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成田悠輔「私が“言ってはいけない”ことを言う理由」 - 「賢人論。」第159回(前編)成田悠輔氏

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米国イェール大学助教授職をこなしつつ、昼は日本で半熟仮想株式会社の代表を務める実業家。不登校時代を経て東大首席で卒業。人々が蓋をしている日本社会の問題を鋭い分析力でバッサリ斬っていく――。ポジション、経歴、物事の見方…何もかもが異色の賢人・成田悠輔氏を「賢人論。」に迎えてインタビュー。まず、物議を醸した”切腹”発言の真意を聞いた。

取材・文/みんなの介護

介護は「できれば見て見ぬふりをしたいもの」

みんなの介護 今回は『みんなの介護』のインタビューに応じていただきありがとうございます。まず、「介護」という言葉を聞いて何を思い浮かべますか。

成田 「できれば見て見ぬふりをしたいもの」という感じですね。私自身、母の介護に直面してきたので、その大変さをちょっとだけ知っています。

母は私が19歳くらいのときにくも膜下出血で倒れました。その後、数ヵ月間意識不明の状態を経て奇跡的に回復しましたが、身体のいろいろなところに麻痺が残ってしまっています。現在は、ヘルパーさんに入ってもらいながらケアをしているんですよ。

みんなの介護 若い頃からご家族の病を支えて来られたのですね。生活にも影響が出たのではないでしょうか。

成田 医療費の問題はありましたね。月に百万円単位でかかっていましたから。でも、高額療養費制度が使えて、実質的負担は月に10万円ぐらいに収まりました。

これがもしアメリカだったら、もっと大変なことになっていたと思います。民間の医療保険に入れない人たちは、病気になったら国から見捨てられて終了という世界です。

そういう意味では、日本の医療や介護保険の仕組みは頼りがいがあるものです。それが医療費の膨張も生んでいるわけですが。

言ってはいけないとされていることはだいたい正しい

みんなの介護 成田さんと言えば、『葉隠』の「武士道というは死ぬことと見つけたり」という一節を持ち出して、「人は適切な時期に”切腹”すべし」という発言が物議を醸しています。発言の真意をあらためて教えてください。

成田 あれは「言ってはいけない」ことでした。しかし、古い格言にあるように「言ってはいけないとされていることはだいたい正しい」とも思っています。

言ってしまうと社会がギスギスして機能しなくなってしまうので、みんな言わないでおこうという決め事がこの世界にはたくさんあります。「言ってはいけない」決め事で社会が維持されていると言えます。

ただ同時に、その状況が長く続くと、人と社会もその決め事の裏側にある問題や真実を忘れて気づけない状態に陥ってしまう。テレビやwebメディアで「言ってはいけない」リストが日々増え続けています。それによって私のような発言をする人が少なくなってしまった。

まあ私自身言っても得になることは何もないとわかっていますが、あまりに誰も言わないのでリマインダーを…という感じです。

みんなの介護 ”切腹”や”自決”とはどのような姿をイメージしての発言だったのでしょうか?

成田 ”切腹”や”自決”は議論のためのメタファーで、肉体的なものだけでなく、社会的・文化的なものも含めた色々な形がありえます。具体像にはグラデーションがあり、大きくわけて3つのレイヤーがあり得ると思っています。

一番過激でラディカルなものは、三島由紀夫がやったような文字通りの切腹です。三島由紀夫の最期の選び方はシンボルとして半世紀経った今でも生き続けています。そのこと自体が人の生き方の本質を問いかけていることを示しています。三島が自決したのが45歳だったことを思い出すと、これは高齢者だけでなくあらゆる世代に突きつけられた問いかけです。

もうちょっとラディカルさを抑えたレイヤーでは、例えば尊厳死の解禁や一定以上の延命措置への保険適用を見直すことなどが考えられます。

多くの国では、自力で食べ物を飲み込むことができなくなるなど、移動・排泄・食事・更衣・洗面・入浴などの日常生活動作が一定以下になった場合は公的健康保険(Health Care Insurance)の適用を弱め、公的介護保険(Long-term Care)に徐々に移行する仕組みになってきています。これが公的負担を抑える役割を果たしています。

もちろん自費で延命することはできます。しかし、子どもや未来への投資を削ってまで無制限な延命を公的に促すのはやめよう、というかそれでは社会がもたないから諦めようということなのだと思います。

ただ、日本はちょっと違ってます。介護への公的補助割合が多いだけでなく、健康・介護保険を同時に利用できるなど、日本は人生後期の社会保険の公的負担が特に厚い国の一つだと考えられています(OECD 2020)。【参考文献 OECD (2020), Long-term Care and Health Care Insurance in OECD and Other Countries

そして一番穏健なレイヤーは世代交代です。次の世代にちゃんと活躍の場所を譲っていく仕組みをつくる。例えば一定以上の年齢になったら選挙権や被選挙権を返上する。カナダには75歳未満の人しか国会議員(上院)になれない制度があります。ブータン・イラン・ソマリアなども似た仕組みを持っています。

選挙権の年齢制限は実現していないと思いますが、アプリ投票の導入とか、現役世代の投票を義務にするとかいった方法で実質的に似た効果を持たせている国はあります。ブラジルでは70歳未満は義務投票、70歳以上は義務ではない任意投票になっています。

あるいは、残りの平均寿命に応じて票や影響力を重み付ける仕組みにする。そんな方法があり得るのではないでしょうか。

今でも免許返納の流れがありますし、定年制度がある。それと同じことが選挙権や被選挙権に起きても不思議ではありません。それは制度の問題であると同時に、価値観の問題だと思っています。

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