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「刑事裁判の絶対権力者」による「ざまあ見ろ」判決の傲慢

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小沢氏事件控訴審判決

まず、小川裁判部の小沢氏控訴審判決の中の、小沢氏の秘書の石川知裕氏らの虚偽記入の故意を否定した部分を見てみよう。

《原判決は,石川は,Xとの交渉の結果,決済全体を遅らせることはできず,所有権移転登記手続のみを遅らせるという限度で本件合意書を作成し,所有権の移転時期を遅らせるには至らなかったとする。そして,原判決は,所有権移転の先送りができたと認識していた旨の石川の原審公判供述は信用できないとする。

しかし,関係証拠に照らすと,残代金全額の支払がされ,物件の引渡しがされて,本件土地の所有権移転登記手続に必要な書類の引渡しがされるなどしたことから,平成16年10月29日に本件土地の所有権が移転したとした原判断を不合理とすることはできないが,石川の上記原審公判供述は信用できないとする原判断は,経験則等に照らし,不合理というほかはない。

(ア)石川は,「本件合意書の1条において,本件土地の所有権を平成17年1月7日に移転することが取り決められたと考えていた。また,当時,所有権の移転と登記名義の移転との違いをよく理解していなかったことや司法書士からの説明で所有権移転の先送りができたと認識していた。」旨を原審公判で供述した。

これに対し,原判決は,本件売買契約書の記載を見れば,所有権の移転と登記名義の移転が異なるものとして扱われていることは専門家でなくても容易に理解できる,高額の不動産購入に当たり本件売買契約書の内容を慎重に検討したはずであり,所有権の移転と登記名義の移転とが区別されるものであることを理解していたはずであるから,本件合意書により本件土地所有権の移転時期の変更などは合意されていないことも認識していたものと認められる,司法書士は,その立場等に照らせば,陸山会における経理処理や収支報告書の計上方法について,石川に助言をするはずがない, として,石川の前記公判供述は信用できない旨認定判示する。

(中略)

これらからすると所有権の移転時期については本件合意書によって変更されておらず,本件売買契約書に従って処理されることになると理解することも可能といえる。

しかし,本件合意書作成の経緯等を見ると,関係証拠によると,次の事実が認められる。

すなわち,石川は,本件売買契約後に先輩秘書からの示唆を受けるなどして本件土地公表の先送りの方針を決め,当初は本件売買契約の決済全体を来年に延ばすようにYに求めた。しかし,売主の意向が残代金は10月29日に支払ってほしいというものであったことから, Yの担当者が,司法書士から聞いていた仮登記を利用して,本登記を延ばすことを提案し,陸山会側がこれを了承し,本件合意書の作成に至った。その際,所有権の移転時期についての具体的なやり取りがされた様子はない。(下線は筆者)そして,前記のとおり,本件合意書の第1条には,残代金の支払時期及び物件の引渡し時期は明記されているが,所有権の移転時期については何ら明記されていない。

(イ)そこで,石川の認識についてみると,仮に原判決のいうように石川が所有権の移転と登記名義の移転とを区別して理解していたとすると,本件合意書の作成に当たり,所有権の移転時期はどうなるのかと聞いたり,本登記の先送りだけでなく所有権移転時期の先送りも本件合意書に明記してほしいなどという要望をすることになるのではないかと思われる。石川がそのような行為に出ていないということは,石川としては,所有権の移転と登記名義の移転とを区別して認識しておらず,これらを一体のものとして認識していたためではないかとみるのがむしろ自然ともいえる。

また,本件売買契約書及び本件合意書の内容について,原判決は,石川が慎重に検討したはずであり,専門家でなくても容易に理解できるとする。しかし,石川は, 10月29日の決済直前にいわば駆け込みで先送りを実現しようとするなど,慌ただしい状況にあったといえるのであるから,時間をかけて慎重な検討をするような心理的余裕がなかったのではないかとみる余地がある。しかも,陸山会側からの要望が契機であるとはいえ,本件合意書自体は,司法書士という専門家も関与した形でYから提案されたものである。法律の専門家でもない石川がそれを十分な検討を経ることなく信頼したということはあり得ることといえる。したがって,原判決のいうように石川が慎重に検討して理解したとはいい難いというべきである。

