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白川総裁の最後の記者会見

日経新聞に最後の記者会見時の白川総裁の写真があった。白い歯を見せ、にっこりしている顔である。肩から荷が下りたという雰囲気が漂っている。この写真、日経新聞のサービスだろうと思った。

もちろん、昨年後半から強まった金融政策の批判を何とか凌ぎ、日銀法の改正をというか改悪をとりあえず防いだことにほっとした、その表情を日経のカメラマンが捉えたとするのなら、「にっこりしている顔」を嫌味で掲載したというストーリーも想定できる。

しかし、そこまで記者も意地悪ではないだろう。日本と世界の経済を冷静に分析し、対応してきたことに、ここ数ヶ月間、日銀批判を徹底して展開してきた記者であっても、一定の敬意を捧げていると思う。「冷静さと受け身とは紙一重」との批判もありえるだろうが。

日経によると、最後の会見で白川さんは、「今後の成長力強化の取り組みを見守っていきたい」、「中銀(日銀)が言葉で市場を思い通りに動かすという政策観には危うさを感じる」と述べたらしい。その通りである。

金融緩和の強化による金利低下によって、当面、最大規模の恩恵をうけるのは政府である。政府が大胆な金融緩和を要望するのには、自分自身の利益を図る目的があるとみなされかねない。

金融緩和がもたらす株価上昇に誰も反対しないだろう。むしろ大賛成の投資家が多い。その投資家の中から、「株価が上がるから、株式を買う」者も登場する。

しかし、その結末の1つはバブルの発生である。バブルは投資家が冷静さを失った時に生じる。さらに、「今の株価は正しい」とのエセ理論を無理やり創作する。

もう1つの結末は、投資家が冷静さを失わず、企業業績が伴っていないと判断したときである。このとき、市場に失望が蔓延し、株価が出発的にまで急落するだろう。

もちろん、円安に転換した好機を企業が生かし、成長力と収益力を取り戻すことも考えられる。その場合、株価の継続的な上昇が続くだろう。この望ましい状態が生じるのかどうか。そのためには、白川さんが指摘したように、成長力強化の取り組みが成功していないといけない。また、日銀が言葉で先導した方向に、企業が行動していることも求められる。

新しい総裁の黒田さんもそのことは百も承知だろうから、心配しなくてもいい。そのとり巻きというか、尻馬に乗ったオカラではない輩が、どこまで黒田さんと同じ認識でいるのか。これが大問題だが。

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