記事

新たなる脅威に自衛隊法改正で立ち向かう―小野寺五典(防衛大臣)

2/2

自国で領土・領海・領空を守るために

 安倍総理は2月22日にワシントンのホワイトハウスを訪れ、日米首脳会談に臨んだ。第二期オバマ政権の発足から間もなく、日本の首脳がアメリカに呼ばれたということは、一つのメッセージとして東アジアの周辺国にも受け止められるものだと考えている。先ほど挙げた北朝鮮の核実験問題などに対処するため、日本政府としては日米同盟を基軸とした安全保障体制をあらためて構築していく。

「有事の際にアメリカがどこまで守ってくれるのか」という議論を行なう識者もいるが、まずは自国でしっかりと領土・領海・領空を守ることが重要なことはいうまでもない。「自主防衛を行なわない国は世界にほとんど存在しない」という事実を忘れてはならないのだ。現在の複雑な国際環境においては、単純に武力を増強したり、最新兵器をもつだけではほんとうの「安全」は得られない。尖閣諸島海域など重要拠点に警戒監視の目を集中させ、態勢を整えていくことが求められる。

 そのなかで避けることができないのが集団的自衛権の議論だ。安倍総理は第一次内閣のときに、集団的自衛権行使容認に向けて有識者会議「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)を開催した。ここでの議論は総理の辞任とともにいったん立ち消えとなっていたが、第二次内閣発足を受け、今年2月8日に議論が再開された。

 今後は官房長官の掌理のもとで進められる予定だが、防衛省としては、「周辺国と衝突が起きた場合、どのような事態が起こりうるのか」「武器使用はどのように行なったらよいのか」「この対処法は、日本国憲法や日本政府が行なってきた従来の対応と整合性が取れているのか」など、実際の任務を行なうなかで得られた知見をもとに、意見を述べていく予定だ。

 もし仮に集団的自衛権の行使が容認されれば、自衛隊のあり方が大きく変化することは間違いない。同じように自衛隊のかたちを変えようとしているのが、現在、自公両党のプロジェクトチーム(PT)で検討が続けられている自衛隊法改正である。

 1月にはアルジェリアの武装勢力に複数の日本人が拘束され、10人が犠牲となる痛ましい事件が起きた。自衛隊法によれば、海外で多数の邦人が危険に瀕した場合、政府は自衛隊を現地に派遣し、輸送任務に当たらせることができる。ただし、出動する際「輸送の安全が確保されていること」という条件が定められているが、アルジェリア事件のように、安全がつねに確保されているとは限らない。

 また、そもそも現在の自衛隊法84条の3は、航空機や船の輸送を前提にしているため、今回のような「陸路での輸送」は完全に想定外だ。こうした現状にそぐわない部分を適切なかたちへと変えていくことがPTの目的である。

 集団的自衛権の議論と同じく、現場の見地から実際の武器使用、車両輸送の運用などを中心に問題提起を行ない、政府が決定する最終的な法案に対して意見を述べていくことが、防衛省の役割である。  核保有国となった北朝鮮、拡大するテロ組織など、世界には新たなる脅威が生まれつつある。安全保障環境の変化に応じて、日米同盟や自衛隊法など日本がこれまで政治的に選択してきた防衛体制を再定義することで、真の「領土・領海・領空の安全」を実現していく。それこそが安倍内閣の使命である。

■小野寺五典(おのでら・いつのり)
防衛大臣 1960年、宮城県生まれ。東京水産大学(現・東京海洋大学)水産学部卒。東京大学法学部政治学研究科修士課程修了。松下政経塾研究員(11期)、東北福祉大学客員教授などを経て、1997年、衆議院議員補欠選挙で初当選。現在までに当選5回を重ねる。2012年12月、第二次安倍内閣で防衛大臣として初入閣。

リンク先を見る
■『Voice』2013年4月号
[総力特集]安部改革で激変する日本 安倍総理は日米首脳会談でTPPへの参加を表明し、日銀の正副総裁の人選にも着手。足早に政策を進めている。小泉改革に酔いしれた国民が、いまや安倍改革に期待を寄せる。支持率70%を引っ提げ、いよいよ7月の参院選に向けて再始動といったところか。総力特集では、「参院選後」を睨んでどのような改革が行なわれるのか、憲法改正や自衛隊法改正、TPP参加について考えた。日銀副総裁候補の岩田規久男氏に日銀法改正問題にも言及していただいた。また特集では、韓国企業と比較したうえで、製造業を中心とした日本企業の今後の課題と展望を3人の有識者に聞いた。さらに、北朝鮮の核実験を受けて韓国でも高まる核武装化に、わが国がどう対処すればいいのか、安全保障問題も読んでいただきたい論考です。

あわせて読みたい

「安全保障法制」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    医師が語る現状「医療崩壊ない」

    名月論

  2. 2

    昭和の悪習 忘年会が絶滅する日

    かさこ

  3. 3

    秋篠宮夫妻 公用車傷だらけの訳

    NEWSポストセブン

  4. 4

    貯金がない…京都市を襲った悲劇

    PRESIDENT Online

  5. 5

    宗男氏 桜疑惑めぐる報道に苦言

    鈴木宗男

  6. 6

    医師 GoTo自粛要請は過剰な対応

    中村ゆきつぐ

  7. 7

    早慶はいずれ「慶應一人勝ち」に

    内藤忍

  8. 8

    感染増の原因はGoToだけではない

    NEXT MEDIA "Japan In-depth"

  9. 9

    在宅勤務でも都心に住むべき理由

    PRESIDENT Online

  10. 10

    官僚の働き方 仕事の質改善が先

    Chikirin

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。