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韓国の主張は明らかに間違い…佐渡金山の世界遺産推薦で「過去の歴史問題」よりも大事なこと

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第二次世界大戦中のことだけが争われている

ところが、繰り広げられている「歴史戦」とやらでは、冒頭でもの述べたように、佐渡金山そのものの価値についてまったく議論されていない。

そもそも、議論の対象は江戸時代における佐渡金山の価値でなければいけないはずなのに、現実には、第二次世界大戦中のことだけが争われている。

例えば安倍元総理らは、「日本人も朝鮮人もほぼ同一賃金で働いていて、無料の社宅や寮があり、娯楽提供の機会もあったから、強制労働とは言えない」などと主張する。

それに対し、登録に反対する側は、「朝鮮人を募集した動機は、採掘時に粉塵を吸い込んで起きる肺病から日本人を守るためだったのではないか」「労働条件が劣る坑道で朝鮮人が働かされていた疑いがある」「労務に関わる職員の一部に、朝鮮人への極端な差別意識があった」などと反論する。

戦時中の佐渡金山の労働環境が過酷であったことは、史料等からもわかる。だが、仮にそのなかで日本人労働者が優遇されがちだったとして、それだけで「強制労働」と断じるのは、明らかに踏み込みすぎではないだろうか。

遺跡の価値は「強制労働」と別次元の話

百歩譲って強制労働があったとしても、それによって江戸時代における佐渡金山の独自性と、世界的に稀有な手掘りの技術や、それによって掘られた坑道跡などの価値が損なわれるものではないだろう。

また、明治から採掘が中止される1989年までの歴史を加えて考えても、鉱山技術の変遷を一カ所ですべて確認できる遺跡は世界的にもまれで、その価値は「強制労働」云々とは別の次元に存在している。

歴史的遺産の大半は過酷な労働によって構築された

韓国および韓国の主張に寄り添う勢力は、ユネスコの理念を考えれば、世界遺産に推薦するに当たって「負の歴史」の検討が欠かせないと主張する。

しかし、そもそも強制労働があったかどうかを問い出したら、世界文化遺産の大半は登録から外すしかなくなってしまうだろう。

壮大な規模の歴史的遺産は、その大半が強制労働か、それに近い過酷な労働によって構築されてきた。

世界文化遺産でいえば、例えば「メンフィスとその墓地遺跡」、つまりピラミッド。最近では、奴隷の強制労働ではなく労働者が雇われていたという説が有力だが、あれだけの石を手作業で積み上げる現場に過酷な労働が伴わなかったはずがない。

ギザの砂漠のピラミッド※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Anton Aleksenko

古代ギリシャや古代ローマには多くの奴隷が存在した。むろん、都市の建設に多くの奴隷たちが動員されており、「アテネのアクロポリス」も、「ローマ歴史地区」も、「強制労働」の現場だから「普遍的価値」はないことになる。ましてやローマの「コロッセオ」など、剣闘士奴隷を猛獣と戦わせて市民の娯楽に供した場所。「負の歴史」を考えれば論外だろう。

それは時代を下っても状況は変わらない。「ヴェルサイユの宮殿と庭園」が、フランス絶対主義王政の過酷な収奪によって誕生したのは常識である。もっと身近な例を挙げれば、日本で初めて世界文化遺産に登録された姫路城。当時の築城は石垣の石を運んだり積み上げたりするだけで、何十人、何百人という命が犠牲になるのが当たり前だった。

私が思った違和感の正体

最初に記した違和感の正体はここにある。今日の価値観、それも主として人道的価値観で過去を評価したら、世界中の文化遺産の大半は、その価値を否定するしかなくなってしまう。

文化遺産の価値は「国家の名誉」からも「過去の歴史問題」からも切り離して考えるべきである。「歴史戦」もいいが、そこに文化遺産を巻き込まないでいただきたい。

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香原 斗志(かはら・とし)
歴史評論家、音楽評論家
神奈川県出身。早稲田大学教育学部社会科地理歴史専修卒業。小学校高学年から歴史に魅せられ、中学時代は中世から近世までの日本の城郭に傾倒。その後も日本各地を、歴史の痕跡を確認しながら歩いている。音楽、美術、建築などヨーロッパ文化にも精通し、オペラを中心としたクラシック音楽の評論活動も行っている。著書に『イタリアを旅する会話』(三修社)、『イタリア・オペラを疑え!』(アルテスパブリッシング)、 『カラー版 東京で見つける江戸』(平凡社新書)がある。
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(歴史評論家、音楽評論家 香原 斗志)

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