そうすると,石川が,本件合意書により,自らの要望どおりに所有権の取得も先送りできたものと思い込んだということもあり得ることといえる。

他方,本件合意書作成の経緯等からすると,売主であるXとしても,陸山会側の当初の要望である決済全体の先送りに応じることはできないが, 10月29日に残代金の支払が受けられ,物件の引渡しができれば足りると考えていたものとみられ,登記と所有権取得とを一体のものとして先送りするという陸山会側の明示的な要望があれば,これに反対するような状況は何らうかがえない。これは,前記のような石川の認識に矛盾しない。

以上からすると,石川としては,原判決がいうような所有権移転登記手続のみを遅らせるという限度で本件合意書を作成したとの認識であつたとは認め難く,登記と一緒に本件土地取得も先送りされたと理解したとみる余地があるといえる。したがって,これまで検討したような考察を欠いたまま石川の前記公判供述は信用できないとした原判決の判断は,経験則等に照らし不合理というほかはない。

以上のとおり,石川は,本件土地の取得を平成17年に先送りできたと思い込んでいた可能性があり,石川から本件土地購入等に関する引継ぎを受けた池田についても,石川と同様の認識であった可能性を否定できない。そうすると,本件土地の取得について,石川の平成1 6 年分の収支報告書不記載(本件公訴事実の第1の3 ) の故意,池田の平成1 7年分の収支報告書虚偽記入(本件公訴事実の第2の2 ) の故意はいずれも阻却されることになるので,これらの故意を認めた原判決の判断は,論理則,経験則等に照らし不合理であって,是認することができない。》


この中で重要なのは下線部分の「石川氏が登記と一緒に本件土地取得も先送りされたと理解した」と認める根拠についての判示である。不動産業者Yの担当者の公判供述を踏まえて認定されたものである。

そして、このような事実認定を踏まえ、小沢氏から提供された4億円の処理に関する石川氏の認識について、

《石川は,平成16年10月28日から29日にかけて,預金担保貸付の手続や送金手続を短期間で実行するという慌ただしい状況にあったこと,返済計画等の事後処理は池田に任せていることなどに鑑みると,本件預金担保貸付を利用した本件4億円の簿外処理は,ある意味で,その場しのぎの処理として慎重に検討することなく実行されたとみられるのであり,石川としては,前記のような本件4億円の簿外処理のスキームについてそれなりの形がつけられたなどと安易に認識していた可能性がある。また,前記のとおり,石川としては,本登記と共に本件土地の取得の先送りが実現できたと思い込んだ可能性があり,本件土地取得費等支出の計上についても,本登記と合わせて計上することで一応の説明がつかなくはないと考えていた可能性があることは否定できない。》


と判示して、石川氏の処理が、「その場しのぎの処理として慎重に検討することなく実行された」ものであると認定した。

また、「石川らが本件4億円の簿外処理(りそな4億円の借入れ)を実行したのは,被告人が4億円もの巨額の個人資産を陸山会に提供し陸山会が本件土地を購入したことについて想定される追及的な取材と批判的な報道を避けるため」だとする指定弁護士(検察官役)の主張に対しても、

《前記のとおり,石川は,本件土地公表の先送りの方針について,短期間で慌ただしく実現しようとしており,ある意味で場当たり的な計画であったといえ,所論がいうようなところまで石川が考えていたとは疑わしいといえる。本件土地公表の先送りと本件4億円の簿外処理を行っただけでは,つじつまの合わない状況は平成1 7 年分に先送りされるだけで根本的には解消されないし,そうした状況が生ずるのを避けるより有効な別の方法が考え得るところである(例えば,本件4億円を原資とする定期預金の名義を陸山会ではなく被告人とし,これを担保に陸山会がりそな銀行衆議院支店から必要な金額を借りたり,本件売買代金全額を陸山会等が保有する現金で支払い,それによる陸山会等の日常的な資金繰りの不足分をその都度必要な限度で被告人が負担したり,端的に本件売買代金のうち必要な限度でその一部を被告人の個人口座からの借入金で賄うなどの方法)。これらからすると,本件土地公表の先送りと本件4億円の簿外処理とが専ら連動しているとはいえない。そうすると,原判決の判断を不合理とすることはできない。》


と判示して、石川氏の処理が意図的な隠蔽であることを否定した。

小川裁判部の小沢氏控訴審無罪判決での石川氏の虚偽記入の故意、隠蔽の意図を否定する論旨は極めて明快である。

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