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雇用流動化は避けられないという現実から逃げてはみんなが不幸になるだけ

家電業界のリストラの対象となった中高年の社員を集めた追い出し部屋が話題になっています。なかでも「SONYキャリア室」の詳細がいろいろと記事になっていますが、人生どこに落とし穴が待ち受けているかわからないという典型でしょう。40代とか50代の中高年だということは、SONYがまだピカピカのブランドとして輝いていた頃に入社した人たちです。一生SONYで働き続けるものだと思っていた人がほとんどかもしれません。
ソニー「中高年リストラ」の現場 | 東洋経済オンライン : 
パナソニック、シャープだけではありません「追い出し部屋 | 現代ビジネス [講談社] 

一応社内に仕事がないかを探させ、結局は自主退職に追い込むということでしょうが、まどろこしいなと感じます。どうやって解雇規制をくぐり抜け、訴訟を避け、またリストラ費用を抑えるかの人事の苦肉の策なのでしょうか。

しかし、こういったリストラ部屋の存在で、入社した会社に生涯働き続ける時代はもう終わったという現実が浮き彫りになってきたのです。企業を取り巻く環境が、デジタル化やグローバル化の激震を受けて大きく変化してきた現代では、企業経営にもリスクが高まってきています。

80年代なかば、日経ビジネスが「企業の寿命は30年」を出して、センセーションを起こしていました。さらに今日では企業の最盛期は30年どころか、10年は確実に切ったとしています。時価総額というマーケットからの評価尺度で会社を見ると、企業がバリバリと好調を続けることができるのは、日本企業で約7年、米国企業で約5年という結果だそうです。大企業でそうなのですからまして中小企業ではもっと時代の激流に翻弄されているのが実態でしょう。
【会社の寿命】今や"寿命"はわずか5年:日経ビジネスオンライン : 

そういった時代の変化と、終身雇用という雇用の古いあり方のミスマッチの不幸だとしかいいようがありません。今後は高い所得を保ちつつ、終身雇用を保証できるエクセレントな会社のほうが珍しくなってくるのでしょう。

バブル崩壊後の大変な時期に、危機感からそれぞれの企業が終身雇用と年功序列制度を見直す気運があったのですが、喉元過ぎればという状態で制度改革が進まなかったツケがやってきたということでしょう。変革が遅れたことは政治や経営の怠慢だったといわれてもしかたないことだと思います。しかもそれに社員も甘えてしまい、ある日突然にやってくる宣告に慌てるはめになります。

やっと安倍内閣が発足させた有識者会議で「労働力の流動化」がテーマとなり、正規社員の雇用規制の緩和の議論が始まったのですが、遅すぎたという印象を受けます。時代に合わなくなった雇用規制は、雇用される側にとっても、雇用される側にとっても決してハッピーな結果を生みません。しかし、遅くとも踏み出さないと労使が共倒れになる危険性のある問題だと思います。

雇用の流動化が当たり前、突然解雇されるのも当たり前ということになれば、それにあった生涯設計もできるでしょうし、また自分自身の「商品価値」を高めようとする努力も生まれてきます。職場を変えるための制度整備や転職サービス市場も今以上に育ってくるはずです。

たまたま20代後半でサラリーマンを辞めました。それ以降は、ずっとリストラ部屋の扉を行き来していたようなものです。クライアント企業の業績が思わしくなると、社員ではなく、まず外部から切るというのが一般的です。その脅威にさらされ続けてきたのですが、それもやがては慣れてきます。

しかもクライアントが求めることも変化してきます。それに適応したサービスを提供できなければ仕事はなくなってしまいます。自分の運命は自分で決めるしかありません。文句をいう相手がいないのですから。

また自分で会社をつくると失業保険も適応されず、まして給料をいただいて、次に備えるという破格な待遇などないのです。フリーで仕事をやっている人、また起業した人も同じだと思います。

そろそろ、日本も企業を取り巻く環境が流動化してきた現実にあわせた制度を再設計しなければ、「SONYキャリア室」などと名前だけはよくとも、転職のためのトレーニングもなく、ただただ辞めてもらうまでの持久戦に持ち込むといった解決しかなくなってしまいます。

北欧では、組合が転職のためのトレーニングや就職の斡旋をやっているようですが、雇用の流動化は、日本の産業構造が時代に合わせて変わっていくためには必然です。古い産業が人材を囲い込むことは決していいことではありません。サービス業の高度化、また生産性を高めていくことが日本の経済にとっては重要な課題ですが、それも有能な人材が、就職にしろ、起業にしろ、その分野にはいってくることを抜いてはありえないことです。

より雇用を流動化させる仕組みづくりだけでなく、大企業も安全でないという現実への認識、生涯同じ会社に勤めることのほうが例外的だという意識変革も進めていく必要があるのでしょう。

キーワードは「自立した個人」を生み出していくことではないでしょうか。「自立した個人」であれば、雇用は企業との契約関係であり、自分自身の人材としての「価値」を高めることが契約条件を向上させることにもなってきます。労働組合も衰退してきましたが、「自立した個人」の利益や身分保障を求める組合なら新たな存在価値も生まれてきます。

また、若い人にとっては、学校教育が重要になってきますが、現在行われている教育が「自立した個人」を育てることを目指してやっているかというとちょっと心もとなさを感じます。

学校で得る知識は、文化系の場合はとくに、ほとんど役立たないので、むしろ考える力を育てることが求められていると思うのですが、雇用の問題と合わせて、現代ではどのような教育が望まれるのかを現場の教育者だけでなく、もっと広い立場の人たちも加わった議論が起こってくることが望ましいのではないでしょうか。

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