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日本銀行の黒田東彦総裁が「大胆な金融政策」を決定したが、景気押し上げ5つの基礎的条件は未だ揃わず

◆安倍晋三首相は4月5日で就任から丸100日となった。「デフレ脱却」をめざした新しい金融政策を決めた。朝日新聞は5日付朝刊「1面」で「日銀の新たな量的緩和過去最大130兆円投入」「資金供給2年で2億」という見出しをつけて大々的に報じた。

 この日銀の新しい金融政策を好感して5日の株式市場は1万3225円台を、為替市場は1ドル=97円台の円安を記録をした。

 さて、この「アベノミクス」相場は、本物となるか否か?

 1952年秋から10年サイクルで上下変動を繰り返してきた日本の景気は2012年秋から「10年の大不況のサイクル」に入っているので、よほど大胆な経済・景気政策を打たなければ強力に景気を押し上げることはできない。この意味で、黒田東彦総裁が、世界の非常識と言われてきた白川方明前総裁の「デフレ政策」を否定し、大胆な「インフレ政策」にカジを切ったのは意義深い。

 「景気押し上げ」には、「5つの基礎的条件」が揃う必要があるけれど、安倍晋三首相がこの「5つの基礎的条件」をどこまで揃えているのかを点検してみなくてはならない。

◆景気押し上げの「5つの基礎的条件」とは、以下の通りである。

①強いリーダーシップを発揮する首相の登場。

②政財官学界から実力者が集まり、景気押し上げの「仕掛人チーム」(5人~10人)を編成すること。

③日本の進むべき将来像を描いたビジョンを掲げること。

④新しい国家建設のための資金を確保すること。

⑤官民一体となり国家総動員態勢で景気浮揚に力を結集すること。

 この「5つの基礎的条件」のなかで最も重要なのが、①の強いリーダーシップを発揮する首相の登場である。

 戦後からこれまで日本は、吉田茂、池田勇人、中曽根康弘という3人の「強力な首相」を誕生させた。この3人だけが景気を押し上げることができた。

 安倍晋三首相は、2度目の首相就任で、「アベノミクス」政策を掲げて、「デフレ脱却」から景気浮揚という「結果」を出そうとして強力なリーダーシップを発揮しようとしている。

 ただし、健康上の問題を抱えているので、いつダウンしてしまうかという不安材料がある。また2012年12月16日の総選挙について各地の高裁が「違憲」あるいは「違憲・無効」判決を下しており、最高裁がこれを受けてどう判決するかが注目されているので、早期の衆院解散・総選挙に迫られる可能性があり、安倍晋三政権は必ずしも安泰とは言い難い。いつダウンしてもおかしくないといわれている。

②の「仕掛人チーム」編成である。自民党は一応、安倍晋三首相(総裁)の下でよくまとまっている。安倍晋三内閣の支持率は70%台にあり、高支持率を維持している。

 財界も経団連の米倉弘昌会長をはじめ多くの経営者が、安倍晋三政権に対して大いに期待し、支持している。

 中央省庁の高級官僚も政権を強力にバックアップしている。安倍晋三政権の政策部門に積極金融・財政論者が参加して、「アベノミクス」政策を支えている。

 ③の日本の進むべき将来像を描いたビジョンはどうであろうか?

 安倍晋三首相は、施政方針演説で現代版「富国強兵策」を掲げて「強い日本」を取り戻そうとしている。米国のオバマ大統領の強い要請を受けて、「自由貿易立国」としての立場から「TPP交渉参加」を表明して、日米同盟強化に全面的協力して行こうとしている。

 だが、「アベノミクス」政策の3本目の矢である成長戦略が未だ固まっていないので、国民、企業を力強く誘導して行くための旗印が定まっていない。7月21日の参院議員選挙の前、6月までに決めるというけれど、黒田東彦総裁が打ち出した「大胆な金融緩和政策」が息切れしないかという懸念もある。

 ④の新しい社会建設のための金は、実はタップリある。要は、これをどう有効に使うがである。

 ⑤の官民一致、国家総動員態勢については、マスメディアの大半は「アベノミクス」政策に共感しているけれど、国民・企業の間にはまだ程度差があり、投資意欲、消費意欲は高まっていない。安倍晋三政権の課題は、この点にある。

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