- 2022年02月27日 15:16 (配信日時 02月27日 11:15)
一般人と僧侶の間で5万~10万円差…アンケートで判明「お布施」の妥当な金額
2/2「葬式一式(枕経、通夜、葬儀、戒名)のお布施はいくらが妥当か
では、日本におけるお寺への布施相場はどれほどなのか。興味深いアンケート結果が出た。まずは、実態から紹介する。
◇設問「あなたが過去に受け取った葬式一式(枕経、通夜、葬儀、戒名)のお布施平均額はどれくらいですか(感覚値で)」
【僧侶向けアンケート】5万~10万円未満 ――6.9%
10万~15万円未満 ――3.4%
15万~20万円未満 ――19.2%
20万~30万円未満 ――33%
30万~40万円未満 ――17.2%
40万~50万円未満 ――10.8%
50万~100万円未満 ――7.9%
100万円以上 ――1.5%
※太字がコア層
回答にバラつきがあるのは、布施の相場感は地域(あるいは僧侶、宗派)によって大きく異なるからである。
たとえば沖縄県では葬式一式の布施額は5万~8万円と全国で最も低い水準だ。山陰地方もアンケートの回答項目の「5万~10万円」に該当する範囲内である。
他方、東京都では沖縄の5~10倍か、あるいはそれ以上の水準である。布施の金額を多くもらっている都市部の僧侶は堕落し、地方の僧侶が清貧、いうことでは決してない。
しかしながら布施の平均額が「50万円以上」が、およそ1割を占めているのが驚きである。さすがに、世間一般の金銭感覚からは逸脱した額であろう。本当に檀信徒の理解は得られているのだろうか。
では、僧侶と一般人の金銭感覚の差異についてみていきたい。布施を受ける側と渡す側の「尺度=金銭感覚」が同等であれば、問題は生じにくいはずである。
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Yuuji
◇設問「葬式一式(枕経、通夜、葬儀、戒名)のお布施はいくらが妥当と思いますか」
【僧侶向けアンケート】5万~10万円未満 ――3.4%
10万~15万円未満 ――5.9%
15万~20万円未満 ――12.8%
20万~30万円未満 ――32%
30万~40万円未満 ――10.3%
40万~50万円未満 ――7.9%
50万~100万円未満 ――6.9%
100万円以上 ――0%
そのほか ――20.8% 【一般向けアンケート】
5万円未満 ――10.1%
5万~10万円未満 ――18.7%
10万~15万円未満 ――12.5%
15万~20万円未満 ――15.4%
20万~30万円未満 ――14.9%
30万~40万円未満 ――6.3%
40万~50万円未満 ――3.8%
50万~100万円未満 ――3.8%
100万円以上 ――0.5%
そのほか ――14%
※太字がコア層
僧侶が妥当と考える布施金額で、分布域が最も大きいのが20万~30万円。他方、払う側は僧侶が望むこの額よりも5~10万円低い金額が妥当と考えている。葬儀の布施の妥当額を「30万円以上」と考える割合が、僧侶が25.1%だったのに対し、一般人は14.4%。かなりの開きがある。この意識の乖離が、寺檀間のトラブルを発生させている要因になっている可能性がある。
本調査で、ある僧侶は、「私の寺の場合、葬儀は年間平均15件前後です。お寺の会計決算が赤字にならない1件当たりの額は30万円。そういう意味で当寺の場合は30万以上が妥当と思います」と回答した。
“死後ステータス”を望む故人や遺族に寺が戒名を「販売」
一般の方の意見(一部を紹介)はこうだ。
「お寺の経営状況をもっとオープンにしてもいいのではないか。そうすればお布施の必要性、今後の在り方が一般人にも明確になるのではないでしょうか」
「(日本は)日々積極的に托鉢に応じる国ではないので、まとめてお布施をお渡しするのにあまり抵抗がない」
このように比較的、寺院運営にも理解を示す人が一定数いる一方で、辛辣な意見もあった。
「先日、親の葬儀でものすごい金額のお布施をした。落ち着いてみると、坊主丸儲けという言葉はまんざら嘘でもないという気がしている。来てくださった僧侶の方はとても立派な方だったと思うし、心の底から感謝している。しかし、それにしても、金額が高すぎて(大卒初任給の2カ月分ほどかと)、自分の葬儀の時は子供に払えとは言えない」
「お通夜、お葬儀のあとは七日法要、四十九日、お彼岸、初盆、一回忌、三回忌、それが来るたびにお布施。凄く苦しかったです。お金さえあればたくさんお包みできました。最低限しかお布施できなくてどんどん肩身が狭くなっていきました。そうなると法要が苦痛でしかなくなります。徳を積む=高額のお布施?」
アンケートの自由回答では「戒名次第で布施金額が変わる」と述べた僧侶が複数いた。つまり、「院号」「居士」「大姉」などを授与した場合、別途、布施が必要ということだ。
確かに、「院号」は古くは伽藍(院)一棟を寄進するなど、寺の護持発展に貢献した檀家に与えた経緯がある。「居士」や「信士」などは、「信心の深さ(信仰の尺度)」によって付けられたものであり、本来は「ランク(死後の地位)」ではない。
それが近年、“死後ステータス”を望む故人や遺族に対して、寺が「販売」するようになったのだ。
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kunertus
戒名でトラブルになるケースとして、「院号」などの戒名を僧侶が遺族に押しつける場合がある。「あなたの一族は、これまで院号居士をつけている。なので、今回の葬式でも院号居士をつける。その戒名代は◯万円」という具合に。こうなれば、カルト教団の霊感商法とさほど変わらない。
あくまでも私見であるが、伝統・文化の側面があるとはいえ、「死後の身分格差」ともいえる戒名のランクにどれほど意味があるのか。クレジットカードのように、ステータスランクを設けるから高位を欲する人が出てくるのだ。寺院護持を考える僧侶にも欲が出てしまう。
また、戒名は「男女の区別」がなされているため、LGBTQ の人は望まない性別の戒名を付けられてしまう可能性がある。戒名自体を否定するものではないが、戒名によって苦しめられている人が大勢出現してきている現代においては、男女含めて1種類でよいのではないか。ちなみに浄土真宗本願寺派は「釈◯◯」のようにシンプルな戒名(浄土真宗では「法名」という)だ。
儀式などの伝統は守りつつも、社会の価値観にあわせて改善していくことも、今の仏教界には必要なことかもしれない。
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鵜飼 秀徳(うかい・ひでのり)
浄土宗僧侶/ジャーナリスト
1974年生まれ。成城大学卒業。新聞記者、経済誌記者などを経て独立。「現代社会と宗教」をテーマに取材、発信を続ける。著書に『寺院消滅』(日経BP)、『仏教抹殺』(文春新書)近著に『お寺の日本地図 名刹古刹でめぐる47都道府県』(文春新書)。浄土宗正覚寺住職、大正大学招聘教授、佛教大学・東京農業大学非常勤講師、(一社)良いお寺研究会代表理事、(公財)全日本仏教会広報委員など。
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(浄土宗僧侶/ジャーナリスト 鵜飼 秀徳)
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