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中国人はSNSで「民主主義社会のふるまい」を練習している~中国の著名ブロガーが語る「ソーシャルメディアの役割」

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中国版ツイッター「ウェイボー」はウイルスのようなもの

ブロガー、五岳散人氏。
ブロガー、五岳散人氏。 写真一覧
大谷:ウェイボーのユーザー数が億単位というのは、日本のウェブサービスでは見ない数字なので、日本人のみなさんは非常に驚いたと思います。続いて、五岳散人さんにお話をうかがいます。

五岳:五岳散人と申します。これは、コラムを執筆するためのペンネームです。中国のいろいろな新聞や雑誌などに11のコラムを開設して、評論を中心に記事を書いています。

「ウェイボー」は、日本でいうツイッターと非常に形が似ていて、140字くらいの文字による表現ができます。140字の世界では、英語はたいした文章を表現できませんが、中国語や日本語はまとまった考えを表現できます。

このシンポジウムにいるみなさんは、大変な自由を享受しています。自分の好きなように、言いたいことを言うことができます。新聞やメディアにおいて、あるいはブログやネットにおいて、言いたいことを言う自由があります。しかし、私たちはそうではありません。私は記者を経て、コラムニストになりました。今は、レストランの経営もせざるを得ない状況です。みなさんと同じように、好きなことを思うがままに言えるかというと、そうではありません。

私にとって、このウェイボーの誕生が一つのチャンスでした。ウェイボーはまるで、バラバラのモザイクのような伝達手段だと思います。あたかも小さなウイルスのようなものです。ウイルスのように小さいから、ネットの網目を抜けていくことができます。そうでなければ、当局の検閲が一網打尽にしてしまうのですが、ウイルスですから、通り抜けることができるのです。

ウェイボーを得て、私は言いたいことを言えるようになったと思います。以前は、コラムに書きたいけど書けないこともありましたが、ウェイボーができて、それを表現できるようになりました。もちろん削除されたり、他の人に見えないようにされてしまうかもしれません。でも、インターネットのすばらしい特徴は、いったんアップしてしまうと、それがいろいろな場に広がって、永続的に存在してしまうということです。

もちろん中国の政府当局は、インターネットの管理を行おうとしていますが、ウェイボーというメディアは、本質的な意味での管理ができない性質を持っていると思います。サイト自体を閉鎖してしまえば話は別ですが、ウェイボーを管理する方法はないと思います。私は、このウェイボーが中国の民主化の一つのステップになるかもしれない、と考えています。

個人的には、ウェイボーのおかげでたくさんのことを学び、いろいろなテクニックを養うことができました。たとえば、検閲する側がいくつかの「禁止ワード」を設定した場合、私たちはそれを潜り抜けるためにいろいろな知恵を絞って、そのキーワードと同じ意味でありながら表現の仕方が違うという言葉を使います。たとえば、ある人を表現するのに「あだ名」を使うなどして、当局の検閲をかわすことができるのです。

メディア人としては、あまり規制を受けたくないし、検閲も受けたくない。これは私たちの本心です。中華人民共和国が成立してからもう60年がたちますが、ウェイボーの誕生によって、中国人は最も自由な形のメディアを得たと思います。

最後にジョークで締めくくりたいと思います。ウェイボーは何も情報伝達のためだけの手段ではありません。商売道具にもなります。私は、あるつぶやきによって、1トンくらいのハチミツを販売できました。

大谷:ウェイボーが、新しいメディアとして「小さなウイルスのようなもの」というのは「なるほど」と思いました。元が消えたとしてもどんどん拡散してしまうという意味で、当局もすべてシャットアウトしきれない部分があるのかなと思いました。

次は、石述思さんにお話をうかがいたいと思います。石さんは新聞社で働いているので、今の中国のオールドメディアがどのような状況にあるのか、ネットの状況とどう関わりあって変わっていっているのか、あるいは、変わっていないのかという点をうかがえればと思います。

:石述思と申します。中国のメディアについては、2つの点を指摘したいと思います。まず、五岳散人さんはすでに体制「外」の人間ですが、私はまだ体制「内」の人間です。私はこれまでいろいろな文章を発表してきましたが、体制を賛美する文章は一度も書いていません。批判する文章ばかり書いてきました。

それにもかかわらず、私はこのようにちゃんと生きています。それは幸運の部分もあるでしょう。というのも、戦いに倒れて亡くなっている人もいるのですから。私が声を発している目的はただ一つ。祖国がさらに良くなることです。

次に、最近、中国は全人代など2つの重要な会議を開催しましたが、テンセント・ウェイボーで、私を奮い立たせるメッセージを見ましたので、みなさんと共有したいと思います。

中国の最高指導者がこう語りました。「私は憲法に忠誠心を誓います。忠実であれ」と。願わくば、これを一つの積極的なメッセージとして受け止めたい。これをきっかけに、中国がより進歩的な国へと向かい、より民主的な、より良い国へ向かっていくことを期待しています。

私はメディアという仕事を愛しています。絶対に転職などはしたくないと思います。飲食産業あるいは他の販売業には転職したくないと思っています。

質疑応答

ーいま中国では、中国版ツイッターといわれる「ウェイボー」に替わり、「ウィチャット(旧名「ウェイシン」)というLINEのようなサービスが出てきています。日本では「ソーシャルメディア疲れ」というのがあって、ツイッターやフェイスブックからLINEのような、プライベートな関係を築けるSNSへ移る動きがあります。そのような変化が中国でも起きているのでしょうか。

:中国でも、ウイチャットがウェイボーに与える影響については、熱く議論されています。しかし中国ではまだ、ウィチャットがウェイボーに対して、大きなマイナスの影響を与えているようには感じられません。現状では、ウィチャットの情報量は、ウェイボーの情報量よりも劣っています。まだ優位性を獲得するまでには至っていません。

確かに今、ウィチャットが流行ってきています。ただ、中身を見ると、以前はウェイボーで話されていたもののうち、プライバシーの高いものがウィチャットに移ったといえます。親しい友人や家族の間で情報を共有するために、ウィチャットを使っている。ウィチャットにより、ウェイボーの一部が「分流」したといえる現象だと思います。

また、このような「分流」によって、ウェイボーのメディアとしての属性、性質が強化されたと思います。メディアの特徴とは「見知らぬ人」との間で情報を共有できることですから。人間にはいろいろな欲求があり、日常生活のささいなことを話したい気持ちもあれば、時事問題や社会問題に対して意見を発表したいという欲望もあるわけです。ウェイボーはそのような欲求に応えるメディアとして、今後もかなり長い間、大きな役割を果たせると思います。

ー五岳散人さんにうかがいたい。最近、私の中国の友人である作家が、「ウェイボー」について、中国政府による管理が強化されていると悲観的に書いていました。それについて、意見を聞きたいと思います。

五岳:そのような悲観的な判断は、根拠がやや乏しいかと思います。インターネットは本質的に、管理しきれないメディアだと思います。中国政府はかなり以前からインターネットを厳しく管理しようとしてきましたが、一度も成功したことはありません。もし真の意味での管理を行おうとすれば、インターネット自体が死んでしまうからです。

しかしインターネットが死んでしまうことは、政府にとっても不都合なことです。政府はインターネットにより生み出される経済を必要としていますし、自らの合法性などを、インターネットを通じて表現しようとしています。

しかも、インターネットを完全に管理できる方法は、この世の中には存在していないと思います。したがって、インターネットという事象は、とてもアクティブに存在するか、死んでしまうかの2つの状態しかありません。厳しい管制下に置かれながらも存続していけるというのは幻想です。インターネットに関しては、それはありえません。

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