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当事者にとっては、日常Twitterではくような言葉こそが、影響のある政治~SYNODOS編集長・荻上チキ氏インタビュー後編~

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「SYNODOS×BLOGOS 若者のための『現代社会入門』」。前編では、SYNODOSの編集長である荻上チキ氏にネット選挙運動解禁を控えた今後のWebメディアの役割について聞きました。後編では、今後のメディアについてうかがっていきます。【取材・執筆:永田 正行(BLOGOS編集部)】

「既存のメディアに勝つ」と言う物語そのものが間違っている


―よく「ソーシャルメディアがマスに取って代わる」といった言説があったりします。こうした主張は少し極端すぎると個人的には思いますが、荻上さんはメディア全体に今後どのような変化が起きていくとお考えですか?

荻上:そう言われてから10年ほど経ったように思いますが、取って代わりましたかね?ラジオや映画もそうですが、新しいメディアが登場すると、オールドメディアが持っていた機能の一部が、より得意なメディアに機能分化されていきます。そのうえで逆に、もともと持っていたそのメディアならではの特性の方に集中するというような動きが生まれてきます。

テレビというメディアが出てきた際には、「これで映画というメディアは潰えるんじゃないか」といった議論がありました。昔は、映画館でニュースなんかも流していたんですけど、2時間のドラマに集中するとか、分化していきましたよね。ラジオもテレビが登場したらなくなるなんて言われたりもしたんです。でも、なくなってはいない。なくなるって言ってた人、どうするんでしょうね。

要するに、ネットもその強みがある一方で、ネットでは難しいこと、できにくいことがたくさんあるので、ネットがマスのすべての機能を奪うわけではありません。ただやはり視認性や自分で検索ができると操作性といった面では長けているので、そうした機能を活用したメディア作りや政治の仕組み作りというものが今後重要になってくるのではないか、というのが一つあります。

また、コンテンツのサイドで言えば紙幅の限界というのはないので、議論を掘り下げることが可能です。掘り下げても全員がついて来るかどうかはまた別問題ですが、少なくとも既存メディアよりはその辺りは得意であるといえるでしょう。差し当たり、そうした長所を伸ばしていって、マスメディアに胸を張れるぐらいのWebメディアを育てていくというのが今のフェーズの当面の目標なんじゃないかなと思います。

―ただ、これは常々言われていることですが、Webメディアはビジネスモデルとして難しい部分があります。また、マスに対する信頼感が薄れていく中で、それに変わるメディアをどう育てるか、という課題もあると思うのですが。

荻上:そうおっしゃる方が多いのですが、Web上でも大手メディア企業のサイトの記事が見られていることには変わりありません。しかも、”コンテンツの質”において、打率で勝っていると本気で誇れるところは、どれほどあるのでしょうか?

メディアが報じないケースや、誤報を指摘するケースはたくさんありますが、秋葉原事件や尖閣の問題などを例に、「マスメディアよ、これがネットだ」とか誇られても、「それ、何件中の1ケースだよ」と。

そもそも、「マスメディア/ネット」と言う物語そのものが間違っているということが、そろそろ当然視されて欲しいなという部分があります。今でも繰り返し言わなくてはいけないことにびっくりです。

SYNODOSも別に「マスメディアに取って代わろう」とかは、一切考えていません。様々な論点をいかに拡張・補強していくか。あるいは、代案を出すか。こうした試みには、マスメディア並みにマネタイズする必要もないわけですし。もちろん、小さくとどまろうという話ではないんですけど。

―メディアの方向性という視点でいうと、メルマガなどが分かりやすい例だと思うのですが、「メディア」というよりも「コミュニティ」のような方向に進むケースもありますし、よりニッチな方向に進むケースもありますよね。

荻上:コミュニティを強く意識しないと、今はなかなかメディアを運営できないと言うのはその通りだと思います。いまは、マスメディアという言葉とはちょっと違うサイズの「メゾメディア」というサイズのメディアがあると考えたほうがわかりやすい。マスとソーシャルの間に「ミドルメディア」という言葉を作り、ネットをそれに当てはめる議論もありますが、ある種「マスと個人を繋ぐ役割」だと強調されていますね。

でもここでしているのは、単にサイズの話です。数百万から数千万という「マス」ではなく、数千から数十万くらいの人に立直させるメディアということで、大きめのブログから、ラジオや雑誌もひっくるめて考えています。

数十万単位数百万位だからこそできるもの、逆にそれ以上だとできないことってあるんですよ。鉄鋼業界の雑誌とか、ギターのタブ譜が載った雑誌とか、趣味の雑誌とか。だいたいの政治雑誌とかも、こうした規模の市場なんです。「政治に関心がある層」というのがいて、その議論は一般の関心とはやっぱり独立してるんですよね。その機能が、マスに取って代わるべきかというと、そうじゃないわけですよね。

SYNODOSも、メゾのサイズで何ができるのかという可能性を模索している部分があります。これ、他のメディアも何だかんだでそうだと思うんですね。

ラジオも雑誌も、やっぱりコミュニティを作ることを強く意識していますよね。新書などでも、100万部売れるものがごくたまにありますが、大体は数万とか数十万の範囲内のメゾメディア。数が少ないからといって、意味がないかと言うとそうでもなくて、議員さんなどがそれを読んで立法に強く意識したり、メディア関係者がその作者を呼んで企画作って全国に報道するなど、メゾメディアならでは役割というのは数多くある。

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