- 2022年02月16日 09:50
原爆を落とされた日本がアメリカの核の傘にずっと守られている【田原総一朗・毒蝮三太夫"超老"対談】
2/2アメリカの「核の傘」に守られて

毒蝮 そうして振り返ると戦後77年、日本は結局、アメリカを背負いながらも、うまくアメリカの傘の下で戦争をやらずに来た。ええと、日本の防衛費って上がってます?
田原 いや、GDPの1.2%。これは他の先進国に比べたらかなり少ない。それでトランプが日本に対して防衛費をGDPの2%にしろと言ってきた。
毒蝮 それものらりくらりかわして、アメリカの傘の下でうまく生きてるってことですよね。だけど、アメリカの言うことは聞かなきゃならない。
田原 なんでも言うこと聞かなきゃならない。
毒蝮 要するに日本はお妾さんとおんなじだな(苦笑)。アメリカという旦那に世話してもらって守ってもらってる。だけどそれも生きるための知恵だ。
田原 僕は安倍内閣の時に安倍さんに言った、「日本はアメリカから高い軍事兵器をどんどん買ってる。国民には戦略的な発想で買わざるを得ないんだと言ってるけど、それはまったくウソだ」と。「日本の政府はアメリカのご機嫌を取るために買ってるんじゃないか」と。 そしたら安倍さん否定しなかった、苦笑いしてた。
毒蝮 アメリカに行ったタイミングで、たくさん買ったりしてますよね。戦闘機を爆買いだとか。あれは旦那のご機嫌を取るためのお土産なんだ。旦那をしくじらないようにって。
田原 要するにアメリカから嫌われないようにする。こればっかり考えてる。それを全面的に否定したのが高市早苗。昨年の自民党総裁選に立候補しました。高市は「いつまで日本はアメリカの子分でいるのかと、子分をやめて対等になれ」と言ってる。
毒蝮 日本は独立していないと。
田原 全然してない。早い話が日本はなぜ核兵器を持たなくていいか。日米同盟でアメリカの核の傘に守ってもらっているから。
毒蝮 アメリカという旦那との関係をいつまでこの状態で続けられるかが問題ですね。
田原 安倍さんの時に集団的自衛権の行使をやりましたよね。なんであの集団的自衛権の行使を安倍さんがしたかと言うと、これは小泉純一郎の時代に遡る。当時、岡崎久彦(元外務省・外交官)とか 北岡伸一(法学博士)たちが「田原さん、困った、冷戦が終わった」と。僕は冷戦が終わっていいことじゃないかと思ってた。だけど、冷戦は東西で睨み合ってて、日本は西側の極東部門。アメリカはそこを守る責任があった。そこで冷戦が終わってアメリカは西側の極東部門を守る責任が無くなったの。その時からアメリカは、このままでは日米同盟は持続できないと。極東を守る責任がないのにいつまでも続けられないと。そこで、これまで日米同盟が「片務契約」だったのを「双務契約」に変えないと持続できないぞと変わってきた。
毒蝮 ソウム?
田原 どちらか一方だけが負担するのではなく、両方が負担しあうって話です。それが双務。日米の双務とは、アメリカが叩かれたら日本が戦うってことですよ。でも、双務を言い出したら日本じゅうが反対するぞと。だけどそれをしないと日米同盟は持続できない。困った。僕は小泉さんに「これを考えなきゃいけない」と言った。で、小泉さんはできなくて、安倍さんになって集団的自衛権をやった。
毒蝮 世論は喧喧囂囂でしたよ。

田原 あの時、朝日新聞も毎日新聞も、憲法学者たちも「反対!」。で、僕は朝日毎日の幹部と憲法学者たちに「本当に反対でいいのか?」と訊いた。「集団的自衛権を行使しないとアメリカは日米同盟を破棄だと言ってる。破棄でいいのか?」と。これは大きな声では言えないけど、日米同盟があるから日本は核兵器を持たなくて済んでいる。アメリカの核の傘に守ってもらっている。もしも日米同盟を破棄されたら日本は核兵器を持たなくちゃならない。そうなれば、軍事費も2倍以上になる。そこで朝日毎日の幹部も憲法学者も「田原さんの言うことに100%賛成だ」となった。ところが、彼らもプライドがあるから、それを表だっては言えない。
毒蝮 なるほど、「田原さんの言うことはわかる、賛成だ、賛成ではあるけれど…」ってなったんだ。
田原 さらにアメリカはオバマ、トランプになってパックスアメリカーナを放棄し始めた。日米同盟だけが特別ではない。だからトランプは日本の防衛費を倍にしろと言い出した。これから日本はどうすればいいのか。それが問題。
毒蝮 俺はですね、経緯はどうあれ、日本は世界で唯一核兵器によって被害を受けた被ばく国として、核兵器を持たない国でいることを誇らしく思ってますよ。でね、日本は核兵器を持ってない。だけど、核兵器禁止条約に署名はしない。
田原 なんで署名しないかというと、日本はアメリカの核に守ってもらってるから。守ってもらってるのに反対なんて言えない。
毒蝮 広島や長崎の人たちは署名しようって言ってる。地元の知事や市長、多くの政治家もそう言ってる。となると、あれはアメリカの核のことをわかってて言ってるんですかね。
田原 広島や長崎は、当然自分たちは原爆を落とされた立場から反対と言える。だけど日本政府は絶対に言えない。
毒蝮 うーん、沖縄の問題もそうなるか。アメリカに対して日本政府は言えない。オミクロン株が米軍基地から広がっても、何もできない。
田原 沖縄問題に決着をつけるためには、日米地位協定を改正するしかない。日米地位協定は占領政策の延長です。ハッキリ言えば在日米軍基地を撤去させる権利も、移設させる権利も日本にはない。それをわからずに民主党政権の鳩山由紀夫は「最低でも県外」と言った。外務省と防衛省の幹部が日米地位協定が現にあるのでそれはできないと言ったら、鳩山は反対せずに辞めちゃった。
毒蝮 民主党はあれで相当バタついた。
田原 僕は、2018年に安倍さんが憲法改正って言うから、安倍さんに対して「憲法改正の前に日米地位協定を改正しよう」って言った。安倍さんはどう思ってるのと訊いたら「やる」と言った。その後、2020年5月に外務省の幹部が「田原さんと会いたい」と。
で、「アメリカは国防総省の反対で今のままでは日米地位協定は改正できない」と。「じゃあ、なんでイタリアやドイツは地位協定を改正できるんだ」と。そしたら「イタリアやドイツはNATOがある。軍備も完全双務制だ。日本は片務のままだ。そのままでは地位協定の改正はできない」と。で、安倍内閣でこれをどうしようかってやってるうちに安倍さんは辞めちゃった。
毒蝮 田原さんの話を聞いていると、これからの日本はますます内憂外患ですね。国の中も大変、国の外も大変。
田原 でも、日本はこれからチャンスだと思ってるんです。
毒蝮 チャンス?
(田原総一朗・毒蝮三太夫 BLOGOS超老対談 第4回に続く)
(構成:松田健次 田野幸伸 撮影:弘田充)



