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円安・株高は七難隠す~「市場参加者の『異次元の』協力」なしに実現し得ない「異次元緩和」

「異次元緩和」発表を受けた市場が、「円安・株高・債券高」に反応を見せ、「さすが元財務官」と、内外から高い評価を受けた黒田日銀。

「副作用やその他の効果についても、中央銀行として十分に議論はしていますが、現時点で、長期金利が跳ねるとか、資産バブルが膨れ上がるといった懸念は持っていません」

4日の記者会見でこのように述べていたが、5日の午後の債券市場の動きにはヒヤリとしたのではないだろうか。

4日の流れを引継いだ、「円安・株高」の陰に隠れる形で大きくは報道されていないが、5日の債券市場では、日銀の金融緩和を手掛かりにした買いが一服。金利の低下余地が乏しい中長期債を中心に利益確定を目的とした売りが膨らみ、債券先物にも売りが殺到。中心限月の6月物は、2回のサーキットブレーカー(売買の一時停止)を経て、急落。4日の「異次元緩和」発表後に、一時0.425%まで利回りが低下し、過去最低水準を更新した新発10年物国債利回りも、一時前日比0.145%上昇(価格は下落)し、0.600%となった。

「米国雇用統計が発表される金曜日」、という特殊要因もあったが、「重要なことは、『量的』にみて非常に大きく拡大するという点と、イールドカーブを全体的に引き下げたり、リスクプレミアムを圧縮するという『質的』な点を、両方併せて行うことに尽きると思います」とする黒田日銀総裁の意に背く形で、「円安・株高・債券高」の一角が崩れたことは注目すべきところ。

「最近のFRBのいわゆる量的緩和をみても、単に負債側の量あるいはバランスシートを拡大するだけではなく、その際に、資産の中身、内容についても、質的な面で緩和効果がより出るように工夫されています」、

4日引け後の記者会見でこう述べ、「イールドカーブを全体的に引き下げたり」することで「質的な面で緩和効果がより出るように工夫」する意向を示していた黒田総裁。しかし、0.5%台にあった新発10年国債利回りを引下げることを狙って打ち出した「異次元緩和」によって、利回りが上昇してしまったことは、果たして想定内なのだろうか。

また、黒田総裁の発言は、「FRBの量的緩和によって、米国のイールドカーブが押し下げられた」かの印象を与えるものである。しかし、これは事実とは違う。

FRBは、リーマンショック後、QE1(2009/3~2010/3)、QE2(2010/11~2012/6)、QE3(2012/9~)と、3回の量的緩和政策を実施して来ている。そして、その3回の量的緩和によって、米国のイールドカーブは「押し下げられる」どころか、全て「押し上げられている」。米国の10年国債利回りは1.5%以上であったにも関わらずである。

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金融市場が「異次元の金融緩和」に対して、「円安・株高・債券高」という理想的な方向に反応したことで、米国では見られなかった「異次元の金融緩和」による「イールドカーブ全体の押し下げ」が、なぜ新発10年国債利回りが0.5%である日本では起こせると黒田総裁が主張したのか、という疑問は取り上げられることはなかった。

「イールドカーブ全体の金利低下を促す観点から、長期国債の保有残高が年間50 兆円に相当するペースで増加するよう買入れを行うことを決定しました」という黒田総裁の発言は大きく報道された。しかし、「実際、長期国債のグロスの買入れ額は毎月7 兆円強となる見込みです。その意味で、取引先金融機関の積極的な応札など、市場参加者の協力が欠かせません」と、黒田日銀総裁が「異次元の金融緩和」は「市場参加者の協力」なしには実現不可能であるという認識を持っていることについては、ほとんど報じられていない。

実際に、白川日銀時代の「国債の買入れオペ」では、「輪番オペ」、「資産買入等の基金」の両方で「札割れ(銀行からの売却応募額が日銀の国債買取募集額に達さない事態)」が相次いでいた。こうした状況下で、日銀が国債の買入れ額を「2倍」にするには、「市場参加者の協力」が必要不可欠ということ。売却したくない国債を日銀に売却するという「市場参加者の『異次元の』協力」なしに実現し得ない「異次元緩和」を、「日本経済復活の万能薬」の如き崇め奉るのは、いくらなんでも過大評価である。

黒田日銀が打ち出した「量的・質的金融緩和」は、「量」の面では「市場参加者の『異次元の』協力」なしには実現せず、「質」の面では米国では起らなかった「イールドカーブ全体の押し下げ」を起こさないといけないという、「異次元緩和」である。

「円安・株高は七難隠す」

アベノミクスは、金融市場が「円安・株高・債券高」に反応したことで、政策の中身の議論は「政治は結果がすべてなんです」という言葉の前で、脇に追いやられて来た。この先、「円高・株高・債券高」の一角でも崩れた場合、「結果」を見つめて政策論争に戻れるのだろうか。

そろそろ、政策評価の基準も「市場を動かす政策が良い政策だ」とする「次元」から、卒業しなければならない。もう、十分「円安・株高・債券高」は実現しているのだから。

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