- 2022年03月21日 20:14 (配信日時 03月21日 15:15)
さんま、鶴瓶も驚いた…タモリが32年も「いいとも」を続けるために絶対にやらなかったこと
2/2ハングリー精神なんて邪魔
やがて37歳で「いいとも」が始まり、約1年で軌道に乗った。しかし自分はすでにその年齢を過ぎてしまった──と嘆く岡村に、タモリは「だから、そういうふうに考えないのよ」と諭す。
「他のことに興味が出てくると、ちょっとは自分を見る見方も変わってきて、それは余裕になると思うよ」と[8]。そしてこの岡村との対談の前年に行われたインタビューでは、もっとはっきりと、このように述べている。
「ハングリー精神なんて邪魔。この世界ハングリー精神じゃダメだと思うんですけどね。笑いなんか人間の精神の余分なところでやってるわけでしょ」[9]
「目標なんて、もっちゃいけません」
タモリの座右の銘が「適当」であることは有名だ。
他にも「現状維持」「俺は努力ということをしない」などをあげることもある。共通点は「頑張って向上する」ということを拒否した言葉であるということだ。
「向上心なんてなかったですからねぇ。今もないし」とタモリは言う[10]。「なんかいつも、みんな何年後かに私はこうなりたいとかいうでしょ。目標を持って努力して頑張ることが、いいことのようにいうけど、いつも違和感があったんだよね」[5]「目標なんて、もっちゃいけません」とタモリは言う。
その理由はこうだ。「目標をもつと、達成できないとイヤだし、達成するためにやりたいことを我慢するなんてバカみたいでしょう。(略)人間、行き当たりバッタリがいちばんですよ」[11]
夢なんて無くたって生きていける
タモリが支持されたのは、そういったスタンスが時代のニーズにあったからではないかと自身も分析している。
そしてタモリはまた、「夢」を無条件で賛美する風潮にも異議を唱える。

戸部田誠『タモリ学』(文庫ぎんが堂)
「努力すれば夢は叶う」とマスコミは喧伝する。しかし例えば自分は中学の時に短距離の選手になりたかったが、どんなに頑張っても世界記録は出せないだろう、と。「やっぱり、中学の時に勉強できない奴がいっぱいいるんですけれども、勉強できない奴にどんなに勉強さして、尻を叩いても、先生方は『みんな勉強する能力は同じだよ』と。違うんですよ。だから勉強できなくてもいいわけです」[12]
にもかかわらずこのような状況に陥っているのは、「資本主義という全体主義」が元凶であり、しかしそれはもはや行き詰まりを見せているのだとタモリは語る。
タモリの根幹には「なるようにしかならない」という思想があるのだろう。過去の自分にも、未来の夢にも執着しないで、現状を肯定する。大学でトランペットを志したタモリは、先輩の言葉によってその夢が断たれた。
しかしその先輩の勧めで始めた司会業こそが天職だったように、タモリは流れに身を任せて生きてきたのだ。「夢なんて無くたって生きていけるんだよ」[13]
[1]「FNS27時間テレビ」フジテレビ(12・7・22)
[2]「ざっくりハイタッチ」テレビ東京(13・11・9)
[3]『本人』vol.11/太田出版(09)
[4]『対談「笑い」の解体』山藤章二/講談社(87)
[5]「エチカの鏡 ココロにキクTV」フジテレビ(09・2・1)
[6]「徹子の部屋」テレビ朝日(05・12・23)
[7]「笑っていいとも!」フジテレビ(11・12・9)
[8]『パピルス』幻冬舎(08・10)
[9]『STUDIO VOICE』INFASパブリケーションズ(07・3)
[10]「タモリ先生の午後2007。」「ほぼ日刊イトイ新聞」(06~07)
[11]『MINE』講談社(98・8・10)
[12]「はじめての中沢新一」「ほぼ日刊イトイ新聞」(05~06)
[13]「笑っていいとも!」フジテレビ(04・12・20)
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戸部田 誠(とべた・まこと)
ライター
1978年生まれ。ペンネームは「てれびのスキマ」。『週刊文春』「水道橋博士のメルマ旬報」などで連載中。著書に『タモリ学』『コントに捧げた内村光良の怒り』『1989年のテレビっ子』『人生でムダなことばかり、みんなテレビに教わった』『全部やれ。 日本テレビ えげつない勝ち方』など。
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(ライター 戸部田 誠)
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