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一般人と僧侶の間で5万~10万円差…アンケートで判明「お布施」の妥当な金額

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葬儀や法事の際に発生する「お布施」の額に関する本音を調べると、払う側ともらう側に5万~10万円のギャップがあることがわかった。ジャーナリストで僧侶の鵜飼秀徳さんは「お布施に安さを求める意向がある一方、院号・居士・大姉といった戒名を獲得して“死後ステータス”を望む人もいます。そうしたニーズに乗じた僧侶側が特定の戒名を遺族側に押しつけて“販売”するケースもある」という――。

僧侶に感謝の封筒を渡す※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SAND555

ネット社会で「相場がよく分からない、布施金額教えて」の声多数

人々の「お布施」に対するコスト意識が高まっている。

葬儀や法事の際に発生するお布施の相場感は、かつては地域社会(ムラ)や親族間(イエ)による「暗黙知」で決まっていた。だが、「個の社会化」が進むと同時に、さまざまなネット情報が氾濫。寺に対して「相場がよく分からない」「布施金額を教えてほしい」などと困惑の声を上げる人は少なくない。なかには布施をめぐって菩提寺とトラブルが生じるケースも起きている。

お布施のあり方が過渡期にある。そこで私が参加する仏教セミナー「Zoom安居(あんご)」では、この度、「お布施」に関する意識調査を実施した。アンケートは僧侶・一般人の両面で行った。お布施に特化した意識調査は、過去に例があまりない。アンケートからは、僧侶側と一般人との意識の乖離がみられた。有効回答数は僧侶が203人、一般人が208人だった。

最初に、「お布施の金額を明示」することの是非についてのアンケート結果を紹介する。

先に「布施とは何か」を説明したい。布施は仏道修行においてなされる無欲の実践をさす。金銭だけではなく、衣服や食事などを僧侶に施すことも含まれる。

一方で、僧侶は「施しを受ける」だけではなく、人々に「布施」をしなければならない。それは儀式を行い、仏法を説き、不安を取り除くということ。あくまでも布施は「対価」ではない。僧侶と人々による双方向の「喜捨(喜んで差し出す)」であることが大前提だ。

従って、「お布施の金額を明示することに賛成か」という設問自体が、仏教でいう布施の教えから逸脱している。繰り返すが、布施は「サービスの対価」でないからだ。だが、今回はそれを承知の上で、現代日本の「葬送の慣習と実態」に添って質問を作成したことをお断りしておきたい。

前置きが長くなったが、さっそくアンケート結果をみてみよう。

ネットの「布施相場」は高額傾向であるのをご存じか

◇設問「あなたはお布施の金額を明示することに賛成ですか」

【僧侶向けアンケート】

はい ――26.6%

いいえ ――33%

どちらでもない ――40.4%

◇設問「あなたはお布施の金額を明示されることに賛成ですか」

【一般人向けアンケート】

大賛成 ――21.6%

どちらかといえば賛成 ――47.1%

どちらでもない ――20.2%

どちらかといえば反対 ――7.7%

断固として反対 ――3.4%

僧侶の回答を見ると、意見が真っ二つに割れていることが窺える。僧侶は本来の布施の趣旨を理解しているはずである。だが、実際の葬送の現場では檀信徒から「お布施の金額を教えてほしい」と懇願されることが少なくない。僧侶が布施の原理原則を頑なに守って、金額の明示を拒絶した場合、トラブルも発生しかねない。

ある僧侶は言う。「(最初は)お気持ちで、と相手に委ねていましたが、本音を聞くと教えてもらったほうがありがたいという意見が圧倒的に多く、『目安として◯~◯円です』と伝えています」

お悔やみ金の封筒※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kf4851

このような実情を裏付けるように、一般人の意見は、7割近くが布施金額を明示することに賛同している。反対は1割程度である。これは明示、非明示、どちらが正しいということではない。

ひとつ言えることは、僧侶は金銭の多寡に関わらず、常に同じように葬儀を執行しなければならないということ。同時に葬儀や法事を依頼する側も、「節度」が必要だ。

大事なのは、お寺と檀家の間で常にコミュニケーションが図られ、信頼関係が構築できているかどうか。寺檀関係が崩壊していれば、すべてにおいて「不満」ということになるだろう。

布施の問題が昨今、浮上してきているのは社会構造の変化と、ネット社会が大きく影響している。戦後高度成長期、バブル期あたりまではまだ、日本にはイエやムラの概念が強く根付いていた。特に葬送儀礼は地域を挙げて行い、ほとんどの親族が関わった。そのため「布施の相場感」は暗黙知として分かっており、菩提寺に聞くまでもなかったのだ。

また、バブル期までは檀家が裕福であり、また、「世間体」も相まって菩提寺に多額の布施をするようになった。なかには「院号」「居士」「大姉」といった位の高い戒名を希望し、そこに多額の金銭が発生することも起きてきた。戦後成熟期における資本の論理に、良くも悪くも日本の仏教界がどっぷり飲み込まれてしまったのだ。

そこにネット社会がやってきた。布施相場を検索すれば、葬儀社などの情報サイトから目安となる金額が表示される。だが、それも基本は東京都の布施相場であり、地域によっては全く参考にならない(ネットの布施相場は高額傾向にある)。ネット情報がかえって、混乱を生じさせている側面は否めない。

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