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「ヒトラー発言騒動」真の問題点とは 日本の言論状況を考える その1

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念のため寄稿者本人に電話で確認を求めたところ、案の定、

「(ドイツでも)あいつはヒトラーみたいだ、なんて言ったら、そりゃメチャクチャ怒られるでしょうけど、ヒトラーの名前を出すこと自体がタブーだとか、そこまでではないですよ」

とのことであった。

このあたりは日本で一般にイメージされているのと少々異なるかも知れないが、ドイツでも、政敵をヒトラーになぞらえて非難するというやり方は、結構よく用いられる。あのメルケル首相でさえ、イエスマンばかりで組閣して独裁的な政権運営をしているなどとして、ヒトラーに例えられたことがあるのだから、あとは推して知るべしである。

だから管氏のツイートは正しい、などと言うつもりはない。いささか品格に欠ける物言いであったとは思う。ただ、どう考えても「御法度」とまでは言えないし、表現力やセンスはまだしも人権感覚を疑われるほどのことではない。

そもそも橋下氏は、維新の代表であった2012年に、当時の民主党政権が、公約になかった消費税増税への動きを見せていることを批判した際、

ヒトラーの全権委任法以上だ

と述べたことがある。

当然ながら「ブーメラン」「ダブル・スタンダード」という批判にさらされたが、当人は、

政策を批判するのと個人攻撃はまったく違う

などとコメントしている。


▲橋下徹氏のツイート(2022年1月29日)

この反論は、一応もっともだ。しかしそれなら、元代表とは言え現在は党と無関係だとのタテマエで政界からも身を引いている人が「攻撃」されたからと言って、どうして維新の現職幹部が管氏のもとに乗り込んで謝罪を要求したり、立憲に対して公開討論に応じろと迫ったりするのか。

橋下氏も橋下氏で、ある学者の容姿を「安もんのヒトラー」などと形容したことがあるが、これは相手が先に自分をヒトラーに例えたことへの「言い返し」だと明言している。ここまで来ると、個人攻撃などと言うも愚かな、まるっきり子供のケンカだ。


▲橋下氏のツイート(2017年2月18日)

もっとひどいのが、吉村知事の「国際法上はあり得ない発言」である。

これも「そもそも論」から述べれば、国際法とは複数の国家が批准した条約と、国際的に認知された不文律(習慣国際法と呼ばれる)の総称である。国際司法裁判所も国際法の法源と見なされるが、これについては異論もあると聞く。

▲動画 吉村洋文大阪府知事囲み会見(2022年1月24日、月曜日)

戦時国際法という概念もあるが、こちらも具体的にはジュネーブ条約やハーグ陸戦協定と言った、参戦国の軍人の行動を律する国際的な取り決めの総称である。

そして、繰り返しになるけれども、批判であれ一種の「ほめ殺し」であれ、ヒトラーの名前を持ちだしてはいけない、などという法規や協約は、どこにも存在しない。

ひとかどの政治家であり、弁護士資格もお持ちの御仁が、国際法に関してこんなデタラメを発信することこそ「あり得ない」だろう。まさかとは思うが、

「デマも百万遍くりかえせば、それが真実になる」

という理念を奉じていたり、

「関西人にとって言論の是非とは〈おもろい〉か〈おもんない〉かの違いだけや」

などとお考えではあるまいな。

もっとも、騒動への対応という点では、立憲もたいがいで、蓮舫参議院議員が、橋下氏のメディア出演自粛を求める民間のキャンペーンを拡散し、賛同を求めるツイートをした。

すぐに削除したそうだが、今のネット社会ですぐに(すでに)削除しました、は通るまい。

私も個人的には、橋下氏が自身の言動について、ことさら「中立」「一個人」という表現を用いるのを聞くたびに首をかしげている。しかし、人の心の中までは分からないし、あとはマスメディアの良識に期待するほかはないだろう。

総じて言えることは、ヒトラーの名前を出したことの是非よりも、それを政争の具にする政治家と、発言内容を検証もせず垂れ流すマスメディアの見識こそ問題だということだ。

こんなことでは、ヒトラー・ナチスの暴虐の犠牲になった人たちが浮かばれない。これこそが、この騒動の真の問題点なのである。

(つづく)

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