- 2022年03月03日 10:09 (配信日時 03月02日 17:15)
元凶は「発泡酒、第3のビール、飲み放題」…日本人がビールを飲まなくなった3つの理由
2/21次会の「たった2時間」でみんなベロベロになる
そうやって2次会を終えてお客さんにお土産をもたせてタクシーに乗せたら、内輪で反省会を開きます。これが3次会。上司からいろいろとお叱りを頂戴して3次会が終わり、上司がタクシーで帰ると、
「やってらんねえよなあ」
と言う先輩に誘われてしめのラーメンと一緒にビールを1杯。この4次会が午前3時頃でお開きになって、また翌日、新しい営業活動が始まる。これがひとりあたりの酒類消費量が多かった時代のビジネスパーソンの1日でした。
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Hiromi Kudo
昭和の時代には1次会で完全に酔っぱらうのは学生ぐらいで、社会人は1次会では正気を保つ義務がありました。この文化を壊して泥酔文化を誕生させたのが飲み放題です。以後、1次会の2時間で参加者は完全に酔っぱらうようになり、かつ、接待も飲み会も1次会で終了するのが日本の新しい文化になってしまいました。
このように歴史をひもとけば、若者のビール離れが起きているのではなくて、ビール会社が売上を伸ばすために導入した3つの戦略によって、若者がビールを飲まなくなったという論理が正しいことがわかるでしょう。ビール工場が閉鎖されて怒っている従業員は、世の中ではなく30年前の経営陣を怒るべきです。自ら蒔いた滅びの種が今、ブーメランで戻ってきているのですから。
RTD市場流行の背景にも「飲み放題」がある
さて、このようなブーメランによる逆風の中、それでもビール各社は成長戦略を描かなければなりません。今、成長している国内市場はふたつあります。RTD(Ready to Drink)市場とノンアル市場です。
RTDとはその名のとおり、缶をあけたらすぐ飲める飲料のことで、成長の主力は缶チューハイと缶カクテル、缶ハイボールです。RTD市場が若者の間で堅調に拡大している背景には、先ほどお話しした飲み放題があります。
最近の飲食店のメニューでは飲み放題は2種類あるのが普通です。それは飲み放題とプレミアム飲み放題で、わかりやすくいえば飲み放題のメニューでは新ジャンルビールと安いお酒、プレミアム飲み放題ではビールと高いお酒が選べます。
若者が居酒屋で楽しむ場合は当然、価格の安い飲み放題の方を選ぶので、そこで一番飲まれるお酒は新ジャンルビールではなくハイボールだったりチューハイだったりするものです。実際、私が若い世代の飲み会に参加すると、お酒が好きな人は飲み放題でビールが選べないとわかると1杯目からビール類ではないお酒を迷わず選ぶ傾向にあります。
こうして「お酒といえばビールではないもの」という習慣で育った若者は、コンビニで自宅で飲むアルコールを買う際にも220円のビールではなく155円のストロングチューハイを選びます。
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Kwangmoozaa
「ノンアル市場の拡大」は、飲めない消費者に良いトレンド
ちなみにRTDについて低アルコール化のトレンドがあるというニュースを見ますが、販売量を見る限りは今でも主力はアルコール分7%以上のストロング系であることは間違いありません。要するに1缶で十分に酔えるという点が若者のニーズに合致しているわけです。
もうひとつのトレンドであるノンアル市場の拡大は、お酒を飲めない消費者にとっての新しくて良いトレンドです。
日本人には一定数、アルコールが飲めない人がいて、そのひとたちにとって飲み会は居心地の悪いものです。これまでは盛り上がる居酒屋の中で選択肢はウーロン茶と緑茶の2択しかなかったものですから、それで2時間の時間をつぶすのは容易なことではありませんでした。
そこに登場したのがノンアルコールビールであり、ノンアルコールカクテルやノンアルコールチューハイです。味わいにバラエティがあるうえに、オーダー毎に違ったものを楽しむことができるため、ノンアル体質の人にとっても飲み会に参加しやすい環境が整ったのです。
ビールの反撃は2026年から始まる
さて、30年前に当時のビール業界の偉い人たちが蒔いた3つの滅びの種ですが、5年後にはようやく滅びのトレンドが止まりそうです。2026年に酒税法が改正されて、30年かけて形成された業界のゆがみが消滅するからです。
この年、ビール、発泡酒、新ジャンルの酒税がようやく一本化されます。ビールの酒税が下がり、発泡酒、新ジャンルが上がるのです。同時にチューハイやワインも新ジャンルほどではありませんが、酒税が上がります。
ざっくりいえば今、350ml缶だとビールはチューハイよりも42円酒税が高いのですが、その差が2026年には20円弱になるのです。コンビニでは缶ビールが198円、ストロング缶が162円となり両者はあまり価格が変わらなくなります。当然ですが飲食店でもビールとチューハイ、ハイボールはそれほど価格が変わらないメニューに変わることになるでしょう。
若者がビールのおいしさに気づくのはこの年からではないでしょうか。2026年、30代上司が、
「おい、ビールなんてまずいものよく飲めるな?」
と新入社員をからかうと、
「でも先輩、ビールって超やばくないですか?」
と答える日が、必ずやってくる。ビールの反撃はこの2026年から。今のうちに工場建て始めたらどうでしょう?
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鈴木 貴博(すずき・たかひろ)
経営コンサルタント
1962年生まれ、愛知県出身。東京大卒。ボストン コンサルティング グループなどを経て、2003年に百年コンサルティングを創業。著書に『日本経済 予言の書 2020年代、不安な未来の読み解き方』など。
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(経営コンサルタント 鈴木 貴博)
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