記事
- 2022年03月05日 15:13
成田悠輔「介護業界こそ“生産性”を求めるべき。それは“人間らしさ”と対立しない」 - 「賢人論。」第159回(中編)成田悠輔氏
2/2データを横串で刺して家庭の危機を察知するような仕組みを
みんなの介護 他に今の日本の社会課題、例えば家庭の貧困などについて何か解決策をいただけないでしょうか。成田 国全体として貧しくなる中で、苦しむ子どもや家庭が増えています。人手不足問題があるので、人海戦術で彼らを救うことは難しいでしょう。
しかし、申請主義で窓口を設定して相談が来るのを待っているだけでは、本当に危ない状態にある家庭ほど見つけられない。
苦しい状況にある子供や家族ほど、窓口に駆け込むことさえできないほど精神的・時間的に追い詰められていることが多いからです。
じゃあどうするか。例えば、自治体が持っているデータの中からSOSを発している家庭や子どもを自動的・機械的に見つけられるような仕組みをつくり出す。
家庭が抱える困難といってもさまざまです。家計の困難にあっている子もいれば、子どもの教育や学力といった困難もある。障がいの悩みや虐待もある。
このような情報は、各現場の窓口がそれぞれに持っていますが、それを部局や窓口を越えて自治体レベルで集約する。そうすると「この不登校は本人の意思じゃない。家庭が危機的な状況にある。支援が必要だ」などと察知できるようになります。
みんなの介護 数値的なデータとしてはやはり納税額がわかりやすいでしょうか。今でも住民税非課税世帯を把握する策などは打たれていますが。
成田 そうですね。納税額で収入レベルがだいたいわかります。その他にも生活保護や受けている支援のタイプや、学校では健康診断によって身体の状態に関するデータを持っています。
これらを横串でつなげると、急に価値を持ち始めるということは多いです。実際に日本でこれから創設される「こども家庭庁」とデジタル庁が組んで、子どもの生活実態を自治体がある程度把握できるようなデータベースをつくろうとしています。
もちろんプライバシー等の観点からそれに対する批判も出ると思います。どのデータを、誰が、どんな権限のもとで、どんなリスクコントロールをしながら管理するか。そのパッケージについて議論される必要があるでしょう。
日本は世界一コスパ良く寿命を上げることに成功した国?
みんなの介護 介護問題を離れてお聞きします。今「沈没しかけている船」とおっしゃっていたように、日本について最近メディアで流れるのは暗いデータばかりです。そんな中でも成田さんが発見した明るいデータというものは何かありますか?成田 いくつもありますね。例えばこんなツイートをしたのですが。
これを見てわかるのは、日本というのは「世界一高齢化してしまった国」であると同時に「世界一コスパ良く寿命を上げることに成功した国」でもあるということ。高齢化で世界トップっていうと諸悪の根源っぽく聞こえるけど、見方を変えるとすごい達成。日本ほど少ない医療費でコスパよく寿命を伸ばせた国はない(図は縦が寿命で横が医療費、左上ほどコスパよし)。どんずまりの老人地獄はイノベーターのジレンマなのかもね pic.twitter.com/tHEvEIqPhZ
— 成田 悠輔 (@narita_yusuke) January 27, 2022
アメリカと比べて驚くべき差があります。アメリカは日本の2~3倍の医療費を使っているのに、寿命は5歳~10歳低いです。
超高齢社会になるまでの進歩や繁栄があまりに強力だったために、その反動が今来ている。日本の停滞は「イノベーターのジレンマ」とも言えると思います。今は負の側面ばかりに目が向いていますが、こうした肯定的に解釈できるデータもあります。
また日本は「世界一企業の寿命を延ばすことに成功した国」でもあります。全世界で創業200年以上経っている企業の3分の2ぐらいが日本に集中しています。細く長く続くという意味では、日本の企業ほど成功している経済はないのです。
※出典=日経BPコンサルティング 周年事業ラボ調べ
でも、実際はほとんど無関係なんです。だから、高齢化は衰退を決定づけてしまう運命的な要因ではないということだと思います。国全体の総GDPは厳しいかもしれませんが、少子高齢化の中でも1人当たりの豊かさを維持しつくり出すことは可能なのではないでしょうか。
撮影:花井智子



