- 2022年02月27日 17:10 (配信日時 02月24日 17:15)
「給料の話をしないなんておかしい」イギリス人が日本の採用面接に抱く強烈な違和感
2/2上司からのアドバイスを個人攻撃と受け取る人も…
一方、日本人以外の人たちは、チームでプロジェクトに当たっているとはいえ、基本的には個人レベルの意識が優先されがちだ。任された仕事は頑張ってこなし、自分が任されている以上、自分のやり方を通したがる人が多い。上司から注意やアドバイスを受けると、個人攻撃と受け取る人もたまにいるという。ただしこれはイギリス人というよりも、イギリスで働くヨーロッパ出身の人たちによくある傾向である。
イギリス人はどうなのか。これは私の見方でもあり友人たちの意見でもあるのだが、他人との距離感をうまく取る人が多いと感じている。過剰な個人プレーに陥ることもなく、ソツなく組織の中で振る舞える人が多い。中には会社を家庭の延長と考えている向きもあり、互いに思いやり、同僚の行動を温かく受け止める人が比較的多いように思う。彼らは日本人とヨーロッパ人の中間のような存在で、両者のやり方を理解できていると感じている。
こう聞くと日本式の働き方のほうが調和がとれていると感じるかもしれないが、実は落とし穴もある。
これは日本人気質でもあるのだが、仕事においても気づくポイントがとても細かい。プロジェクトを進めるに際して、日本人の上司は完遂までの逐一に対して口を挟みたがる傾向にある。これは非日本人スタッフにとって、非常につらいらしい。
旧王立証券取引所のある辺りが、ロンドン金融街の中心地。 - 筆者撮影
「結果さえ出せばOK」のイギリス
日本企業で働くイギリス人や非日本人のスタッフに話を聞くと、「日本からやってきた駐在員マネージャーのマネージメントのやり方に、どうしても慣れない」と口をそろえる。
まず、プロセスの非常に細かいところまで口出ししてくること。イギリスでは結果さえ出せばOKで、プロセスは個人に任せる傾向にある。しかし日本人マネージャーはプロセスや手段についても口出しをしてくると、愚痴る人が多いというのだ。
その他の意見としては、上司としての態度が非常に横柄だというもの。日本では上司は何を言っても許される傾向があるが、イギリスでは上司と部下は役職で結ばれているだけで、ある意味で対等。互いの役職内で、自由に意見を交換することができる社会的な関係性にある。
一方、これも複数の友人から聞いた話だが、日本人の上司は仕事の話をする際でも、かなり個人的な感情を交えつつ話す傾向があるということだ。感情を抑えて順序立てて話すことが難しい人が多いのだとか。
これはマネージャー職としての能力があるかどうかではなく、年功序列やグレード制的なところでたまたま駐在員になってしまうことによる弊害ではないだろうか。自分の職務をこなせることと、人やチームを管理できることとは全く違う話なのだが、その辺りは日本企業の方が鷹揚なのだろう。イギリスではマネージャークラスになると、職務能力よりも管理能力を問われるのが普通だからだ。
マネージャーとしての管理能力が不足しているのに管理職になってしまうと、本人と部下の双方にとって悲劇であることは間違いない。
成果を出せないとクビになる場合も
イギリス企業ではシニアディレクター・クラスになると全員にHRの知識が備わっていて、普段の会社内の会話がいかなるハラスメントにもならないよう、気をつけることができる。また部下に対して何かお願いするときでも、最後には必ず「君はどう思う?」と確認作業を行う。現在のイギリスではこのやり方がオフィスの作法となっているが、もしかすると日本のやり方とは全く違うのかもしれない。
このようにイギリス企業のマネージメント手法はとても洗練されている。イギリス人管理職の面々は、自分がディレクションしたい方向にチームやクライアントを導く能力を備えている人が多い。適性のある管理職の人々がチームをまとめ上げることで、結果的に会社全体として全ての業務を完全に遂行していることになるのだ。
日本式のマイクロマネージメントでは方向性よりも方法に重点をおきがちだが、イギリス式の部下を放任し、全体を見ていくマネージメントのほうが、結果的に会社としてはうまく回っていく可能性が高いと言えるのではないだろうか。
人材の評価システムもおそらくイギリスと日本では異なる。イギリスでは従業員全員を正当に評価するため、年に一度の評価システムを採り入れている。これは自己評価と、上司の評価をすり合わせる作業で、この双方からの評価が合致していることが大切である。もしも任されている業務内容に対して評価が見合わない場合は警告となり、ひどい場合は解雇される可能性もある。会社側としては業務内容を遂行していないエビデンスを確保することで、クビにできるというわけだ。
