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「ハイパーインフレになる」という楽観論

リンク先を見る 現在、世間で騒がれているのは「アベノミクス」「金融緩和」「デフレ」「インフレ」…と、お金にまつわる言葉がズラッと並んでいる。
 しかし、
  「アベノミクスによって景気が良くなる
  「アベノミクスによって日本経済は破綻する

  「金融緩和によってデフレ脱却できる
  「金融緩和によってハイパーインフレになる

 といった具合に、頭が良い(と思われている)学者やエコノミストが考えても全く正反対の答えが出てくる。なぜこんなに意見が違ってくるのかは実に不可思議な現象だと言えるが、おそらく頭が良過ぎる人々というのは、考えなくてもよいことまで考えてしまう癖があるので、意見が両極端に分かれていってしまうものなのかもしれない。

 頭の良過ぎる楽観主義者は、超楽観主義論者と化し、頭の良過ぎる悲観主義者は、超悲観主義論者と化す。そのどちらもあらぬ妄想に取り憑かれ、その思考はどんどんエスカレートしていくことになり、結果的に現実から遊離した空理空論を説くに至る。

 頭の良過ぎる人というのは、物事を単純に考えず、複雑に考える癖がある。単に頭の良い人は「物事の裏をかく」だけだが、頭の良過ぎる人は「物事の裏の裏をかく」傾向があるので、結局、何も考えていない人と同様、間違った結論に行き着いてしまうことがある。

 ここで、お金にまつわる問題をシンプルに考えてみよう。

 例えば、日本という国に2人の国民しかおらず、お金が1万円しかない場合を考えると解りやすいかもしれない。

 「」という人物と「」という人物が、毎日交代で「生産者」と「消費者」を演じ分けていると仮定すると、「A」が1日に1万円を使用し、次の日に「B」が1万円を使用すると、お金は滞ることなく動いていることになる。この状態が保たれている場合、「A」も「B」も1日働いて手に入れることができるお金は1万円ということになる。

 しかし、ある日、将来的な不安を考えるに至った「A」と「B」が、それぞれ3000円を貯蓄する(使用しない)ことを考えてしまえば、2人の間には毎日4000円しか流通しないことになる。そうなると、これまで1日働いて1万円だったものが、4000円になってしまう。この状態では、1時間余分に働いたとしても、2倍働いたとしても、この4000円が増えることはない。

 ここで重要なことは、どれだけ仕事の無駄を省き仕事能率を上げても、4000円は固定のままということだ。世間に出回っている1万円というお金が増えない限り、どれだけ働いても収入は増えない、いや、正確に言えば、働けば働くほど損をするという悪循環に陥ることになる。

 この状態が、現在の日本が置かれているデフレ経済の一面でもある。1000兆円以上の国民金融資産が有りながら、将来不安によって、そのお金が動かないという文字通りの不動(資)産と化しているため、市場を廻るお金の流通量が絶対的に不足し、企業は安値競争に喘ぎ、労働者はどれだけ働いても生活水準は上がらず汲々としているような状態だと言える。

 海外の人々は、お金が足りないという状態を回避するために、大々的な金融緩和を行ってきたが、日本だけが独り、大々的な金融緩和を行わず、市場に出回るお金の量を増やすことなく放置してきた。だから、日本だけが「資金量の不足」という名のデフレ(と言うより不況)に陥った。実にシンプルな解答だ。

 ただ、日本の場合、「デフレ」の原因には、資金量の不足以外にも様々な問題が密接に絡んでいるので、金融緩和を行って資金量を増やすだけで、即デフレ脱却できるというわけでもない。

 だから、楽観主義者の「金融緩和によってデフレ脱却できる」は必ずしも正しいとは言えないし、悲観主義者の「金融緩和によって日本経済は破綻する」というのも正しくない。

 そのどちらも資金量だけに目を奪われて、肝心要の“人間の感情”というものが無視されてしまっているからだ。

 「金融緩和だけで経済が良くなる」というのは誰が考えても楽観論だが、「金融緩和だけで経済が悪くなる」とするのも、お金の量以外のことを考えていないという意味では、楽観論に過ぎない。「金融緩和によってハイパーインフレになる」というのは一見、悲観論に聞こえるが、実のところは“人間の感情が経済を動かす”という真理を無視した楽観論なのである。

 先に述べた「」と「」の話で言うと、仮に総資金が2万円になったとしても、将来不安が拭えないまま増えた分を全て貯蓄してしまえば何も変わらない。逆に2万円を全部使用するところまで心境が変化するかというと、これも難しい。デフレ脱却やハイパーインフレもこれと同じことである。

 実際は、金融緩和を行ってもハイパーインフレにはならないと思う。大々的な金融緩和を行っても、国民が心の底から将来に希望を抱き、デフレ感情がコロッとインフレ感情に変化するところまでいかない限り、ハイパーインフレなどにはなるはずがない。そんなに簡単にハイパーインフレになる(=人間の感情が激変する)ぐらいなら、日本はこれほど長期の不況には陥っていないはずだからだ。

 お金の量を増やすだけでは景気は良くならない。しかし、お金の量を増やすことによって人間感情が前向きに変化すれば景気は良くなる。現在のアベノミクス効果はこの現象が前倒しで実現している状態だと言える。

 同じ理屈で言うと、お金を増やすだけでは経済は破綻しない。お金を増やすことに伴い人間感情がハイ状態にでもならない限り、ハイパーインフレは起こらない。

 頭の良過ぎる人々が説いているハイパーインフレ理論は、理屈の上ではその通りなのかもしれないが、到底実現するとは思えない。なぜなら、人間は感情を持った生き物でありロボットではないからだ。人間の感情を無視した経済理論は、ロボット相手にしか通用しない空理空論でしかない。人間はロボットほど賢くもなければ、ロボットほど単純でもないということである。

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