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武雄市図書館 リニューアルオープン

 4月1日にリニューアルオープンする武雄市図書館・歴史資料館。運営を民間に委託し、本を貸し出すだけでなく、音楽・映像の有料レンタル、書籍販売、カフェなども併設する新しい形の図書館になっている。

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レイアウトを一新し、洗練された空間が広がる館内=武雄市図書館・歴史資料館

■図書館■

 最も大きな変化は年中無休で、開館時間を延長することだ。これまでの午前10時~午後6時(金曜は午後7時まで)が、午前9時~午後9時に変わる。年中無休をうたっている図書館はあるが、蔵書点検などで数日は休んでおり、完全無休は自治体図書館としては全国で初めてという。

 開架スペースは、事務室縮小、館長室廃止、閉架書庫の活用で1・4倍の1571平方メートルに広がる。今の蔵書は約18万8千冊で、開架は約10万6千冊だったが、料理と旅行分野を中心に新たに本を購入して20万冊を開架する。図書検索に使うタブレット端末など30台を導入した。

 読書スペースはこれまでの120席から200席に増える。このほか無音状態に近い学習室の40席、レファレンス(調査・相談)コーナー4カ所などがある。館内にはペットボトル、水筒、ふた付きの容器が持ち込め、コーヒーなどを楽しみながら読書ができる。返却には宅配業者も使え、全国一律500円でどこからでも返却できる。

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■書籍販売・有料レンタル・カフェ■

 本の販売やDVD・CD有料レンタルコーナー、カフェの「営業スペース」は合わせて745平方メートル。館内面積の2割を占める。スペースの賃料は年間約610万円になる。

 販売する本は、約600種の雑誌のほか、新刊本、漫画など約3万5千点。DVD・CD有料レンタルは、CD約3万枚、DVD約4万5千枚をそろえる。

 カフェはコーヒーチェーン店「スターバックス」が入る。館内に50席があるほか、屋外にテラス席36席を設けた。

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コーヒーチェーン店「スターバックス」で、くつろぐ家族連れ。図書館での楽しみ方が広がった

■歴史資料館■

 江戸後期の蘭学史料を展示していた以前の蘭学館はレンタルスペースになり、史料は新たな企画展示室に並べる。歴史資料館部分は、メディアホールと企画展示室を合わせた蘭学・企画展示室305平方メートルとなり、これまでより3割強縮小した。

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旧蘭学館を改装した音楽・映像の有料レンタルコーナー。7万5000点のCD・DVDが並べられている

■Tカード■

 図書館を利用するためのカードは、これまでの図書館専用カードとCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)の「Tカード」の2種から選択する。

 Tカードはポイントがたまると買い物などに使えるカードで、自動貸出機を使って本を借りた時に1日1回だけ3ポイントがつく。事前入会では95%がTカードを選択した。

■職員■

 司書はこれまでの15人から13人に減った。自動貸出機の導入で省力化を図ったことなどが理由。13人の内訳は料理、旅行、人文、児童書、小説のゾーンを担当するライフスタイル・コンシェルジュが6人、これまでの図書館業務を中心に行うライブラリー・コンシェルジュが7人。このほか販売、カウンター業務をするツタヤのアルバイトが15人、スターバックスのアルバイトが18人いる。

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読み聞かせができるキッズ・スペース。旧図書館と違い、オープンな空間となった

■武雄市民の反応

 市民向けの内覧会で館内を見学した市民の間では、利便性向上を評価する一方、改善を注文する声も上がった。

 北方町の男性(38)は「木とコーヒーの香りが漂う、佐賀にはないおしゃれな空間」と歓迎。武雄町の男性(75)は「図書検索の端末が本棚のあちこちにあって便利」と評価した。年中無休で開館時間が4時間延長することについて、自習でよく利用する東川登町の男子高校生(17)は「塾に通っていない人は学校帰りにも使える。ただ、静かな環境は維持してほしい」と話した。

 武雄町の男性(69)は「本が高いところにまで収容され取りにくい。背表紙が見づらいのは高齢者や子どもが大変で、係員をいちいち呼ぶのも面倒ではないか」と構造上の問題を指摘した。

 民間委託に反対してきた、武雄市図書館歴史資料館を学習する市民の会代表世話人の井上一夫さん(73)は「商業フロアが前面に出て図書館機能が奥に追いやられて壊滅的。御船山を望む武雄のアイデンティティーの場に東京・代官山をはめ込んだ違和感を感じる」と批判した。

■【記者解説】 求められる市の主体性

 年中無休にポイント制、スタバ、大規模な物販コーナーの導入など、新武雄市図書館はこれまでの公立図書館にはない新機軸を打ち出している。TSUTAYAを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)に運営委託したことで実現したが、地域文化の担い手である図書館運営には、市民と市の関与が欠かせない。市としてどんな図書館像を描き、実現していくか。主体性を持ち続けることが求められる。

 公立図書館に指定管理者制度を導入しているのは、全国で296館(2012年4月現在)で全体の9・2%。このうち205館は民間企業に委託している。民間委託はよくあるが、武雄市のケースは、委託先がレンタル最大手のTSUTAYAを展開する運営会社である点が新しい。既に話題を呼んでおり、図書館に縁遠かった層にもアピールしそうだ。

 一方、Tカード導入に対しては、貸し出し履歴など「個人情報の流失」を懸念する声も上がった。CCCは「履歴をビジネス利用することはない」と明言。市は図書館の貸し出し専用カードも選べるようにし、情報は図書館の管理業務に限って使用する協定をCCC側と結んだ。ただ、情報セキュリティーの研究者は「厳格にそうしたルールが徹底されているか、市民側が検証する方法があるのか」と指摘する。

 運営手法に私企業のノウハウを活用するのはいいとしても、最も大切なことは市があるべき図書館の姿を自ら描き、主体性を持ち続けることだ。今後、購入図書は司書が選び、市教委の承認を受けることになっている。市長も「CCCに丸投げはしない」と言っている。言葉通り、市側が運営方針などをCCCと十分に意思疎通を図ることが求められる。市民の意見を運営に生かす方策も拡充すべきだ。

 加えて図書館は「全域平等」が基本。市全体にサービスを行き渡らせるために、車を持たない子どもや高齢者向けに自動車図書館(移動図書館)の導入も必要だろう。

 地域文化に根差す図書館は効率性だけでは評価できない。図書館は「無料の貸本屋」ではなく、レファレンス(調査・相談)やリクエストなど利用者のさまざまなニーズにどれくらい応えるかで価値が決まる。本当に利用しやすい図書館にするために市民が見守り、育てていく必要がある。

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