王立証券取引所内のカフェバーは、シティで働く人々でいつもにぎわっている。 - 筆者撮影
人を言いくるめるのに長けたイギリス人
イギリスの会社システムが雇用法をベースとして成熟を見せていると書いたが、日本の会社にもイギリスにない、いい側面もあると友人たちは言う。
まず全てがスムーズに「オーガナイズされている」こと。突然のスケジュール変更が入ったり、重要人物が欠席してミーティングの意味がなくなったりとか、そういった突発的なことが少ない。根回しがよくできているからだとも言える。そして日本人はどの役職にいようとも、「言ったことは実行する」美徳があるのだという。
一方、イギリス人は口がうまく、その場しのぎの会話が多い。あることないことを持ち出し、口でうまく言いくるめる人を、私自身も何度見てきたことか。口八丁手八丁で相手を煙に巻き、うまく交渉をまとめ上げるのが得意なのがイギリス人なのだ。これはおそらく彼らがDNAとして持っているもので、この性質についていえば日本人は逆立ちをしてもまねできないのかもしれないと思う。
日本人は生涯にわたって同じ会社に居続ける人が今でも多いので、グローバルな視点を育てるのが難しいという弱点もある。ひいては日本全体としても世界を見渡しづらいという国の体質が出来上がっているのではないだろうか。そうなると斬新なアイデアを持つことが難しく、ダイナミズムが生まれづらくなってしまう。
個人の幸福が会社や社会にとって有益になる
誠意や懸命さはあるが、時に疲弊してしまう日本式の仕事の仕方と、その場しのぎだがうまくバランスをとり、結果的に全てをうまくまとめてしまうイギリス式。個人的な資質や感じ方はあるにせよ、企業体質としてはイギリスの方がよりリラックスしており、成熟しているような印象を持ってしまうが、どのように感じられるだろうか。
イギリスでは今、社会風潮として全ての構造的な差別をなくし、個人の幸福に関して透明度を向上させ、個人と全体の幸福を追求していく風潮にある。そして企業はその大きな一端を担っている。
イギリスでは、雇用を守って個人の幸福を保障することが社会貢献だという考え方が、昔から根底にある。回り回ってそれが会社や社会にとっても有益だからで、単純な能力主義や効率主義が良しとされているわけではない。
折しも2020年から、こちらでも在宅勤務の孤独や不安などから来るメンタルヘルスの問題が指摘されているところだ。現在、イギリス企業は大慌てで福祉的な制度を整え、社内カウンセリングをはじめ諸ツールを充実させることで全般的なウェルビーイングを急ピッチで向上させようとしている。
個人の幸福を向上させる試みも、ここ数年で随分と進行している。SNSなどで自分の名前の後にカッコ入りで「She/her」「He/him」など自身のジェンダー意識を明記することが、イギリスでもかなり浸透してきた。このジェンダーアウェアネスは今後の企業社会においても、個人の幸福を追求する方法として定着していくことだろう。
開かれた企業文化は、明らかに社会風潮を決定する。その急先鋒が、イギリスのロンドンという都市社会なのではないか。そう肌で感じている。
企業オフィスの延長にあるコワーキング・スペース。 - 筆者撮影
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江國 まゆ(えくに・まゆ)
あぶそる〜とロンドン編集長
岡山県倉敷市生まれ。ロンドンを拠点に活動するライター、編集者。出版社、雑誌編集部勤務を経て、98年渡英。英系広告代理店にて日本語編集者として活動後、09年に独立。ライター、ジャーナリストとして各種媒体に寄稿中。14年にイギリス情報ウェブマガジン「あぶそる~とロンドン/Absolute London」を創設、編集長として「美食都市ロンドン」の普及にいそしむ。著書に『歩いてまわる小さなロンドン』(大和書房)、共著に『ロンドンでしたい100のこと 大好きな街を暮らすように楽しむ旅』(自由国民社)、22年3月発売の新刊『イギリスの飾らないのに豊かな暮らし 365日』(自由国民社)がある。
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(あぶそる〜とロンドン編集長 江國 まゆ)
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