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なぜ止められなかった親露派国家承認:米国がキューバ危機以来の情報公開戦術 - 春名幹男

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同盟結束で支持率挽回を狙う

 NSCとタイガー・チーム、ICに共通する最も重要な課題は、欧州同盟諸国との「連帯」強化だ。2021年8月のアフガニスタンからの米軍全面撤退と、9月にオーストラリア、英国、米国の3カ国の新軍事同盟「AUKUS」結成に伴う失敗がバイデン政権のトラウマになっている。

 いずれも、欧州同盟諸国との十分な協議をせずに進めて、大失敗に終わった。特にAUKUSでは、オーストラリアがフランスとの潜水艦輸入交渉を突然キャンセルして、米国から原子力潜水艦8隻を導入すると発表したことからしこりを残した。

 こうした問題が重なって、バイデン大統領の支持率低下につながり、それに伴い政権の指導力が大きく後退した。

 このため、ウクライナ危機では同盟関係の結束を重視、インテリジェンスの共有を進めた。米国の各情報機関は重要情報でも機密解除し、主要な北大西洋条約機構(NATO)同盟諸国への情報提供を確実に続けた。さらに、議会への情報提供も怠らなかった。

 バイデン政権がこうした努力を通じて支持率挽回を狙ったのは明らかだ。しかし、最新の「ピュー・リサーチ・センター」の世論調査では、「ウクライナ問題でどこを支持するか」との質問に対して「関与しない」が53%、次いで「ウクライナ支持」が43%、「ロシア支持」が4%となっており、米国民の関心度はあまり高くない。

情報共有に積極的なDNI長官

 ただ、インテリジェンスの公開では常に、「情報源」および「情報入手の方法(メソッド)」に関する情報の漏洩防止が障害になる。

 特にプーチン大統領が元ソ連国家保安委員会(KGB)工作員だっただけに、米国が提供したインテリジェンスをロシアが分析して情報源とメソッドを割り出してしまうことを防がなければならない。

 その点で、過去の多くのIC幹部は極めて保守的で、大統領がインテリジェンスの提供を決めても拒否する場合が多かった。 

 2014年のロシアによるクリミア半島併合の際には、当時のバラク・オバマ政権がインテリジェンスを同盟国と共有しようとしてブロックされたケースがあったという。

 バイデン政権はこうした前例を見直し、アブリル・ヘインズ国家情報長官(DNI)、バーンズCIA長官らと再検討した結果、情報を共有することで一致したと伝えられる。ヘインズ長官は昨年11月17日にNATO本部のあるブリュッセルを訪問、同盟諸国との情報共有を確約したようだ。

 ある情報機関高官は「ロシアの活動について、世界がより良い判断ができる情報なら、公表すべきだ」と『ニューヨーク・タイムズ』に語っている。

「クレムリンのスパイ」再建か

 ウクライナ危機でバイデン政権が公表した情報には一部、ロシア侵攻の日をめぐる情報が結果的に事実とは違ったケースもあった。

 実はプーチン大統領は秘密漏洩を極度に嫌っていて、電子機器を使用せず、発言の記録を残すことを禁止することもしばしばあるという。そもそも補佐官に対する発言も少ないので、なかなか本心をつかみにくいようだ。

 しかし、2016年の米大統領選挙では、「プーチン大統領が米大統領選挙を目標に、影響力を行使することを命じた」とする情報をCIAは入手した。

 その情報源は後に、当時クレムリン(ロシア大統領府)職員だったオレグ・スモレンコフ氏と判明した。「プーチン大統領のデスク上の文書の画像をCIAに提供していた」という際どい情報もある。

 CIAは結局、彼が逮捕される可能性があるとして、2017年に家族とともに出国させ、現在米国に在住している。

 この貴重なスパイが渡米したため、CIAはしばらくロシア大統領府内の情報源を欠いていたが、その後情報源を再建したと伝えられている。

 従って、ウクライナ危機に関する高度な情報は人的情報(HUMINT)から得ている可能性が十分ある。しかし、それでもなおプーチン大統領の本音はなかなか掴めないようだ。

侵攻の背景にプーチン大統領の「自信」

 プーチン大統領はなぜウクライナを侵攻しようと考えたのか。恐らく、米インテリジェンス・コミュニティもまだその解答を得ていないようだ。

 ただここに来て、プーチン大統領は、ロシアの軍事力が強大となり、ウクライナに対して強力な強制力を持つに至ったとの自信を深めたとの情報がある。

 また、外貨準備高も2月の時点で6396億ドルと、中国、日本、スイスに次いで4位を維持している。石油・天然ガスの代金を貯めた結果とみられる。その上石油・天然ガスの市場価格は急騰しており、ウクライナ侵攻後、制裁を受けて、西欧向けパイプラインが閉鎖されても当分は困らない、というのだ。

 2014年のクリミア半島併合後の西側の制裁後、西側との貿易は減少したが、中露貿易は2015年の680億ドルから昨年は1470億ドルと2倍以上になり、中国への武器輸出も増えている。

 さらにウクライナ危機で「NATOの東方拡大」という問題が注目されたことも、プーチン大統領を強気にさせたとの報道もある。

 米情報機関はこうした疑問にも答えるべきだろう。

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