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足なんて飾りです

ほんとにいまさらな小ネタ。朝日新聞2011年4月19日夕刊「素粒子」欄で、原発事故現場に投入された米国の遠隔操作ロボットをとりあげていたのだが、ちょっとあれはひどかったと思うので、少しだけ書く。

以下、どちらかというと私憤に近いので、あまりおおげさに受け取らないでいただけると。

曰く、当該ロボットが「映画「ハート・ロッカー」に出ていたのにそっくり」「イラクで仕掛け爆弾を処理する米兵が使っていた」と。そりゃそうだろうよ。実際あっちでも使われてるんだし。でもまあここまではいい。ひどいのはここから。
日本の人型ロボと違い、生物を連想させぬ無限軌道と腕と目。
暗い建屋の扉を開ける光景は、バグダッドの廃墟を行くかのよう。戦場のごとき機械が必要なことに慄然とする。
はあ?

どうも、ロボットは人型しかご存知ないらしい。

そりゃ確かに、「ロボット」で画像検索すれば人型ロボットの画像がいっぱい出てくるよ?だけど、今存在するロボット全体(玩具の類は別として)でみれば、少なくとも実用になってるものとか、実用をめざして研究開発されてるものなんかだったら、そのほとんどが人型じゃないはずだ。そもそもロボットの形態は求められる機能から決まってくるわけで、少なくともああいう場で作業をするために人型である必要はあんまりない(人間と似たサイズであることは必要だろうけど)。

別にそんなことで目くじらを、といわれるかもしれないが、このコラムが気に入らないのは、読み手に、原発と結びつけることで、人型でないロボットへの嫌悪感を抱かせるような書き方になってることだ。本来この文章は、原発事故の恐ろしさみたいなものを強調する意図のようにみえる。もちろん書き手がロボット自体を嫌ってるのかもしれないが、原発批判のネタとして人型でないロボットの形態を持ち出して、イメージ操作するような文章を書いてるのは、どうにもいただけない。原発を批判したいならふつうにそう書けばいいじゃん。

あと、「日本の人型ロボ」については好意的っぽい書き方だけど、「日本のロボットは人型」みたいな決め付けをしてる書き方も気に入らない。実際、日本が伝統的に強いとされてる産業用ロボットは全然人型じゃないし、日本の各地でがんばってるロボット研究者にも、人型以外のロボットを研究してる人がたくさんいるだろう。安直だし、失礼な話だと思う。

そもそも、人型じゃないからって嫌悪するのは、「日本的」とはいえないんじゃないか。日本は、八百万の神の例もあるように、モノに心が宿るみたいな考え方を伝統的にとってきた国だ。日本人は世界的にみてもロボットへの親近感が高い方なんだろうと思うが、それもそういう伝統あってのもの、といえる(もちろん「鉄腕アトム」だの「ドラえもん」だのの影響もあるけど、あれだって元をたどればそういう文化に行き着くはずだ)。だから、別に人型ロボットだけが可愛がられてるわけじゃない。日本の工場で産業用ロボットに1台1台女の子の名前をつけてるのを視察に来た外国人が見て仰天したとかいう話も有名だったりする(参考)。

今日のニュースで、今度は日本のロボットを投入、という記事があった。

王国の威信回復かけ…国産ロボット、福島原発に投入へ」(朝日新聞2011年4月22日)

ちなみに先に投入された米国製ロボットってのはこれらしい。動画もつけとく。もちろん、こっちの方がちょっとごついけど、基本的にたいして変わらない。当たり前だよね?必要とされる機能が似てるんだから。このコラムを書いた人は、今度投入される国産ロボットも「生物を連想させぬ無限軌道と腕と目」とか書いて「慄然と」してみせるのかね。



とまあ個人的な怒りをぶちまけたところでこのへんにしとく。

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