- 2022年03月15日 13:07 (配信日時 03月15日 10:15)
転売ヤーは新宿西口でホームレスに声をかける…人気商品を買い占める「並び」の仕事の中身
2/2新宿から海浜幕張まで、家電量販店などをひたすら回る
そんな働きたくても働けないホームレスたちに人気の仕事が2つある。1つは「並び」と呼ばれる仕事だ。パチンコ店の抽選に並ぶ仕事、中国人の爆買いの手伝いで家電量販店に並ぶ仕事など種類はいくつかあるが、私はポケモンカードの転売ヤーから並びの仕事をもらった。
夜になると新宿西口地下広場に現れる転売ヤーの「フジモト」という男と私は口約束をし、翌日の早朝、待ち合わせ場所に向かうとそこには14人のホームレスが集まっていた。フジモトの付き添いのもと都内の家電量販店などを回り、指定されたポケモンカードを支給された現ナマ1万5000円で買えるだけ買う。その領収書をフジモトに渡すと1枚あたり1000円で換金してくれるのだ。
転売ヤーのフジモトから渡された商品のメモ(筆者撮影)
フジモトはおそらく転売グループの下っ端であり、ポケモンカードのこともよくわかっていない。彼に渡されたメモは字が汚すぎて読むことができず、本人も商品名を正確に把握していないような書き方であった。一緒に列に並んでいた70代のホームレスに聞くと、「シャイニースターV、イーブイヒーローズ、蒼空ストリームだよ」と自慢気に教えてくれた。
ポケモンカードの買い付けは新宿で始まり、終わりは海浜幕張駅であった。フジモトから給料をもらったホームレスたちは、その場で駅にあるコンビニで酒とつまみを買い、ホームで酒盛りを始めた。もちろんポケモンカード以外にも「ニンテンドースイッチ」などのゲーム類、「シュプリーム」などのブランド品の並びの仕事も回ってくる。時期にもよるが並びの仕事は1回5000円ほどで、月に3回ほどは就くことができるという。
転売ヤーのフジモトと一緒にポケモンカードを買い回るホームレスたち - 筆者撮影
年金をもらいながら路上で暮らす
もうひとつは某宗教団体が行っている研修だ。新宿や上野で炊き出しが始まるのを待っていると、「兄ちゃん、今日は研修行くかい?」とよく話し掛けられた。聞くと、「富士山の写真が載ったチラシを配っている宗教団体」の道場に行き、小一時間ほど研修を受けると1500円もらえるのだという。
研修の参加者を募っているのはその宗教団体の人間だ。研修に連れて行く人数のノルマがあるらしく、ホームレスに金を渡して頭数を確保しているのだ。彼らは炊き出しなどホームレスや生活保護受給者が多く集まる場所で待機しており、私たちに声を掛け、参加者を車に乗せて道場へと向かう。
さらに、ホームレス自身が研修の参加者を募っているケースもある。宗教団体の人間から人集めを委託されており、1人連れて行くたびに500円もらえる。1人連れて行き、自分も研修に参加すれば2000円の収入になる。
少数派だが古紙回収をしているホームレスもいる - 筆者撮影
そして、もっとも意外だったホームレスの収入源が年金である。上野公園に暮らして18年、月7万円の年金を受給しているというホームレスが話す。
「世間の人たちはすべてのホームレスが悲惨だと捉えているでしょう。もちろんそういう人もいるんですよ。昔はそういう人ばかりだったけど、つらい人は生活保護に行けるようになったんだから。今でもホームレスやっている人っていうのは、僕らみたいに年金もらっている人が多いんですよ」
國友公司『ルポ路上生活』(KADOKAWA)
普通に考えれば、月収7万円は生活保護を受けてもいい水準である。なぜ彼はあえて申請しないのか。
生活保護を受けると、月12〜13万円もらううち、少なくとも家賃・光熱費で6〜7万円の金が消え、自由に使える金が7万円を切るという現象が起きてくる。
「だったら路上でもいいから7万円自由に使えたほうが俺はいい」
そう考える人がホームレスになっているのだ。実際にホームレス生活をしていると分かるが、路上で暮らしながら月7万円の収入があれば相当リッチな生活ができる。
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國友 公司(くにとも・こうじ)
ライター
1992年生まれ。筑波大学芸術専門学群在学中よりライター活動を始める。キナ臭いアルバイトと東南アジアでの沈没に時間を費やし7年間かけて大学を卒業。編集者を志すも就職活動をわずか3社で放り投げ、そのままフリーライターに。元ヤクザ、覚せい剤中毒者、殺人犯、生活保護受給者など、訳アリな人々との現地での交流を綴った著書『ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活』(彩図社)が、2018年の単行本刊行以来、文庫版も合わせて6万部を超えるロングセラーとなっている。
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(ライター 國友 公司)
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