- 2022年02月26日 14:46 (配信日時 02月25日 18:15)
「1億円以下のマンションはない」日本とは比較にならない超格差社会となった韓国の絶望
2/2韓国の非正規労働に若者が多いカラクリ
このような状況をもたらした原因は幾つかある。1つは1997年のアジア通貨危機以降、歴代の韓国政権が推進してきた経済成長を重視した、新自由主義的な政策である。

1997年、アジア通貨危機において一時はデフォルト寸前にまで追い込まれた韓国は、IMFの指導の下、経済の大規模な改革へと乗り出した。そこで重要視されたのは、この国の経済をグローバル化する世界の実情に適う方向へと変革することであり、そこでは徹頭徹尾、経済的効率が優先された。そしてその中で重視された項目の1つが雇用の流動性強化であり、様々な雇用に関わる規制が撤廃された。
我が国でも進められているように、雇用流動性の増加は、企業にとっては労働コストの低下に繋がるから、利益が大きい。だが、同時に雇用に関わる規制の撤廃は、必然的に不安定な非正規労働者の増加をもたらすことになる。
他方、これまで雇用してきた労働者を解雇することは労働契約上容易ではないから、勢い、増加した非正規労働は新たに雇用される人々、つまりは若年層の労働者に集中することになる。こうして中高年層に正規労働が多く、若年層に非正規労働が多い、韓国固有の状況が出現する。
そして、そこにもう1つの要素が作用する。それは進行する韓国社会の高齢化である。
韓国政府にのしかかる急速な少子高齢化
他の東アジア諸国と比較してみよう。各国における65歳以上人口の割合の推移で明らかなのは、日本において、世界、そして他の東アジア諸国に先駆けて進んだ高齢化のトレンドに、韓国が急速に追いつきつつあることであり、また、やがては追い抜いていくことである。2020年の段階で既に韓国における高齢者人口の割合は15%を超えており、1990年代後半の日本の水準に等しくなっている。
背景には韓国における極端な少子高齢化が存在する。韓国の2020年の合計特殊出生率、つまり1人の女性が生涯に産む子供の数は0.84。やはり少子高齢化の深刻さが指摘される日本の合計特殊出生率は1.34だから問題の深刻さがよくわかる。
こうした状況は、現在の韓国政府の福祉政策にも影響を与えることになる。急速に進む高齢化は政府にとって、年金や医療費などの負担が将来増加することを意味している。しかし、かつて通貨危機を経験した韓国政府は、日本が行っているような膨大な赤字国債の発行には、依然、一定のためらいを持っている。
若者の雇用機会はさらに奪われていく
だからこそ、ここにおいて韓国政府が選択しているのは、高齢者により多くの雇用を与えることである。多くの年金などを与えることができない以上、意図的に高齢者の労働機会を作って収入を確保しようという訳である。
そのための最も主要な手段は、企業の定年退職年齢の引き上げである。結果、韓国では近年まで大手企業で多数を占めていた55歳の定年退職年齢が、一挙に65歳まで引き上げられるようになっている。
しかし、このようないささか乱暴な韓国政府の施策は結果として、ただでさえ限られている雇用を更に高齢者の側に振り向けることとなる。結果、労働コストの負担に限界がある企業は、新規採用を控えることにならざるを得ない。つまり現在の韓国における若年者の雇用環境悪化は、人口の高齢化とそれに対する韓国政府の政策の結果でもあるのだ。
----------
木村 幹(きむら・かん)
神戸大学大学院 国際協力研究科 教授
1966年、大阪府生まれ。92年京都大学大学院法学研究科修士課程修了。専門は比較政治学、朝鮮半島地域研究。著書に『日韓歴史認識問題とは何か』(ミネルヴァ書房)など。
----------
(神戸大学大学院 国際協力研究科 教授 木村 幹)
- PRESIDENT Online
- プレジデント社の新メディアサイト。



