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[セール] ネトウヨの生体に迫る名著「ネットと愛国」Kindle版が250円!


これはすごい!講談社大盤振る舞いですね。


ネットの闇に迫った骨太ノンフィクション

「ネットと愛国」は2012年のベスト10に入る、骨太ノンフィクション。いわゆる「ネトウヨ」と呼ばれる人たちのリアルに迫った作品です。

昨年9月に出たばかりなので、古本もまだ高値です。内容がよいので、当面下がることはないでしょう。これは久々に全力でおすすめできるセール本です。

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ちょうど昨日、佐々木俊尚さんが在特会について印象的なツイートをしていました。「ネットと愛国」はまさに、「終わりの始まり」に対する考察を深めるためのすばらしい材料になります。

非常に興味深いのは、在特会に関わる人々が「被害者意識」を持っているという指摘。

・取材を進めていくなかでさらに確信を深めたことだが、在特会の会員は、どれだけ薄汚い罵りの言葉を口にしても、加害者としての意識など微塵も感じていない。うしろめたさもない。むしろ彼らは自らが「被害者」であることを強調する。

・「連中は社会に復讐してるんと違いますか?私が知っているかぎり、みんな何らかの被害者意識を抱えている。その憤りを、とりあえず在日などにぶつけているように感じるんだな」(元・在特会会員)

(本)安田浩一「ネットと愛国 在特会の闇を追いかけて」

グローバリゼーションの進行→格差の拡大→弱者もすがれる「愛国」という正義→排外主義の強化、というマイナス方向への圧力がかかっていると感じます。

刺激的にいえば、どこの国でも活躍できるハイパーノマド的な人材たちは愛国心を相対化する方向に、ノマドになれない低スキルな労働者は「愛国」を絶対的な寄りどころにしていく、ともいえるでしょう。

「愛国」それ自体は悪いものではありませんが、そこに攻撃性・排他性が加わると、害悪に変わります。あくまでひとつの価値観であるはずの「愛国」を、絶対的な「正義」として押しつけるようになるわけです。

ぼくは「戦争が起きたら日本からは脱出しよう」と考えている人間ですが、そんなぼくは攻撃的な愛国者にとっては「非国民」として映り、断罪されることになるのでしょう。

そうして弱者たちは正義を振りかざし、強者は共存を拒み、社会は分断されていきます。ネトウヨ的なものは、そんな「終わりの始まり」とも見ることができます。


「ネットと愛国」のなかでは、こうした分断をどう避けるかについては詳しく論じられていません。「被害者意識を持った、攻撃的な愛国者たちとどう共存していくか」という問いへの答えは、ぼくら一人ひとりが頭を働かせて考えないといけません。

ぼくの暫定的な答えは「市民として彼らとの対話をやめない」というものです。孫引きですが、オルテガのことばは参考になります。

オルテガ・イ・ガセーは「弱い敵とも共存できること」を「市民」の条件としていますが、これはとてもたいせつなことばだと思います。「弱い敵」ですよ。「強い敵」とは誰だって、しかたなしに共存します。共存するしか打つ手がないんだから。でも「弱い敵」はその気になれば迫害することだって、排除することだって、絶滅させることだってできる。それをあえてしないで、共存し、その「弱い敵」の立場をも代表して、市民社会の利益について考えることのできる人間、それを「市民」と呼ぶ、とオルテガは言っているのです。

被害者意識を持った「ネトウヨ」たちは、ここでいう「弱い敵」なのでしょう。彼ら自身もそのことは自覚していると思いますし、ぼくを含めて、レイシズムを蔑視する人たちは、やはり彼らを「弱い敵」だと感じているでしょう。「結局ネトウヨなんてものは取るに足らないものだ」「ネトウヨには社会は変えられない」と。

これは求めすぎなのですが、こういう蔑視が、分断を招くのです。これはもう超人的ですが、そんなレイシストたちに対してすら、「なぜ彼らは攻撃的になるのか?」という興味と、「彼らもひとりの尊厳ある人間なんだ」というリスペクトを持って、対話していくことが「市民」として重要な態度といえるでしょう。

かくいうぼくが実践できているかといえば、やはりそんなことはありません。どこかで彼らをバカにしてしまってます。こういう態度ではよくないのです。これはぼくに課された宿題です。


と、長々と思わず書いてしまうくらい、示唆に富む本です。この本を読む方は「ネトウヨはやっぱり取るに足らない集団だ」と安堵して終わりにするのではなく、その一歩先の問い、「被害者意識を持った、攻撃的な愛国者たちとどう共存していくか」にまで思考を巡らせてみてください。

いやー、これほんと250円は安いですよ。買いです、買い。


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