater2meはメニューを各企業に合わせてさらに最適化していく。

「小さなレストラン」や「屋台」の料理を中心としたメニュー構成

企業が社員に社内で昼食を提供するようになると、その企業の近くにある飲食店は売上が減少するので、近隣地域の経済にとってはマイナスになる。

そこでCater2.meは料理の質や評判、仕事にかける責任感などを確かめた上で、地域内の小さなレストラン、ストリートやファーマーズマーケット、トラックで営業している屋台の業者と積極的に契約している。

「大企業ほど社員の食事にかけられる予算がない小規模や中規模の企業」と「ケータリング業界に参入したくても、参入の足がかりがない小さな飲食業者」をマッチングすることで、顧客を満足させると同時に地域の経済を活性化することをCater2.meは自分たちのミッションと宣言している。

契約業者にとっては、毎月一定の収入を確保できることに加え、自分たちの存在を知ってもらえる機会にもなるので、Cater2.meとの契約は非常にありがたいということだ。

Cater2.meを利用している企業には、昼食を通じて、近隣に美味しい店があることを知り、休みの日にその店が営業している場所まで足を運んでみたという社員もいる。

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インターネット時代の「中間業者」

2011年9月24日付けのNew York Timesの記事は彼ら2人を「古典的な中間業者」と呼んでいる。

そして通常、eコマースが除去する方向で努力している「中間業者」が成功しているのは矛盾するように思えるが、インターネット時代になっても、消費者にはまだ助けを必要とする分野があり、Cater2.meは単に食事を届ける仲介をしているのではなく、情報を吟味して業者を選択するという価値を加えているから成功しているのだと指摘している。

つまり、インターネット時代になっても中間業者がすべて排除されるわけではない。生産者から消費者に品物を届けるまでに有意義な価値を付加することができれば、オンラインがビジネスの舞台になっても、中間業者の活躍の場は残っているのだ。

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