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  • 2022年02月21日 15:02 (配信日時 02月21日 06:01)

ロシア製ミサイル配備を決めたインドの深刻な事情 - 長尾 賢 (米ハドソン研究所 研究員)

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米国とロシアの関係が悪化する中、インドをめぐって1つのミサイルの取引が問題視された。インドがロシアからS-400地対空ミサイルを購入したことである。米国は、トルコがS-400地対空ミサイルを購入した際には制裁を課しており、インドに対しても制裁を課すのではないか、それが米国とインドの関係に大きく影響するのではないか、と危惧された。そして、2021年12月には最初のS-400地対空ミサイルがインドに到着し、22年2月にはインドのパンジャブ州で最初のS-400地対空ミサイルの部隊が創設される予定だ。

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実際には、米国はまだインドに制裁を課していない。しかし、制裁を課すのではないかという危惧はかなり以前から議論されていた。

ここで疑問がわくのは、インドと米国が中国対策で協力するようになる中、なぜインドは、米国から制裁をかけられるかもしれない状態でも、S-400地対空ミサイルの購入を強行したのか、である。そこで本稿では、このミサイルが、インドにとってどのような位置づけの武器なのか、そして、それが日本にとってどのような示唆を与えるのか、検証する。

インド軍の武器の60%はソ連・ロシア製

なぜインドがS-400 地対空ミサイルの取引を強行したのか。最初に思い当たるのは、インドにとってロシアからの武器供給が重要だから、ロシアとの関係が痛まないように配慮した、というものである。

たしかにインド軍の武器の60%が旧ソ連およびロシア製の武器で占められている。武器は高度で精密なのに乱暴に扱うものだから、常に整備・修理して使うものだ。弾薬も消費する。そうすると、修理部品や弾薬を供給してくれるロシアの重要性は、インドにとって大きい。

ただ、インドの武器輸入に関して近年の傾向を見てみると、ロシアの重要性は低下している。図は、スウェーデンのシンクタンク、ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)のデータベースを用いて、インドが1950年から2020年にかけて輸入した武器における、供給国のシェアを、ソ連およびロシアについては赤色、米英仏イスラエルの4か国に関しては青色にし、それ以外の国は灰色にして比較したものである。

(出所)SIPRIデータベースより筆者作成 写真を拡大

こうしてみると、1961年まではインドの武器購入額のほぼ100%を青色の国々が供給していたのに対し、それ以降は、ソ連やロシアが圧倒的なシェアを占めてきたことがわかる。しかし、過去10年くらいを見ると、ソ連やロシアが占めるシェアが急速に落ち、米英仏イスラエル各国からの武器輸入額がロシアを上回るようになっていることがわかる。

だから、依然として武器供給国としてのロシアの存在は、現在でも一定程度重要であるものの、将来を見据えると、ロシアよりも米国やその同盟国との関係の方が、インドにとってより重要になっていく傾向にある。だからS-400地対空ミサイルの購入に際し、インドがロシアに一定の配慮を示した側面はあるだろうが、それだけで説明できるほど、強い要因とはいえないだろう。では、インドは、なぜS-400地対空ミサイル購入を強行したのだろうか。

パキスタン対策に必要

インドがS-400地対空ミサイル購入を強行した背景には、外国(この場合は米国)の圧力に屈したようにみせるわけにはいかない、といった主権国家としての威信に関わる問題があるものと思われる。ただ、それだけではない。そもそもS-400地対空ミサイルが、インドにとって魅力的だったからである。

どれほど魅力的だったのか。インドがS-400地対空ミサイルの部隊を創設した位置から、その意図が読み取れる。インドがS-400地対空ミサイルをパンジャブ州に配備しようとしていることは、パキスタン対策に必要だったことを意味しているからだ。パキスタン対策にとってどの程度有用なのだろうか。

インドがS-400地対空ミサイルを配備しようとしているパンジャブ州は、パキスタンと隣接する場所となる 写真を拡大

パキスタンは、1971年の第3次印パ戦争でインドに敗れて以後、インドに対抗するためにいくつかの戦略を考えた。その一つは核兵器を保有することであり、もう一つは、テロリストを支援してインドの国力を削ぐ、「千の傷戦略(どのような大きな国も、テロによって小さな傷をたくさんつければ力を削がれる、という戦略)」であった。インドは対応を迫られたのである。

実際、2001年12月、パキスタンが訓練したテロリストがインド国会を襲撃すると、インドは対応を迫られた。インドは70万人の軍を戦闘配置につけ、パキスタン攻撃の体制をとったのである。しかし、実際にパキスタン攻撃の体制をとってみたところ、当時のインド戦略であった「スンダルジー・ドクトリン」には問題が多いことが露呈してしまった。

その作戦は、大規模な戦車部隊でパキスタンを南北真っ二つにし、全土を占領するものであった。しかし、パキスタンが核兵器を保有している状況下で、実施できるとは思えなかった。さらに、そのような大規模な攻撃を実施する体制になるには3週間もかかった。

だから、パキスタン側の防衛も強化されてしまい、30万人も配置についてしまった。その上、戦闘配置に3週間もかかると、国際社会が、インドに対して、パキスタン攻撃をしないよう、強い外交的圧力をかけてきた。結果、インドは「スンダルジー・ドクトリン」では、パキスタンが支援するテロ攻撃に対応するには、不十分であることが分かったのである。

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