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飛び級制度と法科大学院制度

 法科大学院制度ができてから、司法試験受験資格を得るまでに原則として4年生大学を卒業し、その後、法科大学院に2~3年在籍してその課程を修了する必要があります。
 司法試験を受験できるまでに非常に時間が掛かります。

 旧司法試験の時代では、受験資格に制限はなく、誰でも受験できる試験でした。
 ただ、旧司法試験には第1次試験で教養を問う試験があり、これに合格するか、大学の教養課程を修了しているか(その場合には第1次試験は免除)が必要でした。

 大学2年が終了した3年目に受験を始めるのが一般的だったのではないかと思います。
 早い人は、21歳、22歳で合格していたわけです。
 一般的に司法試験に合格するまでには何年も掛かったというように言われることがありますが、それは過去の話です。

法科大学院信奉者たちの言い分
 実態は、法科大学院制度ができたが故に、かえって時間がかかることになっているのです。

 この法科大学院制度があるために時間が掛かりすぎるということに対して、現実に対応できる方法は2つ。
 1つは予備試験、これに合格することによって法科大学院課程修了と同じ資格が与えられることになりますから、一番の早道になります。

 もう1つは、飛び級制度。3年を終了した時点で、4年生課程と同等の学力があると認められた場合には、4年課程を飛び越えて大学院を受験できるという制度です。
 これを利用すれば1年、短縮することができます。

 かつて、法科大学院制度が創設される前でしたが(2004年以前)、弁護士会で派遣されて、法科大学院制度がどうあるべきかというシンポジウムに参加してきました。
 名古屋大学の女性研究者でしたが、そこでの発言が一番、印象に残りました。
 「優秀な人は、飛び級制度で3年で大学を修了し、法科大学院では2年の既修コースで終えるのが理想。」
 この発言を聞いたとき、結局、プロセスによる教育って何だろうと思いました。
 それだったら予備試験でも良いわけで、このような発想は法科大学院制度にとっては最大の自己矛盾ということになります。

 今や高校にまで飛び級制度が導入され、それがさらに拡大されようとしています。
 これについては別途、論じたいとは思っていますが、相応の年月を掛けることも重要なことがあります。
 小中高では、その中でコミュニケーション能力を養ったりするわけで、学力だけで図ることは大きな誤りです。

 大学であれば、専門的な研究機関として飛び級制度などはあり得るとは思いますが、それでも幅広い教養を学ぶということも大学での役割ですから、単なる専門バカだけが養成されていくというのも問題ではあります。
 他方で、法科大学院は、専門職大学院であり、そこれで学ぶべきものは、はっきりいえば、法的素養であって、司法試験の受験資格に過ぎません。
 要は、法科大学院制度では、「プロセス」などと言われていますが、要は、司法試験受験資格に一定の制約を課することによって、受験者層の一定の底上げを図ろうとしているにすぎません。

法科大学院制度における「プロセス」ってなあに?」
 結局、一定のレベルに達していたのであれば、法科大学院を経由していようがいまいがどうでもよいことです。
 最初に合格者数ありきとしてしまったために、全体の底上げが必要になったというだけですから、もともと「プロセス」ということ自体に全く意味がなかったのです。

 先に紹介した名古屋大学の先生のご発言は、はっきり言って矛盾です。そこまで「優秀」な人であれば、本来的に法科大学院を経由する必要はありません。
 むしろ、予備試験に合格するでしょう。

 法科大学院を経由しなくてもよいのであれば、「飛び級制度」の意味はほとんどなくなります。
 飛び級制度は、研究者養成コースとの関係では意味があるかもしれませんが、「プロセス」という「理念」を主張するのであれば、法科大学院制度と組み合わさった場合には自己矛盾といえるのではないでしょうか。

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