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徹底分析『ヒューマングルメンタリー オモウマい店』に隠された2つのヒットの法則

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知識・情報が含まれた番組は視聴者が見やすくなる

イラストAC

これは誰に聞いたわけでもない私の感覚ですが、テレビを見る際に最も腰が軽いのは「何かしらの知識・情報を獲得できそうな番組」だと感じています。もちろん、「そんなことない」「情報性の強い番組とか嫌い!」という方も多数いると思いますが。

「何かしらの知識・情報を獲得できそうな番組」というのはニュースだけではありません。ワイドショーもそうですし、グルメ番組もそうですし、医療番組も、雑学番組も、通販番組も含めてです。濃度の違いはあれどほとんどの番組に知識・情報は入っています。『世界の果てまでイッテQ!』のようにお笑い色の強い番組にも「世界の知識・情報」が含まれています。もちろん、情報濃度は低めですが。

テレビ番組に対しては「情報番組とか嫌い!」という人でも、いざネットの記事を見る時は情報性のあるものを見るのではないでしょうか?「芸能人がこんなスキャンダルを起こした」「早死にしやすい人の特徴5選」「警察官が盗撮で逮捕」など。読み物として面白いだけの情報性ゼロのコラムを優先して読む人はほとんどいないでしょう。松本人志、マツコ・デラックスのコラムなど、信頼に足る人物の書いたもの以外は。

そういった意味でテレビ番組も“知識・情報を含んだ内容”の方が初動としては見てもらいやすいと私は考えています。その意味で『オモウマい店』はテレビでは古くからテッパンとされてきた「デカ盛りグルメ」をテーマにしています。(打ち出しとしては「おもてなし」という言葉を使っていますが)そのため、多くの視聴者にとっては入りやすい入り口になっているのではないかと思います。

しかし、先述したようにエンタメの本質は「差別化」。

ただの「デカ盛りグルメ」の番組はこれまで数多く存在しましたし、今も存在します。「デカ盛りグルメ」を取り扱っただけでは差別化はできていません。では『オモウマい店』が他の「デカ盛りグルメ」の番組と差別化されている特徴は何か?それは…「人間にスポットを当てている」ということだと思います。

番組タイトルが『ヒューマングルメンタリー オモウマイ店』となっているように、お店で働く人やお客さんにスポットが当たっているんです。これまでテレビ番組でやられてきた「デカ盛りグルメ」の企画といえば①デカ盛りグルメのお店を紹介するのがメイン。もしくは②大食いタレントがデカ盛りグルメに挑戦するのがメイン。この2つが大半でした。『オモウマい店』はこのどちらでもない「人間にスポットを当てているのがメイン」です。

写真AC

お店の情報よりも、タレントのチャレンジよりも、人間の面白さにスポットを当てているのです。そして、スポットを当てられた人たちがとてつもなく面白い。それもそのはず、お店の利益を度外視してありえないデカ盛り料理を提供している店主なんて、そりゃあ人間的に面白い人である確率が高いに決まっています。

テレビ番組においていざ見る時の腰が軽いのは「何かしらの知識・情報を獲得できそうな番組」だと述べましたが、いざ番組を見た時に心にグサッと刺さるのは「人間が描かれたもの」だと個人的に思っています。やはり人間こそが1番面白い。これが真理だと思います。

具体的な番組でたとえるならば『情熱大陸』『プロフェッショナル 仕事の流儀』などのドキュメンタリー番組は完全に人間を描いた番組。昨年、話題になった『水曜日のダウンタウン』で不仲だったベテランお笑いコンビ、おぼん・こぼんにスポットを当てた回もまさに人間を描いたものでした。

ただ、この「人間にスポットを当てた番組」はいざ見る時の腰が重いんです。なぜなら、その対象となる人物に興味が持てなかったら全く面白くないから。つまりは、“外れの可能性”が高いからです。ほとんどの人が『情熱大陸』『プロフェッショナル』は知っている有名人か興味のある仕事の回しか見ていないのではないでしょうか?「人間にスポットを当てた番組」は「見たら面白い」けどなかなか「見ようと思えない」ことが多いのです。

その意味で『オモウマい店』は「デカ盛りグルメ」というテーマによって入り口の腰の重さを最小限まで軽くしています。そして、いざ見てみると人間を描いている。「見ようと思えて、見たら面白い」という番組なんです。

取材の労力や編集など、細かい演出によって高視聴率を獲得しているという事実を軽視してはいけないと思いますが、この「入りやすく出にくい」という奇跡の構造が高視聴率の要因ではないかと思います。後付けでこんな風に分析はできますが、こんな構造の企画を狙って考えられるものではありません。

すぐに使える企画のフリー素材サイト

ここからは恐縮ですが私のお話をさせていただきます。先日、『企画倉庫』というサイトを立ち上げました。「企画のフリー素材サイト」「企画版のクックパッド」という言葉を使わせていただいているのですが、YouTubeやラジオ、ライブ配信などで使える企画案を多数掲載しています。そして、ユーザーが誰でも企画案を投稿できて優良な企画は随時サイトに掲載させていただき、サイト内の企画がどんどん増えていくというシステムになっています。

そのサイトを運営しながら「世の中には色々な企画を考える人がいるのだな」と感心しているのですが、テレビ界も毎日のように無数の企画が考えられ、とてつもない難関をくぐり抜けた企画のみが採用・放送され、ヒットするのはごく一部。何が言いたいかというと「企画をヒットさせる」というのは途方もない空振りの末に生まれているのだなと改めて感じました。

イチローも引退時に「4000本のヒットの裏で8000回以上悔しい思いをして、その悔しさと向き合ってきたことが誇れること」といった旨を話していましたが、まさに企画もこういうことだと思います。まあ宣伝も兼ねましたが(笑)、1度「企画倉庫」を覗いてみてください。それこそ「こんな企画を考える人がいるんだ」という人間の面白さを垣間見ることができる思います。

深田憲作
放送作家/webサイト「企画倉庫」管理人
担当番組/シルシルミシル/めちゃイケ/ガキの使い笑ってはいけないシリーズ/青春高校3年C組/GET SPORTS/得する人損する人/激レアさんを連れてきた/新しい波24/くりぃむナントカ/カリギュラ
・Twitter @kensakufukata
日本放送作家名鑑
企画倉庫

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