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コマは出そろった|薬物事犯の再犯防止策1

国会での審議が宙に浮いていた刑の一部執行猶予制度に関して、政府が法案をあらためて閣議決定し、今国会での成立をめざすというニュースが、3月下旬に伝えられていました。さらに月末には、依存症者に対する医療及びその回復支援に関する検討会(厚労省)の報告書がまとまったという報道もありました。これは、薬物、アルコール、病的賭博などの依存症者の治療・回復支援体制の総合的な強化策をまとめたものですが(下記参照①)、薬物事犯者の特性に合った再犯防止策にとって、重要なコマがこれでまたひとつ、そろったことになります。

<ニュースから>

■依存症対策:地域で治療、回復支援を

薬物やアルコールなどの依存症者に対する治療や回復支援の充実策を論議していた厚生労働省の検討会は28日、報告書をまとめた。地域で回復を支援するため、都道府県と政令市に設置された精神保健福祉センターに専門相談員を配置するなど機能強化や、各都道府県に1カ所以上の治療拠点を整備することが柱。厚労省は報告書を受け、来年度から対策の強化に乗り出す。

報告書は「地域の要」となる全国69の同センターが、外部の専門家を非常勤職員として採用するなどの工夫で相談機能などを充実させるべきだと提言。医療体制整備のため専門治療のガイドラインを作成し、依存症者を診療した医療機関を人的・経済的に支援する仕組みが必要だとも指摘した。

同センターを巡っては、10カ所で10、11年度の薬物相談の合計件数が1桁にとどまるなど十分に機能していない実態が毎日新聞の調べで明らかになっている。

毎日新聞 2013年03月28日 23時42分

連携で薬物事犯者の社会復帰をサポート

再犯防止対策で薬物事犯者に対する対策がとくに重視されるのは、まず、その数の多さによるものです。2011年末時点で全国の刑務所などに在所している収容者のうち、4分の1近く(24.1%)を占めているのが覚せい剤事犯の受刑者で(2011年版矯正統計年報)、しかも、社会復帰した後、同じ覚せい剤で再犯して再び収容される人たちも多いのが現実なのです。

刑事施設に収容されていた数年間は、覚せい剤を使わずに、それなりに適応していたのに、社会復帰すると間もなく再び覚せい剤を使いだすのが、薬物依存にとらわれた人たちですが、このサイクルを断ち切るために、少しずつ整備されてきたのが薬物事犯者への指導・支援の強化策です。

犯罪対策閣僚会議がまとめた「再犯防止に向けた総合対策」は、その柱として、

■矯正施設と仮釈放後の保護観察期間を通じて行われる、一貫した薬物離脱の専門的処遇プログラム

■社会内において、保護観察所、医療・保健・福祉機関、民間支援団体等との連携による継続的な指導・支援体制

を確立する必要があると指摘しています(下記参照②)。

リンク先を見る
↑薬物事犯者の処遇における連携
平成24年度版犯罪白書269ページより転載


これまでに、矯正施設内や保護観察で行われる処遇プログラムについては、強化・拡充が図られてきたように思います。矯正施設に臨床心理士が配置され、保護観察官が増員され、またパイロット施設ではより専門的なプログラムの導入も進んでいるといいます。しかし、施設内や保護観察での指導は、当然ながら刑期の満了までに限定され、その後は自助努力に任されることになります。

「再犯防止に向けた総合対策」では、社会内においては、地域社会の様々な資源を連携して指導・支援を継続するとしていますが、しかし、多様な機関やサービスをつなぐことができなくては、すべては絵に描いた餅でしかないのです。

重要なのは、薬物の誘惑と闘いながら生活を再建する人たちのニーズと、地域社会の多様な機関やサービスを結びつけるコーディネーターの機能です。その中核となるのが、依存症治療にあたる医療機関と、本人や家族の相談に対応する精神保健福祉センターですが、こうした機関は、これまでは、本人や家族の自発的な受診や相談に対して受け身で対応してきたため、問題を抱える人たちにとっては、ともすれば縁遠い存在であったかもしれません。こうした機関の体制を強化し、社会に向かって積極的にアピールしていくことが、なにより必要なのです。

このたび報告書がまとまったことで、とりあえず、この中核機能の対策強化策がスタートを切ったわけです。とはいえ、あまりにも漠然としたこの報告書が、今後どのような施策として具体化していくのか、今のところはまだ見えてきません。続報に期待することにしましょう。

[参照]
①依存症者に対する医療及びその回復支援に関する検討会 報告書
厚生労働省>第6回依存症者に対する医療及びその回復支援に関する検討会 資料
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002yiem.html
②犯罪対策閣僚会議編「再犯防止に向けた総合対策」2012年7月
http://www.moj.go.jp/content/000100471.pdf

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