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「あなたの中二病は、今、どこにいますか?」――大人になってからの中二病ソウル管理問題

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 一般には、思慮分別のつく年齢になった人は中二病を卒業していく、といわれている。痛々しい名前のアバターアカウントをつくって格好良いと思い込んでいた過去・ライトノベルに出てくる服装がオシャレだと思い込んでいた過去が恥ずかしくなり、無我夢中だった頃の自分自身を思い出しただけで溜息が出てくる……そういう思い出を抱えている人は多いと思う。

 じゃあ、「中二病は本当に中二で終了」なんだろうか?

 これについて、含蓄深いフレーズを見かけたので引用してみる1

「三つ子の魂百まで」という言葉が示すように、若いころに身に着けた価値観・性格・知識は、かんたんには無くならない。27歳の私のなかには、17歳のころの私がいて、7歳のころの私もいる。37歳、47歳……77歳になったとしても、彼らが立ち去ることはないだろう。過去の自分は、いつまでも心のなかにいる。それは、ごく自然なことだ。 だから、思春期を忘れないこと自体は、悪いことではない。自分のなかの「子供っぽさ」を閉じ込めて、黙らせて、無視することはできても、それを殺すことはできない。思春期を忘れないのは人間として当たり前だ。

http://d.hatena.ne.jp/Rootport/20130222/1361525349


 引用したように、人間の心は、7歳を脱皮して17歳を迎えるわけでも、17歳を完全に捨てて27歳になるわけでもない。植物に喩えるならタマネギや年輪みたいなもので、幼い頃の自分自身の外側に、年を取ってからの自分自身が上書きされていくのだろう――何枚も何枚も。

 ライフサイクル論で有名なE.エリクソンも、「子ども心は完全に消えるわけではない。遊びのシーンや退行状況で蘇ることもある」と書いている。誤解している人もいそうなので一応断っておくと、エリクソンのライフサイクル論は、年齢とともに心が“脱皮”していくようなモデルではない。「その年頃で新たにみえてくる課題」「その年頃でクローズアップされてくる課題」がライフサイクルの相ごとに変わっていきますよ、という話であって、乳児期~学童期の心性は大人になってからもついてまわる。そして新しい課題への取り組みに影響を与えることもある。

 ということは、中二病全盛期の自分自身の気持ち――中二病ソウル――も人格のタマネギ・人格の年輪の内側に眠っている筈だ。どんなに大人ぶった身振りを身につけても、中二病だった自分自身は失われていない。過去の自分は消去できない。表面化していないだけで、必要な時・やむにやまれぬ時には、またぞろ中二病ソウルが出てくるかもしれない……というか、しばしば出てくる。

 このあたりを反映しているっぽいのは、中二病の兄弟スラングにあたる「高二病」「大二病」「社二病」あたりだ。中二病を痛々しいと思っていた高校生が、大学や社会人になって間もなく、中二病の大学生版・社会人版のような身振りを無意識に繰り返している……という経験をした人は、結構いると思う。たぶん私もその一人だ。

 思春期向けコンテンツの世界では、そうした「いったん中二病を卒業してからの中二病」「いい歳迎えた中二病」が肯定的に描かれることがある。『中二病でも恋がしたい!』『AURA ~魔竜院光牙最後の闘い~』では、眠らせていたはずの中二病が重要な役割を果たした。『STEINS;GATE』でも、大人になった主人公の中二病的メッセージがキラリと輝くシーンがあった。その是非はさておき、こうした作品に相応のニーズがあることも、中二病ソウルが意外と死滅しないあらわれかもしれない。

 そんなわけで、大人になった私達の心には、今も中二病ソウルが眠っている。休火山のように中二病ソウルを蓄積させている人の場合は、ある日、大噴火するかもしれない。

「自分のなかの中二病とどう付き合っていくか」

 なら、そんな中二病は押し殺しておくべきか?

 なんとしても自分の心から追放するべきか?

 そんな事をしてもしようがないと思う。

 中二病ソウルが永眠しているならともかく、マグマのように溜まっているものを完全に押さえ込もうとすると、ストレスがたまり、水面下で中二病ソウルのゲージがどんどん溜まっていくだろう。限界まで溜まった中二病ソウルは、ある日大噴火するかもしれない。欲求や不安に完全に蓋をするのはとても難しい。それぐらいなら、制御可能な範囲で・社会的に問題にならない範囲で中二病ソウルを発散させるというか、吐き出しておけるようにしたほうがメンタルヘルスも社会生命も安定しやすいと思われる2

 それと、中二病モード・邪気眼モードに入っている時は精神のエネルギーが高い。困難に立ち向かわなければならない時・高いモチベーションを必要としている時、あの、なんともいえない高揚感を転用できたら、普段以上の実力を出せるかもしれない。そういえば『STEINS;GATE』のラストシーンの中二病フレーズも、萎えかけた主人公を奮い立たせる言葉だった。

 これは、高揚感と冷静さが同居可能な状況でなければ使えないし、世の中には、虚勢を張るためだけに中二病フレーズを口にする人もいる3ので、中二病ソウルの高エネルギーを転用・昇華できる人は限られるかもしれない。でも、もし転用・昇華可能なら使ったほうが得だと思う。

 それが無理な人は、何か適当な、社会生活にあまり害が出ないような形で中二病ソウルをガス抜きしておくのが良いかもしれない。匿名ダイアリーに痛々しい書き込みをするでもいいし、ネットゲームやソーシャルゲームでこっそり邪気眼全開ライフを堪能するのもいいかもしれない4。とにかく、なるべく穏当な方法で、自分のなかの中二病ソウルが窒息しすぎないよう管理したほうがいいんじゃないかと思う。

内に秘めた古い気持ち・古い感情とどう付き合うか

 この「中二病ソウルをどう管理するか問題」に限らず、人間は、過去のある時期・ある時代の気持ちを抱えたまま歳を取っていく。誰にだって、人生の年輪のなかには「黒歴史」にしたいような思い出が刻み込まれていて、現在の身振りや人間関係にも微妙な影響を及ぼしている筈だ。その、古い気持ち・古い感情を弾圧したり消去したりしようと思っても、どうせ巧くはいかないと思うので、転用できるところは転用し、それが無理ならなるべく穏当な形でお付き合いしていきたい。

 なにより、そんな過去の痛々しい自分自身を嫌いにならずに「まあ、こういうのも自分の一部だよね」と認めてしまったほうが、たぶん気持ちがラクになると思う。そんな過去・そんな自分が埋もれていたって、別にいいじゃないか。



1:注:ただし、引用元のブログ記事の論旨とこの記事の論旨は異なっていますのであしからず。

2:一番恐ろしいのは、「制御不可能な中二病ソウルが、不適切な状況下で不適切な形で噴き出す」ことだから

3:『STEINS;GATE』の主人公は、少なくとも前半パートではまさにそんな感じだった

4:もちろん、これらのゲームをやる際には、時間や金銭を浪費しすぎないように注意は必要である

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