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TPP参加の3条件

 

TPPについて、メキシコやカナダといった後発参加国が①合意済みの部分をそのまま受け入れ、議論を蒸し返さない、②交渉の進展を遅らせない、③包括的で高いレベルの貿易自由化を約束するといった条件を出され、日本にもそれが適用されるのではないかということが大きな問題になっています。

 私からすれば、上記の3条件は「まあ、そんなもんだろうな。」と思うわけです。別に何か不思議なことが語られているわけではありません。ただ、それだと不親切なので、日本の懸念事項との関係で説明します。

 まず、上記の中で「当たり前」の世界に入るのは②です。これに異議を唱える国が受け入れられないのは当たり前でして、別にこんなものであれこれ言うようなものではありません。議事妨害者を積極的に会議に入れたくないというのは、どんな会議でも交渉でもそうです。

 そして、①と③については このTPPというか、あらゆる通商交渉は概ね2つのフェーズがあることから考えていくのがいいでしょう。それは「リクエスト・アンド・オファー」と言われるものと、「ルール」の分野です。前者は関税やサービスのところでして、参加国間で「あなた、この関税を撤廃してください」、「このサービス分野は自由化してください」というリクエストを行い、それを受けて、要望を受けた国が「では、こんな感じでやりましょう」とオファーをする、ということです。懸念の高い農林水産品分野での関税撤廃については、この「リクエスト・アンド・オファー方式」でやっていくことになります。ここで関係するのは、上記の③ですが、「包括的で高いレベルの貿易自由化」については、そもそも論としてTPPが目指すのが「ハイ・スタンダード」ということなので何も新しいことはないですし、それだけであれば現時点で何かが合意済みということではありません。正によく言われる「交渉全体のパッケージの中で決定される」ということです。

 あえてあり得るとしたら「関税撤廃については品目ベースで●%は必ず撤廃する」というルール決めが既に全参加国で合意されている場合には、とても難しいところが出てくると思いますが、毎回の交渉後に出ているUSTRからのステートメントを見る限り、現時点でそんな画一的な決め方をしているかな、どうかなと思います。ただ、ここは機微なところでありまして、きちんとよく調べる必要があるでしょう。

 仮にそういう数字ありきの関税撤廃ルールがないのであれば、あとは「リクエスト・アンド・オファー方式」ですから、③の前提の下でギリギリ交渉に臨んでいくということ以上でも、以下でもありません。サービスの分野でも同じ状況でしょう。サービスについては、●%撤廃みたいなことを決めるのがなかなか難しいので、「リクエスト・アンド・オファー方式」でやっていくことになります。

 では、それ以外のルールの分野ですが、あくまでも一般論で話をすると、これは日本の攻め所でして、途上国の閉鎖的な制度を少なくとも日本が達成しているレベルまで高めるというのが目的となってくるはずです。日本がここで心配をしなくてはならないのは、「既に合意されたルールが実は目線の低いところでなされていて、日本として取りたいものが取れないような状態になっているのではないか」ということだろうと思います。この状況は「ACTA(偽造品の取引の防止に関する協定)」と似ています。あの条約は基本的に途上国の偽造品や知的所有権に関する制度を日本並みに高めるのが目標とされた協定でした。国内的には色々な反対がありましたが、実はACTAの中身のほぼすべては既に日本の制度で取り入れられているものでして、国内法改正を求められたのはたったの1箇所だけでした(それはあまり国内産業に影響のあるものではありませんでした)。多分、TPP交渉のルール分野の大半は、日本にとってそういう位置付けになるものが多いと思います。

 繰り返しますが、ルールでは「何か不利なものを押しつけられるのではないか」というよりも、「取りたいものが不十分ではないか」という視点からの心配をするのが全体の構図です。例えば税関での様々な障害を取り除く「貿易円滑化」などは相当に交渉が進んでいるようですが、日本としては先進的な貿易円滑化を実現したいと思っており、どの程度のものが合意されているのかが、前向きな意味で気になります。

 前向きなトーンばかり語りましたが、ルールの分野であえて現時点で懸念されるものが幾つかあることは事実です。例えば、農林水産業との関係で挙げてみると「国家貿易」の規定がどうなっているかなと思います。コメ、小麦等の輸入は日本では農林水産省が国家貿易でやっています。国家貿易のところで既に合意がなされている場合は、該当する品目(日本にとって重要度が高いものばかり)の輸入体制、ひいては国内の生産体制にも影響が出てくるでしょう。ここはとても注目度の高いところです。あと、農林水産業との関係で気になるルールがあるとしたら、関税割当(運用も含め)の制度のところですかね。

 その他、幾つかルールで(農林水産業に限らず)気になることはありますが、交渉毎に出されるステートメントを見ている限り、「あまり進んでいないんだろうな」と思われる分野が相当にあります。進展があっている分野の中で、日本が「痛い」と思う分野がないかと問われるとそれはあるでしょう。ただ、それよりも「おいおい、アメリカが(先進国の視点から)もうちょっと頑張ってくれていると思ったのに・・・」と、途上国の制度改善を迫る分野で残念な気持ちになる分野の方が多いような気がします。その観点からは、日本で①について後ろ向きの視点からの懸念(日本に不利なものを押しつけられるのではないか)ばかりが強調されるのは違和感があります。

 まあ、交渉の実相が見えていないので、以上の分析は当たっていないかもしれません。違っていたらお詫びいたしますけども、通商交渉の世界でかつてメシを食っていたものとしてはこの程度が相場観なんだと私は思っています。

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