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インドはUS-2を救難なんかに使わない

US-2が海外に輸出される可能性が高まっています。

海自飛行艇 印へ輸出 中国牽制、政府手続き着手」(産経新聞13年3月24)

 政府が、海上自衛隊に配備している水陸両用の救難飛行艇「US-2」をインドに輸出するための手続きに着手したことが23日、分かった。インドは日本側に救難活動や海賊対策でUS-2を導入する方針を伝えてきており、製造元は現地事務所を設け、インド政府との交渉に入った。


読売も続報を打ったので、検討されていることは間違いないようです。
海自の救難飛行艇、インド輸出検討…民間転用で」(読売新聞13年3月25日)

このニュースに関する、2chなどネット評判を見ると、歓迎論調ではあるものの、インドでのUS-2の選定決定と活躍には悲観的意見が多いように思えます。

それは、着水性能が、波高3mまでに限られることや、水上機であるが故のコスト高(整備性や耐用年数)に対して、インドが不満を持つだろうと予測されるためであるようです。
読売の報道も、競合他機種との選定に敗れる可能性に言及しています。

ロシアやカナダもインドに救難飛行艇の売り込みを図っており、US2の輸出が実現するかどうかは流動的な面もある。


ですが、私はUS-2が選定に勝ち抜き、活躍する可能性は高いと考えています。

それは、インドがUS-2を買う本音が、100%海賊対処やPSI(拡散に対する安全保障構想)対処に使うつもりだろうと予想するためです。(救難は建前ですが、事故があれば使う程度の考え)

海賊対処におけるUS-2の有用性は、絶対的です。

当然ながら、そのメリットの一つは水上機であることです。
海自のP-3Cが海賊対処で活躍していることと同様に、空から高速で広範囲を捜索することができます。

その上、不審な船舶に対しては、着水して水上艦と同様に臨検を行なう事が可能です。
航空機でありながら、艦艇でもある訳です。

US-2のライバルであるCL-415は、水上機であるものの、機体サイズが小さすぎ、臨検分隊は乗せられるかもしれませんが、拿捕した海賊まで乗せることは無理でしょう。
機体サイズとしてはBe-200はOKでしょうが、外洋での離着水は困難です。

そしてその現場を想定した時に、US-2が他機に比して持つ大きなアドバンテージは、その驚異的な低速性能です。


海賊対処となると、警告のために船舶の近傍に射撃したり、それでも停船しない場合には、機関部を射撃するなど、制限した武器使用を求められるケースが多くなります。
それを行なうためには、多くの固定翼航空機は速すぎ、正確な射撃とその照準の継続は困難です。
しかし、40ノットを超えると言われる高速の海賊船に対して、離水速度でさえ50ノットと言われるUS-2は、ほとんど同じ速度で飛行できます。
併走しながら、高出力スピーカーで音声警告さえできるでしょう。
CL-415やBe-200には出来ない芸当です。特にジェットのBe-200では、困難です。

また、航続距離も、US-2は優秀です。
海賊対処のために飛行すべき範囲は、海賊の脅威があるエリアです。
リンク先を見る
wikipedia「ソマリア沖の海賊」より

これに、各機の行動半径を書き加えてみます。
US-2は、航続距離が4700キロなので、行動範囲としては2000キロと想定します。
同様に、CL-415は、航続距離2443キロなので、1000キロと想定し、Be-200は、航続距離3850キロなので1600キロとします。
リンク先を見る
一目瞭然でしょう。
CL-415は完全に役不足、Be-200でなんとか、アデン湾の出口を押えられるのはUS-2のみ、です。

以上のように、目的が海賊対処であるならば、US-2のアドバンテージは絶大で、インド海軍の意図が海賊対処なら、US-2を望む事は明かです。
障害は、コストだけです。

問題は、インド海軍が、海賊対処にそこまで意欲的かどうかですが、2隻の艦艇を投入していることを鑑みれば、十分意欲的だと言えます。

そしてその理由は、日本のように自国船舶の護衛以外は、国際貢献と考えている訳ではありません。
ソマリア沖の海賊は、イスラム教過激派とも結びついていると見られ、パキスタンを拠点とした彼等の活動を資金源から封殺するために、インド海軍にとっては、海賊対処はテロ対策でもあります。

そのため、インド海軍は、海賊に対して甘っちょろい対応はしません。
2008年の11月には、海賊に乗っ取られたタイ漁船をフリゲート艦の主砲で撃沈していますし、翌月には駆逐艦の艦載ヘリが海賊を空中から攻撃し、最終的に23人の海賊は抵抗を止め逮捕されています。

この甘っちょろい対応をしないインド海軍が、広範な捜索能力と対処能力を持ったUS-2を海賊対処に投入すれば、海賊にとっては非常な脅威となるはずです。

なお、海賊対処をUS-2で行なった場合、海賊が携帯式地対空ミサイルを持っている可能性を懸念する方がいるかと思いますが、それは無用な心配です。
少なくとも逃げるつもりで高速で走っている船上から、地対空ミサイルを命中させることは、まず不可能です。(あれを撃てば当たる代物だと思っている人が多いですが、そんな簡単な代物ではありません。)
停船した場合は要注意ですが、例え命中させられても、4発もある大型機軍用機は、絶対に落ちません。
携帯式地対空ミサイルのほとんどが赤外線誘導のため、大型機の場合エンジン部に命中しますが、炸薬量が少ないので、エンジン1基を破壊できる程度です。当然その程度では大型機は落ちません。

要注意なのは、機関砲によるコックピットの銃撃ですが、例え日本が防弾板を取り外して輸出しても、その程度のモノは、インドでも十分に取り付け可能です。

インド海軍が、US-2で海賊を逮捕する日は、それほど遠くないかもしれません。

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